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第十章 火山噴火

第二百七話 ニール子爵へ急げ

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「これから災害対策の緊急会議だ。手が欲しいから、実習生もついてくるように」
「「「はい!」」」

 宰相の一言で、大会議室を使って緊急会議が開催される。
 大会議室に行くと、主だった部局や陛下も集まっていた。
 壁に大きな地図が張られて、各地に派遣されている影からの揺れの報告が記載されていく。
 段々と揺れの大きな所が集まって行き、震源地が何となく読めてきた。
 
「陛下、宰相。震源地ってもしかして」
「間違いない。貴族主義の連中の中で一番規模の大きいブレンド伯爵領だな。このあたりは火山もあるが、今の所噴火したという連絡はない」
「しかし、既に地震で何かしらの影響が出ている可能性がある。周辺の小規模領地も心配だ」

 バルガス公爵領から近いから、そこからなら道が大丈夫なら直ぐに駆けつける事ができる。

「下手にブレンド伯爵領に手出しはできない。隣のニール子爵領を拠点としよう」

 あれ、確かニール子爵領って。

「私の実家です」
「そっか、だから実家が貴族主義の領地の隣なのか」

 さっき興奮しながら隣の領地の事を言っていた少女は、今度は地震で被害が出ていないか不安でたまらない表情をしている。

「よし、直ぐに書類を準備しよう。サトーは先遣隊としてビアンカ達と共に現地へ。実習生も一緒にだな」
「分かりました。直ぐに準備します。ただ、このどさくさに紛れてやらかす奴らがいるかもしれません」
「直ぐに軍の巡回を強化しよう。この時点で国境に動きがあったら、人神教国が絡んでいるかもしれんな」

 こういうときは、機動力に優れているうちの出番だ。
 うちの馬なら多少の悪路は心配ないし、現地について他のメンバーを呼び寄せれば、災害救助もできる。
 王都は軍に任せて、直ぐに出発だ。
 そして、陛下は不安で押し潰されそうな少女の肩を叩いた。

「実習生、名は何と申すか?」
「ニール子爵家三女、エスメでございます」
「そうか。今は不安かもしれないが、現地の人にとっては逆にエスメが頼りだ。今は辛いかと思うが、気をしっかり持つように。なに、サトーがいるから心配不要だ」
「陛下、ありがとうございます。できることを頑張ってやってきます」
「うむ、だが無理だけはするなよ」

 陛下に励まされて少し元気を取り戻したのか、エスメは顔を引き締めてこちらにやってきた。
 俺は会議室にいたビアンカ殿下も連れて、一気にお屋敷にワープした。

 お屋敷に着くなり、中庭に皆を集めて今後の事を話す。

「王国西側で大規模な地震が発生した。これから先遣隊で向かった後に、皆を呼び寄せて災害救助を行う」
「ただ、火山の噴火も可能性としてある。十分に注意して行動するように」
「「はい!」」

 直ぐに皆色々準備に動いてくれた。今まで色々な事を経験しているだけに、かなり心強い。

「サトー、ルキアに獣人部隊にも動けるよう準備することを伝えよう」
「そうですね、ギース伯爵領でも大活躍していたし適任ですね」

 ビアンカ殿下が早速ルキアさんに連絡を入れてくれた。
 その間に、こちらも準備ができた。
 先遣隊は、俺とビアンカ殿下にエスメは必須で、オリガが御者をしてくれる。
 サファイアとスラタロウにホワイトも同行する。
 
「よし、では行ってくる」
「サトーさん、お気をつけて」

 リンに見送られながら、急いでバルガス公爵領のお屋敷にワープした。

「こちらは目立った被害はない。昔から火山の影響で、地震に強い街づくりをしていたのが助かったな」
「流石はバルガス様です」
「とはいえ、こちらも周辺地域の小規模領地の支援を行わないとならない。サトー殿に頼ってしまうが、ニール子爵領を頼んだぞ」
「はい、こちらはお任せください」

 さすがバルガス様、地震に強い街づくりをしていたなんて。
 ここは被害が殆どないから、周辺地域の災害拠点になれる。
 俺達も、直ぐにバルガス公爵領からニール子爵領に向けて出発した。

「うわあ、街道も亀裂ができていますね」
「山ではがけ崩れも起きているかもしれん。慎重に向かわないと」
「それでも、物凄い速さで馬が進んでいますね」

 ポイント事にビアンカ殿下から陛下に報告を行いながら、馬車は街道を爆走していく。
 余りの馬車の速さに、さっきまで不安顔だったエスメも驚きの顔に変わっている。

「普通の馬車ではバルガス公爵領から四日はかかりますが、もう着きそうですね」
「今回は非常時だから、コントロールできる速さで飛ばしているけどね」

 地面の割れ目も何のその。
 バルガス公爵領を出てから三時間で、あっという間にニール子爵に到着。

「これは酷い!」

 思わずエスメが、辺り一面の惨状のショックで口を覆った。
 地震の揺れで建物がアチラコチラで崩れていたからだ。

「直ぐに救助部隊を呼びましょう」
「ここからは時間との勝負じゃな」

 俺達は急いで行動を開始した。
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