異世界転生したので、のんびり冒険したい!

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
261 / 394
第十二章 ルキアさんの結婚式

第二百六十一話 パレードと披露宴

しおりを挟む
 大盛りのブーケトスの後は、街中の結婚パレード。
 既にお屋敷前には、オープンタイプの馬車もスタンバイ済み。
 パレードにはルキアさんとアルス王子を始め、陛下や王妃様にルキアさんのお父さんも参加する。
 その周りは騎士団が固めていて、万が一の事が無いようにしている。
 まあ、うちの馬が馬車を引っ張るから、警備に関しては全く問題ないと思う。

 既に沿道には、沢山の人が今か今かと待ち構えていた。
 そんな中、新郎新婦が姿を表すとわっと歓声が上がった。

「綺麗!」
「美しいわ」

 女性を中心として、感嘆の声が上がっている。
 アルス王子に対しても、「カッコいい」とか「羨ましい」という声が上がっている。
 そして準備が整ったので、パレードが開始される。

「出発!」

 先頭を行く騎士団長の合図で、パレードが出発した。
 一斉に、沿道から歓声が上がっている。
 その中を、オープンタイプの馬車に乗ったルキアさんとアルス王子が、沿道の観衆に向かってにこやかに手を振っている。
 後ろを行く陛下と王妃様達は、慣れている感じで歓声に対して手を振っている。
 俺達はそんなパレードの様子を、後ろから見送っている。
 順調に行けば、三十分でパレードは終了する。

 さて、その間お屋敷では披露宴に向けての準備が行われている。
 今回は大きなダンスホールと、ダンスホールから直結している庭で行われる。
 テーブルのセッティングは既に完了しており、スラタロウ監修の様々な料理が運ばれてきている。
 来賓は壁際に移動していて、色々とおしゃべりをしている。

 一角には子ども用に小さなテーブルとイスが用意されていて、皆座ってジュースを飲んだりしている。
 うちの子も多いので、俺は一緒に子ども達とお喋りをしている。
 子ども達は結婚式でのフラワーボーイ、フラワーガールが楽しかったのか、皆で花びらをまく仕草をしたりしている。

 そして、庭ではスラタロウとタコヤキによる料理の実演が行われる。
 オーク肉のローストビーフに魚の炙り焼きを予定していて、アルス王子の同級生の男性陣とビューティーさんにエステルが既にスタンバイしている。
 アルス王子の同級生達は、先程プロポーズしてめでたくカップルとなった二人を囲んでいた。
 二人の親類の貴族も参加していて、結婚式はいつかなんて話をしている。

 その様子を一部の女性陣が羨ましそうに見ており、「今日はヤケ食いよ」って意気込んでいる。
 
 そんな中、段々と周りの歓声が大きくなってきた。
 パレードの馬車が、こちらに戻ってきたのだろう。
 子ども達が一斉に動き始めたので、俺も後をついていく。
 エステルは……、ありゃ駄目だ。
 男性陣とビューティーさんとで、食事の事で盛り上がっている。
 エステルは放置して、ルキアさんを迎えに行こう。

「「「おかえり!」」」
「皆、ただいま」

 保護されている子ども達は、ルキアさんが馬車から降りてくると走ってルキアさんに抱きついていった。
 アルス王子にも抱きついている子どももいるので、二人して抱きしめたり頭を撫でてやったりしている。
 沿道の観衆も、微笑ましいものが見れたとほっこりしている。
 俺はカーター君を抱っこしながら、その様子を眺めていた。
 
「皆さん、歓声が凄かったですね」
「ええ。有り難いことに、沿道の方がみんな笑顔で」

 ルキアさんは、子ども達に手を引かれながらパレードを振り返っていた。
 それだけ多くの人に、ルキアさんが愛されている証拠でもある。
 
「早く行こう!」
「皆待っているよ」

 子ども達に手を引かれながら、ルキアさんとアルス王子が披露宴会場に姿を表した。
 大きな拍手で迎えられながら、二人は席に案内された。
 一緒にパレードに参加していた陛下達も、それぞれの席につく。

