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第九章 王都生活編

第百九十五話 防壁工事の会議

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「流石は龍ですね。もう治療の必要もないですね」
「いえ、そもそも龍に治療できるサトーさんが凄いのですが」

 シラユキさんの治療を始めて一週間。
 治療はほぼ終わったので、リハビリに移行できる。
 流石は龍だと思ったが、普通は人の魔法では治療ができないらしい。
 そして、いつの間にか龍も治療できる聖女様という噂が流れていた。
 流したのは王妃様達だと思うが。

 そして貴族主義の連中は、愚かにも龍に喧嘩を売ったことになった。
 でも事実だし、俺も何も言えない。
 昨日は陛下や閣僚の許可の元、ドラコの母親やおばさん達が貴族主義の連中の屋敷の上を低空飛行していた。
 ギャオギャオと怒りの叫び声を上げ、牽制で上空に炎のブレスまで吐いていた。
 これで、貴族主義の連中も大人しくしてほしいものだ。

「王都の警備は何をしていると言ってきた。全く呆れたものだよ」
「自分達が龍を怒らせたと分かってないんですね」

 全く効果がないのにびっくりしたが、俺達はやることは進める。
 今日は防壁の進捗状況の会議に、関係者が集まっている。

「設計図通りに進捗しています。土魔法が使える人をフル稼働させてますので、進捗は早めです」
「いや、早めというか早すぎだろう」

 陛下も苦笑いしているが、確かに進捗は早い。
 現在の城壁から二キロ離れた所に新たな防壁を作る。
 あえて防壁と言っているのは、城壁というと貴族主義の連中が王家の勢力拡大だとうるさいからだ。
 貴族主義の連中マジうざい。

「防壁の進捗はだいたい二割ほど。城壁と防壁との間は整地も必要じゃ」
「その整地も、スラムの人にレイア考案の魔道具を使って仕事をさせている」
「薬草が取れる森は、あえて残しています。住民の憩いの場にもしたいので、公園として整備します」

 全てを俺達がやるのは良くないので、街の人も動員して整地を進める。
 国としても公共事業を行っているとアピールできるし、周りの貴族からも協力を得やすい。
 時々労働者向けに行っている炊き出しも好評だ。
 ゴレス領から建築用の木材も運び込まれていて、ドワーフ自治領からも建築用の金具が送られてきている。
 早いところでは、市街地の造成と住宅の建築も始まっている。
 
「貴族主義の連中からは、何故我々を誘わないんだと言っておるな」
「いや、別に誘っていない訳ではないし、あちらから女や獣人と一緒に仕事ができるかと断ってきましたよ」

 今回の防壁工事は市街地造成もあるので、王国中の貴族に声をかけて開発の勉強会も行なっている。
 更にレイア発案で、各地の特産物をどう輸送するかという勉強会も行なっている。
 これが大好評で、派遣された文官だけでなく当主自ら勉強会に参加している所もある。
 諸事情で参加できない所もあるので、申請すれば出張勉強会も行う予定。
 勉強会は来る人拒まずなので、身分人種性別に関係なく参加している。
 連日白熱した議論が繰り広げられているが、貴族主義の連中だけは難癖をつけて勉強会に参加していない。
 貴族当主だけにしろとか、貴族主義の勢力を優遇しろとかとにかくわがままで、結局参加してこなかった。
 もしかしたら家臣を参加させてくるかなと思ったら、そこは貴族のプライドがあるらしく、きっぱりと参加してこなかった。

「奴らの事は、もうどうでも良いな」
「はい。警戒は続けていきましょう。未だに何を仕出かすか、わからないので」

 念の為に警戒は続けることに。
 
「宰相、万が一貴族主義の勢力が離反した場合、どのくらいの影響がありますか?」
「人口の二割ほどが離反地域に入る。万が一攻めてきた場合は、かなりの被害になる。農作物などは全く影響がなく、むしろ離反地域の方が輸入に頼っている」
「となると、被害にあうのは住民ですか」
「いつの時も、巻き込まれるのは弱者だな」

 離反するとむしろ影響を受けるのは貴族主義の方なのに、当主がその事を分かっていない。
 何とも悲しいことだ。

「各地の要望も吸い上げている。実現可能な順にリストアップしている」
「正しい要望なら何も問題ないですね」
「中にはアドバイスで済むものもあるし、意外な発見もあって面白い」

 これもレイアの案らしい。
 人が集まるのだから、どうせなら意見を集めてしまえと。
 貴族主義の連中が抜けた穴を優秀な若手が埋めているので、要望の処理も早い。

「午後は現地で作業を手伝います」
「妾も現地じゃのう」
「ドワーフ自治領での件はもう少しかかる。それまでは防壁工事を頼もう」

 会議が終わったので、昼食を取ってから現地に向かう。
 順調に工事が進んでいるかな?
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