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第六章 叙爵と極秘作戦

第百五十六話 保護下におく少女達

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「いやあー、国境の方は程良いレベルの魔獣が出てくれたから、兵士の特訓に丁度よかったよー」
「そうか、それは良かった。いつまでもサトー達に頼るわけにはいかないから、タイミングも良かったのだろう」

 ショコラが、国境の警備のお守りで残っていたリーフを連れてきた。
 アルス王子と話をしているが、俺達抜きで魔獣を撃退したのは兵にとってもいい経験になりそうだ。
 アルス王子はそのまま国境に戻るというので、ショコラが送っていった。
 ルキアさんも、仕事が残っているから送っていった。
 獣人部隊とかは、王都からの軍が到着したらブルーノ侯爵領に戻るという。
 ルキアさんは、ギース伯爵領へ通じる山道の工事にも着手してくれるそうだ。
 ちなみにシルク様は、暫く俺達と一緒に行動する予定。
 シルク様が一緒の理由は、俺が保護することになった三人の少女と三人の男の子に関連している。
 ビアンカ殿下とシルク様は同じ八歳で、ちょうど三人の少女も八歳。
 同じ歳なら話をしやすいと思ったのだろう。

「というわけじゃ、同じ歳だしそなたらはまだ貴族令嬢扱い。そう気を張る必要もないのじゃ」
「そうそう、気楽に気楽に」

 若干一名、精神年齢が八歳の方が混ざっているが気にしないことにした。

「私はゴレス侯爵家のアメリアです。この子はマシューです」
「ブラントン子爵家のカミラと申します。この子はジョンという名前です」
「マルーノ男爵家のノラです。弟のルークです」

 三人は自己紹介をしてくれた。
 アメリア様は黒に近い茶髪で、腰まであるロングヘアー。
 カミラ様は赤に近いショートヘアで、ノラ様は緑に近いボブカット。
 弟はお姉さんの髪色にそっくりだった。
 ちなみに弟は二歳から三歳の間で、遊びたいのか姉の腕の中から出ようとしている。

「ララです」
「リリだよ」
「レイア」
「ドラコです。この子はベリルだよ」
「ウォン」
「ララ達は弟君と遊んでおいで」
「「「「はーい」」」」

 ララ達は、アメリア様の弟達と一緒に遊び始めた。
 これならお姉さん達も弟の事を気にしなくていいから、少し落ち着くだろう。

「すみません、気を使って頂いて」
「いえいえ、それよりも獣人の子は大丈夫ですか?」
「私達は獣人に偏見はありません」
「ずっと前から、お祖父様やお父様のやり方には疑問を持っていましたので」

 アメリア様達は獣人に偏見がない分だけ、今回の様な危険な薬を飲まされたのだろう。
 ヘレーネ様も、加害者であって被害者であるアメリア様に複雑な感情を抱いていた。

「ヘレーネ様。この度はゴレス侯爵家が大変な事をしてしまい、お詫びのしようもありません」
「「誠に申し訳ありません」」

 改めてアメリア様達はヘレーネ様に謝罪した。
 この子達は本当に優しい気持ちの持ち主なのだろう。
 だから子どもとはいえ、実家のした事が許せないのもあるだろう。

「私はまだ気持ちの整理がついていません。今はノアを、そしてギース伯爵領の民の事で頭が一杯です。しかし、アメリア様に謝罪されて少し救われた気がします」
「ヘレーネ……」

 ヘレーネ様は、素直に今の気持ちを伝えていた。
 その様子を、エステル殿下も心配そうに見つめていた。
 今は色々あったばっかりだ。
 ゆっくり時間をかけて、心の中を整理する必要もあるよな。

「ビアンカ殿下、ゴレス侯爵がどうなるか分かりますか?」
「いや、正直わからぬ。はっきりしているのは、領地と王都の屋敷に加えて全ての資産の没収じゃろう。そこからギース伯爵領に賠償金が支払われる。貴族としての扱いは、裁判の結果が出るまではわからん」

 うーん、今回は王国始まって以来の事だから、誰も即座に判断できないだろうな。

「じゃが、平民になる可能もあるが、アメリア達に弟の身は大丈夫じゃ。母上が父上に釘をさしてしたからのう」
「うん、私も身の安全は問題ないと思う。サトーに保護されているから、衣食住は問題ないと思うし」
 
 王族二人の意見もあり、アメリア様は明らかにホッとしていた。
 それだけの覚悟を持って陛下に弟の身の安全を頼み込んだのだし。

「私の場合は、父親が亡くなる前に領地を王国に返上したのがあったからなんですね」
「そうじゃ、シルクの父と兄上との対応は公式にされている。また、ビルゴを倒したという実績もある」

 ランドルフ家の場合は最後の最後に色々あったから、その分が功績として加算されたのだろう。
 だが、アメリア様達は知らないが、ゴレス侯爵が護送される時に更にやらかしたから、王国はゴレス侯爵家に対して相当印象が悪い。
 お家取り潰しでも文句は言えないだろう。

「まあ、どうせサトーと一緒にいるのなら、功績で独自に叙爵される事もあるじゃろう」
「あー、その可能性は全然否定できないね。ミケちゃんですら貴族当主になったし」
「え? ミケちゃんって、あのネコ獣人の女の子ですよね?」
「そうだよ。国を救った英雄のリンドウ男爵は、ミケちゃんの事だよ」

 アメリア様達は、ミケが貴族当主であることが信じられないようだ。
 しかも各地の問題を解決した英雄は、実は結構有名だったりする。
 ちなみにミケは再び街の巡回に出ている。
 どうもヘレーネ様の初陣で矢を放たれたのが許せないらしく、獣人部隊と街に繰り出していた。

「そうなると、かの有名な救国の聖女様も近くにいるのですか?」
「近くというか、直ぐ側にいるぞ」
「そうそう、直ぐ側にね」
「「「え?」」」

 そんな反応になるよね。
 アメリア様達は、ビアンカ殿下とエステル殿下に指をさされた俺を見て固まっていた。
 シルク様も思わず苦笑していた。

「聖女サトーは、サトーが女装した姿じゃ」
「機会があったら見てみるといいよ。女性である自信が無くなるけど」
「私はエステル様の言っていることがよくわかります」
「信じられません」
「同じく」
「私もにわかには信じられないです」

 エステル殿下が何か言っていますが、俺は女装しませんよ。
 ほら、ヘレーネ様が期待している目になっているから、余計なことは言わないの。

「とりあえずアメリア様達は魔獣から戻ったばっかりなので、今日は一日安静にしてください。ゴレス侯爵領に行くのはどんなに早くても明後日以後なので、弟君を優先として炊き出しとかの手伝いをしてくれれば助かります」
「「「分かりました」」」

 こんなものでいいかな?
 こちらが言わないと、無理してでも動こうとするから牽制しておかないと。

「では、妾はレイアをつれて防壁作りの続きといこうかのう」
「じゃあ私も炊き出しに戻ろう」
「私も治療所を手伝います」
「私もお手伝いします」

 方針が決まったので、各々担当に散らばっていった。
 弟君と遊んでいるララ達は、今日はそのままにしよう。
 さて、俺はこのボロボロになったお屋敷から、必要なものを降ろさないといけないな。
 せっかく朝一でビアンカ殿下とスラタロウが簡易倉庫を作ってくれたのだし、少し頑張るか。
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