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第十章 火山噴火

第二百十四話 クラスメイト

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「疲れた……」

 怒涛の災害救助対応が一応の終わりをみせ、俺達はお屋敷の自室で久々にベットで横になっていた。
 実習生もクタクタになっていた。
 実習終了まであと一週間だが、一ヶ月間ぶっ通しで働いていたので、実習生含め二日間の休養が与えられた。
 子ども達にも無理をさせてしまったので、後で思いっきり褒めてやらないと。
 王都のお屋敷は、仕事でニール子爵領に行けなかったチナさん達に任せっきりだった。
 そちらも非常に申し訳ない。

 本音は一日ベットから動きたくないのだが、午後から王城に行かないといけない。
 というのも、カロリーナさんの実家であるブレンド伯爵に対しての沙汰が下るからだ。
 カロリーナさんは、王都のブレンド伯爵邸が捜索対象のために、弟と共にうちに逗留していた。
 捜索に関係ない個人の荷物はうちに送ってもらったが、倉庫から出できたというのは個人的には許せない。
 カロリーナさんも災害対応でぶっ通し動いていたから、今朝は流石に遅くまで寝ていた。

「では、王城に行きますよ」
「はい」

 謁見用に着替えたカロリーナさんをつれて、王城に移動する。
 弟はうちでお昼寝中だ。

「流石に疲れたかと思うが、こればかりは伝えないとならないのでな」
「いえ、お忙しいところ恐れ入ります」
 
 謁見の間にいたのは、陛下と内務卿だけだった。
 宰相とかは、別の仕事があるという。

「では、早速ブレンド伯爵に対する沙汰を言い渡す」
「はい」

 カロリーナさんの表情は固い。
 どんな処罰でも受け入れると言っていたが、流石に緊張しているのだろう。

「この度の領地放棄に伴い王都の屋敷を捜索した所、不正蓄財と納税違反も発覚した。納税違反は長期間の為、領地放棄よりも罪が重くなる。領主と嫡男が主犯で、執事も加担していた」

 あ、そっちの罪が出てきたか。
 これは思ったよりも罪は重くなりそうだ。
 カロリーナさんもこの事を察してか、手をギュッと握りしめている。

「また、カロリーナの母であるブレンド伯爵側室、並びに弟のカーターの母であるメイドの不審死について尋問した結果、領主夫人主導による毒殺と判明した」

 カロリーナさんが思わず陛下を見て再び視線を落とした。
 自分も全く知らなかった事実が白日の下に晒されて、目を見開き驚愕の表情だった。

「先ずブレンド伯爵については、長期に渡る納税違反により死刑となる」

 納税違反は国の根幹を揺るがす問題だから、こればかりは仕方ないだろう。

「伯爵夫人については、殺人と毒物取締違反で同じく死刑だ」

 別の事件が発覚して、そっちの方が圧倒的に罪が重くなったか。
 
「嫡男は納税違反となるが、違反期間が短いため死刑は回避する。しかし不正蓄財による汚職もあったために、無期禁固刑となる。執事など、不正に関わった侍従は有期の禁固刑だ」

 汚職は駄目だろう。
 もしかして、宰相が忙しいのはそのせいもあるのか?
 どう考えても役人が絡んでいるから。

「続いてブレンド伯爵家に対する沙汰を言い渡す。長期に渡る納税違反により子爵に降格とし、強制当主交代とする。また、領地は国預かりとした上で安全宣言が出るまで立ち入り禁止だ。不正蓄財は全て没収とし、主犯格三人の資産も没収とする」
 
 お、思ったよりも処分が軽いな。
 御家断絶もあるかと思ったけど違うし、領地も没収ではない。
 大噴火の後だから、復興は容易ではないだろう。

「カロリーナをブレンド子爵家当主とし、カーターにも貴族籍を認める。王都の屋敷については、捜索完了後にブレンド子爵に返還する。また、二人の財産については差押の対象外とする」