 それぞれのテーブルに飲み物が配られ、バルガス様による乾杯の音頭で披露宴が始まった。

 緊張から開放されたのか特にアルス王子に笑顔が多くなり、ルキアさんと楽しそうに談笑している。
 大人も子どもも、料理に舌鼓を打っている。
 おや、陛下も緊張していたのか、ワインを飲むペースが早いぞ。
 外ではスラタロウとタコヤキの料理実演が始まり、昨日手伝ってくれた龍や男性陣が群がっている。
 と、ここでウエディングケーキが出できた様だ。

「ウエディングケーキの用意ができましたので、新郎新婦はこちらにどうぞ」

 再び司会を務めるアルス王子のお姉さんのアナウンスで、二人はウエディングケーキの所へ。
 外にいた人達も、手に皿を持ちながらわらわらと集まってきた。
 ルキアさんとアルス王子は、入刀用のナイフも持って準備万端だ。

「それでは、ケーキ入刀です。どうぞ!」

 司会のアナウンスで、二人手を握りながらケーキ入刀が行われた。
 周りからは、割れんばかりの拍手だ。

「続きまして、新婦から新郎へファーストバイトです。遠慮なくいっちゃって下さい」

 ここで出てきたのは、リボンが付いた大きなスプーン。
 ルキアさんは、遠慮なくケーキをすくっている。
 来賓からはどよめきが起こり、アルス王子は若干引いている。
 そして、ルキアさんはそのままアルス王子にケーキを食べさせる。
 勿論アルス王子の口の周りは、ケーキのクリームでベタベタ。
 それをルキアが、丁寧に拭いてあげている。
 周りからは、拍手と共にヒューヒュー言われている。
 そのためか、アルス王子の顔が赤くなっている。
 エステルよ、アルス王子を指さして男性陣とビューティーさんと共にゲラゲラ笑っているのは流石にないぞ。

「大変素晴らしいファーストバイトでしたね。ケーキは切り分けて、皆さんにご用意します」

 こうして、披露宴は滞りなく進んでいく。
 ブーケトスに破れたハンター達は、ウエディングケーキをむさぼり食っているし、男性陣もローストビーフを食べまくっている。
 ルキアさんとアルス王子の所には、挨拶にきている貴族に混じって子ども達も突撃している。
 子ども達は、皆で集まって仲良くご飯を食べている。
 張り切って疲れたのか、カーター君は眠ってしまってカロリーナさんの腕の中にいる。
 勿論、俺も料理を楽しみつつ来賓の方と話をしている。
 来年は俺の結婚式の番とか、子どもの顔が早く見たいというちょっと気の早い話もあった。
 その話を聞いて、一緒にまわっているリンとフローレンスは思わず顔を赤くしている。
 正妻になるエステルは、相変わらず肉に群がっている。
 フローラ様が呆れてため息をついているので、後で説教コースだろうな。

 最後に手紙が読まれるが、今回はルキアさんのお父さんたっての希望で、お父さんが手紙を読むことになった。

 お父さんが結婚した事。
 ルキアさんが生まれた事。
 ルキアさんが小さい時にお母さんが亡くなって育児が大変だった事。
 人神教国に襲われてルキアさんと離れ離れになった事。
 大きくなったルキアさんと再会できた事。
 そして結婚式の事。
 
 涙ながらに手紙を読むお父さんを見て、アルス王子に支えられながらルキアさんは号泣している。
 勿論会場内も涙が止まらない。
 この時ばかりは、エステルもハンカチが使い物にならないくらい号泣している。

 そして、新郎新婦から両親に花束を渡して披露宴は終了となる。
 お酒の飲み過ぎかわからないが、アルス王子から花束を貰った陛下が号泣していて、王妃様達が若干ひいていた。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...