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第六章 叙爵と極秘作戦

第百三十五話 人神教国への対策会議 其の一

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「サトーお帰りって、何かあったの?」
「お姉ちゃんが血だらけになっているよ!」

 王城に戻ってきて最初に会ったエステル殿下とミケは、俺の血だらけのドレスを見られて滅茶苦茶びっくりしていた。
 その声を聞いた他の人も、集まっては俺の血まみれのドレスを見てびっくりしている。
 ヤバい、あのバカな司祭のせいですっかりドレスの汚れを忘れていた。急いで生活魔法をかけて、血まみれのドレスを綺麗にする。
 ドレスが綺麗になって、俺もみんなもホッとしていた。
 と、そこに陛下達もやってきた。

「おお、帰ってきたか。すまんが急いで会議室に集まってくれ」
「父上、我々もですか?」
「そうだ。むしろアルスが対応の中心になるだろう」

 陛下に声をかけられたアルス王子は、まだ状況を知らないからしょうがないけど、これはランドルフ領がキーポイントになるし。

 ということで、防音バッチリの会議室に閣僚に関係者が集まった。
 関係者が揃った所で、会議開始になった。

「本日教会の前にて馬車同士の事故が発生。原因は、人神教会の司祭がのる馬車の無理な割り込みです」
「また人神教会が問題起こしたか」

 宰相より簡単な報告が入ったけど、陛下がまたと言いだした。
 それだけ王都でも、人神教会は色々やらかしているのだろう。

「人神教会側の被害は司祭が軽傷でしたが、あおられた馬車は転倒を起こして重軽傷者十五人という惨事でした。近くにサトー殿がいなければ、多数の死者が出たでしょう」
「そうか、それはサトーに感謝しないとならないな」
「できることをしただけですよ」

 突発的な治療は前にもやっているし、そう難しくはない。
 問題はその後なんだよ。
 宰相もその事が分かっているのか、溜息をついて話を続けた。

「問題はここからです。司祭は大勢市民がいる前で、人神教の信者以外は邪教徒とキッパリと言い切りました」
「「「なに!」」」
「司祭がこの事を言う前に、サトー殿が王国は様々な信仰があるといった後だけに、市民の反応は凄いものがありました」
「正直な所、聖女様が市民を止めていなければ、市民は暴動を起こしていたでしょう」
「それくらい危ういところでした。昔は人神教もまだまともでしたが、今は大変危険な事になっています」

 教皇と枢機卿も思わず溜息をこぼすほど、一歩間違えれば悲惨な事になりかねない状態だった。
 閣僚やアルス王子達も、思わず天を見上げる程だった。

「その後、司祭や関係者を尋問した結果が出ました。あの司祭は王都より逃走をはかっていた模様です。そのために、無茶な馬車の運転をしたそうですな」
「逃走? 何故だ?」
「どうもブルーノ侯爵領とランドルフ伯爵領での人神教会の惨状が各地の人神教会に伝えられていたらしく、準備が整ったところから我が国から人神教国への脱出をはかっていたそうです」

 成程、この国で人神教会を行うのは無理と判断したのか。
 でも人神教国自体はなくなっていないから、奴らが何をしでかすかはまだわからないな。

「現在国境にいる軍務卿より、先程数組の人神教会の司祭を捕縛したと連絡がありました。国境の警備を強化するとの事です」

 宰相から追加情報が入ったけど、既に何人か捕縛しているのか。
 これは近いうちに、人神教国から何らかの動きがあると読んだ方がいいだろう。

「アルス達は悪いが、急ぎ国境に戻る様に」
「分かりました。直ぐに準備を進めます」

 ここは少しでも手が多い方が良いだろう。
 アルス王子やエステル殿下は、早速戻る準備にかかった。
 俺も帰る準備をと思った所で、陛下より待ったがかかった。

「そうだ、サトーはここに残るように。この後、我々と会議だ」
「えっ、会議ですか?」
「そんなに時間は取らせん。今日中には帰れる」
「分かりました。同席いたします」

 こういうのは普通はアルス王子とかが参加するのではと思いつつ、国境に戻るアルス王子達を見送って会議を続ける事になった。
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