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第六章 叙爵と極秘作戦

第百六十二話 第三回薬草取り選手権

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「クロエです、宜しくお願いします」
「わー、パチパチ」

 翌日朝に、改めて皆の前で自己紹介。
 クロエは八歳で、ちょうどエステル殿下やシルク様にアメリア様と同じ歳だった。
 貴族と平民の違いはあるが、是非とも仲良くしてほしい。
 ララ達も新しい家族に喜んでいたし、タラちゃんやスラタロウも歓迎ムードだった。
 
 さて、昨日書類整理をしていて一つ問題が分かった。
 ブルーノ侯爵領でも戦闘後にあったけど、ギース伯爵領でも薬草不足になっていた。

「薬草取りならミケ達にお任せだよ」
「また一杯取ってくるよ」
「どれだけ取れるか楽しみ!」
「今日はレイアも参加できる」
「久々に薬草取りだね」

 薬草不足と聞いて、早速やる気を出した子ども達。
 既に冒険者の服装に着替えている。
 ここで、意外な助っ人が現れた。

「私も冒険者登録しています。薬草取りなら任せてください」
「ギース伯爵領にも、薬草が取りやすい森があります」

 なんとクロエとヘレーネ様が手を上げた。
 二人とも冒険者登録してあって、周辺で薬草取りをしたことがあるという。
 そして更に援軍が増える。

「私も冒険者登録をして、皆さんのお手伝いをします」
「どこまでできるか分かりませんが、頑張ります」
「小さい子がやるのですから、年上の私も頑張らないと」
「少しでもギース伯爵領の役に立ちたいです」
 
 シルク様に加えて、アメリア様とカミラ様にノラ様も手伝うという。
 ちょうどいい機会だから冒険者登録して、フウの従魔登録もしてもらおう。
 話に加わってきた人は他にもいた。
 
「俺たちもやりますぜ。今日は他に仕事がないんで」
「護衛は必用でしょう。皆重要な立場だし」

 今日は工兵作業をしない獣人部隊の人達と、ちゃっかり混じってきたエステル殿下。
 というか、王族のあなたが一番立場が上でしょう。
 そして薬草取りというだけあって、お屋敷の解体作業を行うスラタロウ以外の従魔も既にやる気満々。

「ヘレーネは大丈夫でしょうか?」
「戦力的には全く問題ありません。どちらかというと、色々取り尽くさないか心配です」
 
 ダニエル様はヘレーネ様が行くので危険がないか不安になっているが、あのメンバーなら魔物が一万匹現れても余裕だろう。
 俺は森の恵みを取り尽くさないか、そちらの方が心配です。
 そして馬の引く馬車に乗って、一行はまずギース伯爵領の冒険者ギルドに向かっていった。
 馬までいるのか。
 本当にやりすぎないか心配になってきた。

 心配はしてもしょうがないので、俺は書類整理を進める。
 新しい文官もとっても戦力になるので、着々と書類をさばいていく。

「ねぇー、ねーねはいつ帰ってくる?」
「うーん、夕方には帰ってくるかな」
「にーには?」
「今日はずっとここにいるよ」
「じゃあ、遊ぼう!」
「じゃあ、あと十分したらボール遊びしよう」
「「「やった!」」」

 お留守となったマシュー君達の相手をしないといけないので、時間を区切って遊ぶことにする。
 ボールといっても、使うのはタラちゃん達の出した糸をボールにしたもの。
 野球ボール位の大きさだけど、これで数千万円の価値があるという。
 高級品だけど、タラちゃんの糸だし気にしない。
 ちょうど仕事も一段落したので、庭でマシュー君達とボール投げで遊ぶ。
 いつもはベリルやフウと追いかけっこをしているらしいので、動くのは大好きらしい。
 三人と遊んでいると、突然エステル殿下とショコラが目の前に現れた。

「あ、丁度いい所にいた」
「あれ? エステル殿下、もうお帰りで?」
「そんなわけないでしょうが。カゴが一杯になったから、予備のが欲しいの。ついでにアイテムボックスに収納して」

 ああ、いつものことね。
 今日は俺が同行していないから、呼びに来たのか。

「エーちゃん、ねーねは?」
「まだ薬草取っているよ。一緒にくる?」
「「「いくー!」」」

 マシュー君もついていくといったので、一緒に行くことに。
 しかし随分と懐かれているなあ。

「ふふーん、私は子どもに懐かれやすいのよ」

 こどもっぽいからとは言わないようにしよう。

「「「ねーね!」」」

 ショコラにワープしてもらったら、マシュー君達は直ぐにお姉さんに抱きついていった。
 その光景を横目にして、薬草の入ったカゴを回収していく。
 随分ととったなあ。

「ミケ、一杯取ったよ!」
「薬草一杯!」
「色々種類もあったよ」
「魔物も少ないし、ここはいい場所」

 ミケ達もよってきたけど、ここは街から近いのにとてもいい条件の森らしい。
 適度に日差しも差し込んでいて、木の種類も多い。
 サファイアやホワイトも、沢山のキノコや木の実が取れてご満悦だ。
 お昼になるので、皆でお屋敷に戻ることにする。

