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第十四章 公国

第二百九十三話 公国に向けての話し合い

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 魔獣や魔物の撤去は守備兵がやってくれるというので、俺達はお屋敷に戻った。

「「「「疲れた……」」」」

 流石に皆、疲れてへばっている。
 大活躍だった防壁を担当したメンバーも、疲労は強い。

「皆、怪我とかなかった?」
「大丈夫だよ。戦闘が終わったら、兵の治療とかもしてたからね」
「魔物の数も多かったので、怪我人が多かったです」
「戦闘中も回復魔法とかをかけていましたので、死者はいませんでした」
「うまく戦術がハマった感じもありました」

 それなら良かった。
 死者が出ないのも良かったよ。
 街中の守備兵も死者は出なかったし、学園生も怪我人は出なかった。

「そういえば本部にも連絡入ったけど、皆もかなり活躍していたんだってね」
「ふふーん、私の華麗に戦う姿をサトーにも見てもらいたかったな。きっと私に惚れ直すよ」

 エステルよ。
 随分と活躍したのは連絡で聞いているけど、調子に乗るのは良くないぞ。
 
「私の所は、敵に合わせて確実に対応してました」
「私の所もそうですね。力自慢が多かったので、良い手合わせになりました」
 
 リンとオリガの所は、安定して戦線が進んだと評価が高かったな。
 オリガの所は、ガルフとセットで高評価だった。

「というか、ぶっちぎりで評価が良かったのが東門だな。小さい女の子が、大立ち回りで凄い剣技を使ったって。軍神と言われたランドルフ家が戻ってきたって、陛下からも閣僚からも絶賛だったぞ」
「うぅ、恥ずかしいです。ちょっと調子に乗りました。兵士さんも、次から次へと握手してくれと言われまして……」
「ぐぬぬ、まさかこんな所にダークホースがいたとは」

 シルク様は顔を真っ赤にして恥ずかしがっているけど、現地の守備兵の興奮が凄かったと報告が入っていた。
 それだけ、辺境を守っていたランドルフ家の名前は広く知れ渡っていたという事だ。
 エステルが悔しがっているけど、今回の防壁守備ではシルク様が間違いなくMVPだろう。

「チュー」
「ホワイトが羨ましいよ」
「次はララがMVP取るもん」
「MVPはリリだよ」

 そして空中戦と市街地戦のMVPであるホワイトは、ご褒美の果物の盛り合わせを貰ってご満悦だ。
 ホワイトに良いところを取られたミケやララとリリは、次こそはと意気込んでいた。
 ホワイトの頭の良さが際立った戦いだったらしい。
 とてもネズミとは思えない頭脳を持っているからな。

 そして、何故かリディア様が黄色いスライムをニコニコとご満悦な表情をしながら抱いている。
 そこに、タコヤキや他の獣魔と子ども達が集まっている。

「エステル、あのスライムはどうした?」
「撤収作業していたら、いつの間にか現れて倒した魔物の死骸を消化していたの。近くに森もあるからね。うちに来るって聞いたら、ついてきた」
「それで連れて帰ってきたら、リディア様に懐いた訳か。悪ではないし大丈夫か」

 さっそくプリンと名付けられたスライムは、タコヤキから従魔についてのいろはを教えて貰っている。
 お願いだから、過激な事は教えないでよ。

 さて、公国の件も考えないと。
 島国だから、移動方法を考えないといけない。
 ということで、ドラコとルシアの母親に来てもらいました。

「こんな大騒動があるなら、あたしらも呼んでくれればいいのに」
「大暴れして褒められるなんて、中々ないからな」

 どうして俺の知り合いは、こうも暴れるのが好きなんだろう。
 ドラコとルシアの母親は、戦闘に呼んでくれなくて不満げな感じだった。
 話し合いは、俺とビアンカ殿下とレイアにドラコとルシアの母親。
 それに、当事者のジュリエット様も参加する。

「ジュリエット様、港町から城まではどのくらい距離がありますか?」
「馬車で二日ほどです。それに城ではなく、お屋敷を大きくしたものですから」

 まあ、大きくない島国だから、屋敷の広さなんては仕方ないだろう。
 二日なら、うちの馬車で半日で着く。

「というか、別に海龍に乗る必要はないのう」
「この間のノースランドから公国まで、船が出ている距離だろ」
「あたしらの背中に乗って一飛びだ」
「人神教国が奇襲を仕掛けてきたから、こちらも奇襲を仕掛けてやればいいのか」

 そっか、わざわざ怖い思いをして海を渡らなくてもいいか。
 人神教国が奇襲してきたから、お返しすればいいか。

「ジュリエットよ、確か声を大きくする魔道具を持っているはずじゃな。王族なら必須だから、妾も持っておる」
「はい、勿論持っております」
「なら、一気に龍の背中に乗って公国に向かうとするか。公国についたところでジュリエットが国民に心配ないと呼びかければ、混乱も少ないし問題となっている外務大臣への牽制にもなる」
「中々壮大な作戦ですね。頑張ります」
「制圧先はどこじゃ?」
「公国邸と行政府になります」
「なら、二手に分けるか」

 ジュリエット様も、握り拳を作ってやる気を出している。
 大量の龍が公国に押し寄せたら、きっと人神教国側は大混乱になるだろうな。

「ちなみに、母上も公国に向かうと言っておるぞ。何でも外務大臣が母上の知り合いだという」
「話し合いではなくて、戦闘での話し合いになりますね。一国の王妃なのにフリーダムですね」
「ドワーフの親方特製のムチを磨いておったわ。無言の笑みで妾でも背筋が凍ったわ」

 うわあ、王妃様は母国の事だから、相当頭にきているな。
 確かあのムチは、ミスリルにドラコのウロコを混ぜた物を細く伸ばして編み上げた、親方渾身の一作だったはず。
 細いのに切れないし、柔軟性もバッチリのとんでもない代物だ。

「あと、パパは女装する」
「聖女の姿の方が、人神教国に対しても効果的じゃ」
「何で俺は、毎回女装するんですか!」
「決定事項」
「勿論、人神教国に乗り込むときもサトーは女装じゃ」

 ああ、男の姿で他国に渡ってみたいよ。
 毎回、女装で潜入だなんて。

「時にドラコとルシアの母親よ。ドラコやルシアと同じ様に、悪人を見分ける事はできるか?」
「そんなの朝飯前だ」
「あたしら龍の特性だ。変装していても見分けるぞ」
「そうか、それは良かった。こちらの守備が手薄になるので、あまり人員が出せぬ。大量の龍で、公国にいる悪人を捕まえて欲しいのじゃ。できれば空を飛んで、人神教国の牽制もしてほしいのう」
「ハハハ。いいねえ、大暴れしてくれって依頼なんて」
「うちの商売も絡んでいるからな。徹底的に悪人を引っ捕らえてやるよ」
「その内に、人神教国本国への対応もある。その際はまた相談するぞ」

 うちのメンバーは外務大臣の対応をしないといけないので、街中の制圧をしてくれるなら大助かりだ。
 話し合いはこんなものかな?

「はーい、夕食の準備ができましたよ。今日は皆頑張ったので、お肉祭りです」
「「「「やったー!」」」」

 今日は皆頑張ったので、晩御飯はお肉づくし。
 マリリさんが用意できたと伝えると、子ども達は大喜び。
 勿論、ドラコとルシアの母親も参加する。
 さて、明日は何事もなく無事に終わる事を祈るばかりだ。
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