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第十四章 公国

第二百九十六話 公国王邸を制圧せよ

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 一方、エステル達も公国邸に無事に着陸した。
 
「あ、お庭に着陸しちゃったね」
「大丈夫です。最近は、庭の手入れもあまりされていませんでしたので」

 庭に着陸したので、一部の龍の足跡とかが目立ってしまった。
 ミケが思わずテヘペロってしている。
 今は緊急事態だと、ジュリエットは気にしていなかった。
 龍も龍人になったので、これで準備万端。

「ジュリエット様!」
「ご無事で何よりです」

 そこに、騎馬隊がやってきた。
 門から屋敷前まで入ってきた。
 ちなみに、早速門は龍人が制圧。
 といっても、門番は元から反抗する気もなく、ジュリエットに挨拶をしている位だ。
 暫くすると、門番と龍人が談笑し始めた。

「ジュリエットお姉ちゃん。悪い人は捕まえていーい?」
「ええ、大丈夫ですよ。ただ、殺害するのは控えて頂けると」
「大丈夫だよ! 拘束するだけだから!」

 屋敷に入る前に、ミケは念の為に悪人の拘束について聞いたが、ジュリエットは構わないという。
 それを聞いて、ミケだけでなくリリ達やドラコ達に龍人もやる気になっていた。
 さあ、私達も気合を入れていこう。

「ジュリエット様、ご帰宅になられます!」

 玄関を警備する兵にも、あっさりと通された。
 そして、屋敷の中に入ると執事らしい太って頭がはげた人が迎えてきた。
 うん? この人は!

「ジュリエット様、おかえりな……ぶろべ!」
「「とー! 悪人を捕まえた!」」
「え?」

 ジュリエットが少し驚いている中、ララとリリが執事を蹴り飛ばした。
 すかさずポチが拘束する。
 それを合図にして、ミケやドラコ達に龍人も一斉に動き出す。
 そして、出迎えてきた家人やメイドの中で悪と判断された人を拘束していく。

「やはり、何かを企んでいたね」
「はい、全員何かしらの武器を持っていますね」
「え!」

 ジュリエットはかなり驚いているが、リンも私も執事の手に何か握られていたのを把握している。
 まあ、ホワイトがこっそり魔法障壁を張っていたから、ジュリエットが怪我をする事はないけどね。
 ホワイトは、そのままジュリエットの肩に登った。
 こうなれば、余程の攻撃でない限りジュリエットの安全は確保できる。

「お父様やお母様に、お兄様は今どこに?」
「奥方様は自室におります。ただ、少し前から昏睡状態でして」
「そんな! お父様やお兄様は?」
「私どもでは分からず……」

 ジュリエットが拘束されなかった侍従に家族の事を確認するが、どうも良くない状態だ。
 母親は命の危険性があるし、肝心の公国王と公国王太子が行方不明。
 
「じゃあ、ララとリリでジュリエットお姉ちゃんのお母さんを見つけて治療してくる!」
「了解、気をつけてね!」

 直ぐにララとリリが動いてくれた。
 あの二人なら、かなり高度な治療もできる。
 案内をする侍従の後をついていった。
 その間にも、玄関ホールには続々と拘束された人が運ばれてくる。
 さて、一番事情を知っていそうな奴から話を聞いてみよう。

「おい、公国王と公国王太子は何処にいる」

 いかにもって感じの悪人面に表情を変えた執事に対し、二人の行方を聞いてみた。

「へん、知らねえな」
「ふーん、そうかい。執事なのに主の居場所を知らないとはね」
「ああ、知らねえものは知らねえな」
  
 突然態度を変えてきた執事。
 こちらが威圧をかけて話しても、あくまでもしらを切る様だ。

「バハムート、おいで」
「ギャウ!」

 ここで、レイアが外にいたバハムートを呼んだ。
 バハムートは、素直にこちらまで歩いてきた。
 バハムートは、小さいとはいえ飛龍。
 迫りくる龍に、執事の顔色が青くなってくる。
 そんな執事の様子なんて全く気にせずに、レイアは執事を指さしてバハムートに話しかけた。
 