 おお、カロリーナさんはほぼ無罪放免だな。
 カーター君も貴族の一員として認められたし、かなり良い方向だ。

「陛下、私は両親に兄を止められませんでした。私にも罰を与えて下さい」

 カロリーナさんは、この沙汰に納得がいかないようだ。
 自分にも罪があると言うのだ。

「カロリーナよ、今回の沙汰は納税違反に殺人が主になる。カロリーナは全く関わりがなく、寧ろ被害者になる」
「しかし……」
「それに責任は冒した者が背負うものだ。子どもであるカロリーナが背負うものではない。今は納得できないかもしれないが、直にわかるだろう」
「はい、承りました」

 カロリーナさんは、無理矢理自分を納得させていた。
 これからは、幼いカーター君を育てながら当主としてやっていかなければならない。
 寧ろ、本当に大変なのはこれからだ。

「実習についてもあったな。カロリーナは実習先をライズ伯爵家に変更する。また、災害対応の功績として、カロリーナを含めてライズ伯爵家に実習に来ている学園生に褒賞を授ける」

 これは俺からも陛下に進言した。
 それだけ実習生は頑張っていたし、実績も残した。
 頑張った分のご褒美というわけだ。

「未成年の女当主なので、成人までは、ライズ伯爵を保護者とする。ニール子爵も気にしておったし、カロリーナが思っている以上に多くの人に支えられている事に感謝するように」
「はい」

 カロリーナさんは笑顔だった。
 これで今回の件は終了なので、カロリーナさんを連れてうちに戻る。

「「「「カロリーナ!」」」」
「皆……」

 うちに戻ると、実習生達が玄関ホールに集まっていた。
 やっぱりクラスメイトの事だから、心配していたようだ。
 エステルやリンなども待っていたので、食堂に移動した。

「結論から言うと、ブレンド伯爵家は子爵家に降格。領地は国預かりになった。当主にカロリーナさんがついて、カーター君も貴族として認められたよ」
「じゃあ、カロリーナは無罪?」
「無罪だよ。因みにカロリーナも含めて、実習生全員に国から褒賞が出る」 
「そっか、良かった」

 エスメはホッと胸を撫で下ろしていた。
 他のメンバーも、カロリーナさんが罪に咎められなくてホッとしている。

「サトー、降格まで付くって結構な重罪じゃない?」
「領地放棄だけでしたら、そこまでではないと思いますが」

 エステルとリンの見解はごもっとも。
 沙汰は公表されるから、早めに話しておくか。

「捜索したら、長期の納税違反に賄賂とか色々出てきたんだよ。しかもカロリーナさんとカーター君の母親は、毒殺されていた事も分かってね」
「あちゃー、それはどうしようもないな」
「まだ赤ちゃんなのに、カーター君が可哀想ですね」

 エステルとリンも、俺が話した罪状に納得していた。
 それではどうしようもないといった表情だ。

「カロリーナ、これからはどうするの?」
「王都の屋敷が返還されるまでは、サトー様の所にお世話になるの。それからは王都の屋敷に住むよ。生活の為に、頑張ってお金を稼がないと」

 確かに収入を得る方法が問題だ。
 学園を卒業して就職すればそれなりの金額が入るけど、資産を没収されてしまったので卒業するまでの間が大変だ。

「それなら、薬草取りを定期的にやれば大丈夫だよ」
「俺、薬草取りがあんなに儲かるなんて知らなかったよ」
「明日もお休みだから、カロリーナの都合が良ければ皆で行かない?」
「そうそう。俺達にも従魔がいるし、沢山取れるよ」

 皆で、カロリーナを薬草取りに誘っている。
 誰の手も借りずにお金を稼ぐ手っ取り早い方法は、やっぱり冒険者だな。

「カロリーナさん、行ってきたら? カーター君の面倒は、俺達が見ているから」
「引率で誰がついていかないと」
「そういって、エステル様が一緒に行きたいだけでは?」
「あっ、バレた?」

 カロリーナさんを、クラスメイトが囲って色々話をしている。
 陛下の言うとおりに、カロリーナさんが思っているよりも味方は多そうだ。
 やはりクラスの友人というのは、心強いな。
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