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第九章 王都生活編

第二百二話 実習生受け入れ開始

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「どんな人がくるかな?」
「楽しみ!」
「ララも!」
「ワクワク」

 今日は実習生受け入れの日。
 受け入れがある貴族は、午後はお休みになるという。
 なので、うちも総出でお出迎えする。
 子ども達は実習生がくるので、朝からテンションMAXだ。
 因みにキチンとした服装でお出迎えしないといけないらしいので、皆執務服や騎士服に着替えてある。
 いつの間にか子どもバージョンの服も用意されていて、マシュー君達やマチルダにコタローもお着替えしていた。
 チナさん達は侍従の服に着替えてある。

「お、見えた!」
「一杯いる!」
「こっちに来た!」
「ワクワク」

 門番が実習生が来たと伝えてきたので、お屋敷の前に並んだ。
 あとミケたちよ、少し落ち着きなさい。さっきからはしゃぎ過ぎ。
 少し緊張している表情の学園生が、なんだか初々しく見える。
 学園生が並んだところで、お互いに挨拶。

「ようこそライズ伯爵邸へ。当主のサトーです。二ヶ月間宜しくお願いします」
「「「「「宜しくお願いします!」」」」」

 若干かんじゃった学園生もいたけど、挨拶も終わったので行動開始。
 マルクが前に出て説明している。

「これから各部屋に案内をします。今後の事について説明しますので、一時間後に二階のパーティールームに集まって下さい」
「「「「「はい!」」」」」

 学園生は、チナさん達に案内されてそれぞれに割り当てられた部屋に向かっていった。
 さて、俺も説明の準備をしないと。
 
「で、何でビアンカ殿下もいるんですか?」
「サトーと仕事すると、必然的に妾と接する。説明に来て至極当然じゃ」

 いつの間にか来ていたビアンカ殿下は、当たり前の様に説明会場にいた。
 その理屈は間違っていないが、王城に行ったときに説明しても問題ない気がする。
 ビアンカ殿下と話をしている内に、段々と学園生が集まってきた。
 まだ時間があるけど、部屋で休まなくて良いのかな?
 
「ふむ、ほぼ今年の五年の成績優秀者だな」
「マジですか?」
「本当だよ。特にあのうさ耳の子は平民だけど、特待生で学年首席だね」
「なんか、凄いメンバーが集まっていませんか?」
「とはいっても、ここにいるエステルお姉様にリンにフローレンスの六年生も、学年ではトップクラスじゃ」
 
 きっと俺だけでなくうちにいる六年生の影響もあって、これだけのメンバーが揃った気がする。
 うわー、責任重大だ。
 と、とりあえず時間は早いけど、揃ったから説明をしないと。

「では、改めて実習内容について説明します」

 俺が説明しようとすると、ビアンカ殿下が前に出た。

「ビアンカじゃ。妾の事を知っている者も多いかと思うが、特に文官とは一緒に仕事をする機会が多い。この国のまさに進むべき方向を学べるので、期待するがよい」
「フローレンスです。侍従志望の方は三人体制で指導にあたります。このお屋敷には多くの人が訪れますので、内部だけではなく外部にも気を使ってください」
「リンです。主に軍属の人の担当です。基礎的なトレーニングから、戦術等も指導します。訓練の一つとして、王都の巡回や国境警備隊との合同訓練も予定しています」
「最後に私エステルから。全員を対象にした野営訓練も予定しています。遠方に出張する事もあるから、経験しておくと助かるよ」

 えーっと、俺が話そうとしたことが全て話されてしまった。
 これは分担ができていると思って、素直に喜んだ方が良いのかな?
 特に六年生組は張り切っている。
 ここで水をさすのは無粋と思っておこう。

「それでは質問内容タイムです。答えられる範囲で回答します」

 質問タイムに切り替えて、話題を変えよう。
 お、早速文官志望の女子が手を上げた。

「エステル殿下とリン様がサトー様と婚約しているのは知っていますが、フローレンス様がここにいるのは何故ですか?」
「それはまだ公表してないだけで、フローレンスちゃんもサトーの婚約者の一人だよ」
「成程、だから王城からサトー様の所で働いているんですね」

 成程、王城で働いていたフローレンスがここにいることが不思議だったんだ。
 でもエステルよ、あっさり婚約の事をバラすのは良くないぞ。

 次は侍従志望の女子だけど、何となく質問の意図がわかった。

「あのー、お子様達が抱っこして欲しいみたいですが、宜しいですか」
「申し訳ないです。お願いします」

 マシュー君達にコタローが、さっきから新しい人に抱っこして欲しくてウズウズしていた。
 侍従志望の女子も、笑顔でマシュー君達を抱っこしていた。
 まあ、この子達が安心しているということは、ここにいる子達は良い子で間違いない。

「勇者ミケ様と知の令嬢レイア様は直ぐに分かりましたが、聖女サトー様ってもしかして当主様の事ですか?」

 うぐ、ここで返答し難い質問が。
 兵士志望の男の子が手を上げて質問してきた。
 どうしようかと悩んでいたら、女性陣に後ろを向かされて女装させられた。

「「「おお!」」」
「聖女サトーはサトーの女装した姿じゃ。因みに世の中の聖女伝説は、ほぼ事実じゃ」
「化粧もしないでウイッグ被っただけで、こんなにも美女になるんだよ」
「女性にとっては羨ましいですよね」
「この姿で様々な行いをされているのですわ」