「バハムート、ごはん」
「ギャウ?」

 バハムートは、少し困惑した感じだ。
 いきなり人間を食べろと言われたのだから。
 勿論、レイアは本気で食べろとは言っていない。
 執事を脅迫するためだ。
 その効果は、てきめんだった。

「ま、待ってくれ! 言う、言うから! だから、龍を遠ざけてくれ!」
「なら早く言う。でないと、バハムートが食べやすいように細切れにする」

 執事は龍に食べられると思って、ガクガクブルブルしながら喋りだした。
 レイアは両手に魔力を溜め始め、更に執事を脅迫する。
 うーん、五歳児にしてこの脅迫方法。
 レイアはよくお母さんの脅迫を見に行っているけど、更に自分流にアレンジしている。
 縛られて床に転がされている執事は、抜群の美貌を誇るエルフの幼女に冷たく見下されている。
 周りの拘束された人も、完全にレイアの雰囲気に飲まれている。

「やめてくれ! 言うから! 外務大臣の屋敷だ!」
「本当に? うそじゃない?」
「本当だ! 本当の事だ!」
「そう」

 外務大臣の屋敷ね。
 この情報があれば動けるな。

「外務大臣の屋敷に案内します」
「私は、行政府に報告に行きます」
「よーし。エステルお姉ちゃん、行ってくるね!」
「僕達も行ってくるよ!」
「念の為、私も行きますね」
「リンちゃん、お願いね」

 騎馬隊の誘導に従って、ミケとドラコ達が走り出した。
 念の為にリンもついていっているから、何かあっても大丈夫でしょう。

「ジュリエットお姉ちゃんのお母さん達を見つけたよ!」
「まだ寝ているけど、治療も終わったから大丈夫だよ!」

 ここで、三階からララとリリがまさに飛び降りてきた。
 二人は空を飛べるとはいえ、ちょっとビックリした。
 ジュリエットは、母親が無事でだいぶ安堵した表情だった。

「強力じゃないものだったけど、毒が使われていたよ」
「あと一週間遅かったら、駄目だったかもしれない」
「えっ!」

 ララとリリの報告に、ジュリエットは驚きを隠せなかった。
 それとともに、執事の目の動きが変わったのを見逃さなかった。
 何か知っているな。
 私は無言で剣を抜いて、炎を剣先に纏った。
 
「執事、知っていることを話せ。でないと、バハムートが食べやすいように綺麗に焼いてあげるよ」
「グルルルル」
  
 毒と聞いて、バハムートも怒っている様だ。
 私の脅しとは別に、唸り声を上げて執事を睨んでいる。
 もう執事は顔面蒼白になって、口をパクパクさせている。

「外務大臣だ! 外務大臣が毒を持ってきて食事に混ぜろと」

 成程、どうやら外務大臣は強引な手に出たようだな。
 とりあえず、こいつには聞くことは無くなった。

「リリ、お願い」
「はーい。そろそろうるさいから、おねんねしましょうね」
「な、何を……」

 私はリリに頼んで、執事を眠らせて貰った。
 闇魔法が使えるリリは、こういう補助魔法も得意だ。
 あっという間に、執事は眠りについた。

「さて、拘束されている諸君。このまま大人しくするなら、諸君らの身の安全を保証しよう。しかし、何か起こせば、この様に強制的に対応することになる」

 執事が強制的に眠らされたのもあり、拘束された人達は大人しく座っていた。
 あるいは、もうこの先訪れるであろう自分の未来を悲観しているのかもしれない。
 しかし、流石に同情はできない。
 罪を犯したなら、罪を償って貰うしかないのだから。

「エステル殿下、私はお母様の所に向かっても宜しいですか?」
「申し訳ありません。大丈夫ですよ」
「ララが案內してあける!」
「リリも行くよ!」

 双子に案内されて、ジュリエットが母親の元に向かっていく。
 さて、他の所はどうなっているのか。
 状況が安定したからか、ホワイトもバハムートに乗って外務大臣の屋敷に飛んでいった。
 行政府に向かった母がかなり怒っていたので、何も起こらなければいいなとエステルは思っていた。
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