「私、あの森であんなに薬草が取れたの初めてです」
「私もです。しかも沢山の種類が取れました」

 あの森での薬草取り経験者であるヘレーネ様やクロエもビックリの成果だった。
 しかもまだ午前中、午後も行うという。

「妾も午後は暇になったので、参加するとするか」
「でしたら、私達も護衛につきましょう」
「マシュー君も行くとなれば、お世話できるメイドも必用ですね」

 午後は更にメンバーが増える事に。
 しかも午前中で仕事が終わったスラタロウも参戦。
 これ、薬草取る量は間違いなく過去最高になるだろう。

「どうせなら、サトーも参加するがよい」
「午前中で必要な分の書類は終わったので大丈夫ですよ」
「儂もその森に行くとしよう」

 ビアンカ殿下の誘いにダニエル様もオッケーをしたので、俺も参加することに。
 軍務卿までも参加するとなると、とんでもない人数になりそうだ。

 ということで、お昼食べ終えたので準備できたら森にワープ。
 人手が増えたので、色々採取することにしたらしい。

「ふむ、この森は良い所だな。軍も定期的に採取によこそう」
「薬草の種類も多いので、軍としても助かりますね」

 軍務卿も太鼓判を押す森なので、これからも多くの人が訪れるだろう。
 ギルドの収入が増えるとその分ギース伯爵領に入る税金も増えるので、ヘレーネ様にとっても大助かりだ。
 軍務卿と話をしていると、マシュー君が何かを連れてきた。
 見た目はハリネズミだな。

「にーに、これはなあに?」
「うーんと、ニードルラットだって。捕まえたの?」
「薬草取ってたら、こっちに来た!」

 冒険者のハンドブックに書いてあった名前はニードルラット。
 まんまハリネズミじゃん。
 これはまた従魔になるオチじゃ。
 よく見ると、ジョン君とルーク君も一匹ずつ胸に抱いている。
 針を出さないあたり、もう確定だろう。
 
「マシュー君の従魔になりたいのかも。名前をつけてあげたら?」
「やったー! じゃ、ニー!」
「うーんと、僕はテオ!」
「ハリちゃんにする!」

 もう、マシュー君達は大はしゃぎ。
 そしてニードルラットはハリネズミと違って薬草を食べるらしい。
 ということは、タラちゃん達と同じく薬草を見つける能力がある。
 昼食が終わって一時間ほど、あっという間に予備のカゴも一杯になってしまった。
 ということで、今日の薬草取りは終了。
 絶対に過去最高の量だ。
 ちなみに先輩ネズミのホワイトが後輩ネズミのニー達に色々教えているようで、何だか微笑ましい光景だ。

 ギルドについて薬草を取り出すと、受付のお姉さんがビックリしていた。
 そりゃそうだろう。査定のテーブルには薬草がてんこ盛り。
 ちょっとした薬草の山になっている。
 査定が済むまで待っていると、酔っぱらいの冒険者三人が近づいてきた。
 身なりもボロボロなので、この街に住んでいない流れの冒険者なのだろう。

「綺麗なねーちゃんがいっぱいだな」
「俺達の相手をしてくれよ」
「たっぷり可愛がってやるぜ、ガハハ!」

 酔っぱらいは、アメリア様達に絡んでいる。
 エステル殿下や軍務卿の殺気に気がつかないあたり、冒険者としても低レベルなんだろう。
 ここで、小さい助っ人が現れた。

「ねーねに近づくな!」
「悪いおじちゃんはでていけ!」
「僕達がやっつけるんだから!」
「ガハハ、勇ましい坊やだ」
「ヒヒヒ、怖い怖い」
「坊やはうちに帰ってねんねしな、アハハ!」

 マシュー君達がアメリア様の前に立ちふさがったが、酔っぱらいは子どもがナイト気取りなのがおかしいのか更に笑い始めた。

「もう、怒ったぞ! ニー、やっちゃえ!」
「いけ! テオ!」
「ハリちゃんもやって!」
「「「ウギャー!」」」

 あ、マシュー君の合図でニードルラットが風魔法で酔っぱらいをふっ飛ばした。
 当然、皆突然の事にあ然としている。
 そんな中、一匹頷くホワイト。
 ホワイトさんや、後輩ネズミに何を教えているんですか!

 ちなみにあの酔っ払いは別のギルドで同じく酔っ払って暴れていたために、全国に指名手配されていた。
 そうとは知らずに酔っぱらいを倒したマシュー君達には、懸賞金がたっぷり入った。
 勿論マシュー君のお金は、お姉さんが暫く管理する事になった。
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