 どちらかというと、美女になれる俺の事を女性陣が羨ましく思っている説明だけど。
 そして、何故この説明で学園生は納得したんだ?
 学園生は、聖女に会えたとキラキラした目で俺を見ている。
 あのー、男が女装しただけですが。

 そして、お屋敷の案内をすることに。
 二階はプライベートスペースが多いので、一階の施設を案内する。
 先ずは食堂スペース。既にスラタロウが歓迎用の料理を作っている。

 ガチャ。

「もぐもぐ、遅かったな」
「人数も多いと大変なんだろう」
「うちは一人だったから、楽だっぞ」
「サトーよ。後で、うちに来た実習生も合流するからな」
「スラタロウも人数が増えて張り切ってるぞ」
「「「「……」」」」

 宰相を含む閣僚が、食堂でスラタロウの料理の試食をしていた。
 しかも、後で実習生もくるという。
 突然のだらけた閣僚の姿をみた実習生は、まさに目が点になっていた。

「えっと、皆様よく来られますので」
「殆どがスラタロウの料理目当てだけど」

 リンとエステルがフォローするが、お構いなしに飲み食いしている閣僚達。
 俺は黙って食堂のドアを閉めた。

「えっと、気を取り直して。ここが図書室です。量よりも質で選んでいます」

 次は小さいけど図書室の部屋。
 絵本から勉強の本に専門書もある。
 小さいけど、実用的だ。

 ガチャ。

「あの、王太子妃様。何故こちらに?」
「今日の午後はどこもお休みで、王城の図書館もしまっていますから。ここなら絵本も質の良いのが揃っていますわ」
「えほんたのしー!」

 ドアを開けたら、今度は王太子妃様がウィリアム様に絵本を読み聞かせていた。
 この後の歓迎会にも参加する気満々だな。
 俺は黙って図書室の扉を閉めた。

 気を取り直して、今度はお風呂を案内する。
 殆ど手を加えなかったこのお屋敷だが、お風呂だけは大幅に改修した。
 お陰でかなり快適な浴室になっている。

「お風呂は男女別で、清掃時間以外は常に使えます。朝の訓練後にも入浴可能です」

 あれ?
 お風呂の説明の途中で、皆の視線がお風呂の入り口に向いている。
 浴室から陛下と王妃様達が出てきた。

「あの、何故我が家のお風呂に?」
「王城の風呂が故障してるからな」
「ええ、修繕部に修理を依頼しましたよ」
「直るのが明日になるんですって」
「せっかくの学園生の歓迎会なのだから、綺麗にしないと」
「後で息子達も入ってきますわよ。ここのお風呂は広くていいわね」

 言う事だけ言って、ほぼ自分達の部屋代わりにしてある客室に当たり前の様に入っていった。
 本当にフリーダムな王族だよ。
 因みに実習生は、ヤバいところにきてしまったと思っている様だ。
 俺もその気持ちはよく分かる。

 今度は屋敷を外から説明する。

「このお屋敷ですが、実は外壁は現在王都に建設中の防壁以上の防御力を誇ります」
「外壁のタイルは全て龍のウロコを贅沢に配合しておる。更に外装のペンキにも龍のウロコを配合しておる。ぶっちゃけ、ここを落とすのは至難の業だな」
「だからお父さんもお母さんも、安心して来ているんだよね」
「因みに離れの部屋も全て改修済です」

 王城を軽く凌ぐ防御力だからな。
 勿論王城も改修しているけど、広いからまだまだ時間はかかる。
 と、そこに馬がやってきた。
 馬も実習生に挨拶するらしい。

「あの、屋敷の中を馬がうろついていて大丈夫ですか?」

 おっと、さっきからコタローを抱っこしている侍従志望の子から、的確な質問があったぞ。
 確かに、普通は馬がポクポク歩いているなんてないよね。

「お馬さん頭いいから大丈夫だよ」
「そうそう」
「しかもお屋敷の門兵もできるの」
「メッチャ強い」

 ミケ達が話をするが、それでもまだ信じられないようだ。
 お、門の所に手紙を運んできた人がいる。
 馬は当たり前の様に門の所に行って手紙を受け取り、こちらに運んできた。

「まあ、このくらいは朝飯前です」

 俺が説明をすると、馬はドヤ顔をしている。
 もう少し一緒にいれば、実習生も慣れるかな。

「それでは実習生を歓迎して」
「「「「「乾杯!」」」」」

 スラタロウの料理ができたので、パーティールームで歓迎会を始める。
 今日は、立食形式で楽しんでもらう。
 因みに後から来た閣僚の所に実習にきている学園生は、まさか王族が揃っているなんて思ってもなかったようで最初は固まっていた。
 それでも仲間と話をしている内に緊張がほぐれたのか、今はスラタロウが作った料理をもりもり食べている。
 エステル達六年生や子ども達とも話をしているので、このまま仲良くやってほしい。

「うーん、流石はスラタロウの料理だ」
「毎回新作があるから楽しみだわ」

 そして、料理目当ての大人達は、ストレス発散も兼ねてめちゃくちゃ食べて飲んでいる。
 完全に酔っ払いの集まりになっている。
 うーん、何だかいつもと変わらないノリになってきた。
 こうして、我が家での学園生の実習生活が始まった。
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