異世界転生したので、のんびり冒険したい!

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
40 / 394
第二章 バスク子爵領

第四十話 第二回薬草取り選手権

しおりを挟む
「ミケ、もう大丈夫だよ! ありがとうお兄ちゃん」
「本当に大丈夫か?」
「うん!」

 ミケは十分位抱きついていた後、ゆっくりと離れた。
 目はまだ真っ赤だけど、随分と表情は良くなった。

「サトーさん、この先に野営するのに丁度いいところがあります。今日はそこで休みましょう」
「戦いの後ですし、ミケ様も万全でないので良いのではないでしょうか。雨も上がりましたし」
「そうだのう。日が高い内に野営の準備をしないとな。ミケ、馬車に乗り込むぞ」
「うん!」

 みんなミケの事を気遣ってくれている。
 それに野営の準備するにしても丁度いいタイミングだ。

「ここです、テントを貼るのにも丁度良いスペースがあります」

 馬車に乗って三十分ほど。
 オリガさんに案内された場所は、開けていて水場にも近く良い野営地だ。
 でもここって……

「お兄ちゃん、ここって!」
「そうだね、最初にキャンプした所だね」

 この世界に来て最初に野営した所だった。
 だから見覚えがある所なんだ。

「あら、サトーさんもここをお使いに?」
「はい、以前に」
「そうですか。この街道はバルガス領とバスク子爵領を結ぶ大きな道です。所々に野営ができる場所がありますわ」

 リンさんがこの場所について説明してくれた。
 だから以前の時も人為的に整えてあると感じたんだ。

 馬車を止めて、馬を外す。
 馬車を点検して、うん問題なさそうだ。
 雨で路面がぐちゃぐちゃだったけど、車輪にも傷はない。
 念の為、生活魔法で綺麗にしておこう。

「馬さん、ご飯とお水ですよ!」
「「ヒヒーン」」
「うむ、よく食べるのじゃぞ」

 ミケとビアンカ殿下が、二頭の馬の世話をしている。
 見た感じこちらも怪我はなさそうだ。
 リンさんとオリガさんが馬の蹄や馬具のチェックをしている。
 任せても大丈夫だ。

 さて、食事の準備はっと……

「あいかわずの手際の良さですね!」
「この魔法制御はすごい」

 ルキアさんとマリリさんの賞賛の先には、様々な魔法を駆使して料理を行うスラタロウの姿が。
 うん、分かっていたよ。
 もうスラタロウはウチの調理番長だな。

 ということで、俺はテントを張る様にする。
 女性用の大きいテントと、俺用の小さいテントを用意する。
 うん、テント立てるだけならそんなにかからないなあ。
 ということで、あっという間に野営の準備が完了。
 ちょっと時間が余ったなあ。

「お兄ちゃん、少し時間があるから薬草取りに行ってもいい?」
「薬草取り?」
「そうじゃな。ミケの気分転換も兼ねてじゃ」
「主人よ、心配はないぞ。この辺は安全だぞ」
「サトーさん、という事です。私も行くのでご安心を」

 ミケの気分転換を兼ねて、薬草取りを行うみたいだ。
 シルも大丈夫だというので、みんなで行くことに。
 メンバーは、ミケ、タラちゃん、ホワイト、リンさん、マリリさん、ポチ、タコヤキ、サファイヤ、ビアンカ殿下、フランソワ、ヤキトリ。
 下手したらまた薬草取り競争になるかも……

 夕食までの一時間限定だから、そこまで薬草は取れないと信じてミケ達を送り出す。

「ミケ様、元気になってよかったですね」
「そうですね、一時はどうなるかと思いました」
「あのお婆様は、ミケ様も懐いていましたから。ミケ様の心配もよくわかります」

 ルキアさんもミケが明るくなって一安心みたいだ。
 
「サトー様、ルキア様。馬の体を拭いてやりたいので、手伝ってもらって良いですか?」
「はい、今行きます」

 オリガさんに馬の体を拭くのを手伝ってほしいと言われたので、ルキアさんと一緒に馬の体を拭いてやる。
 この馬達も襲撃あったりと大変な目にあったもんだ。
 馬の体を拭き終わったら、オリガさんとルキアさんと談笑したり、スラタロウの作っている夕食の味見をしたりして時間を潰していた。
 ちなみに今日のスラタロウの一品は、どう見てもデミグラスソースのシチュー。
 オリガさんもルキアさんリーフも絶賛です。
 どうやって作ったか謎だが、一流レストランの味ってこんな感じかと思うほど美味かった。

「お兄ちゃん、薬草取り終わったよ!」 
「ほほほ、大量に取れたのじゃ」

 ミケ達は薬草取りに出てから一時間もしないうちに戻ってきた。
 ビアンカ殿下の大量に取れた発言がとっても怖い。
 しかも薬草とは言っていないので、何が取れたかとっても怖い。
 薬草取りメンバーの中で常識人と思われるリンさんに詳細を聞いてみよう。

「リンさん、一体何があったのですか?」
「それが、いつの間にか採取の競争になってしまったようで……」
「もしかして、またやらかしたのですか?」
「はい、始める前にミケさんがいつもタラちゃんとかが一杯薬草見つけられると言ったのです。そうしたら他のホワイトやサファイヤとかがヤル気を出しまして。薬草に限らず、木の実やキノコなども大量に集め出したのです。その結果があそこにある山で……」
「Oh、なんてこったい……」

 ミケ達が次々と採取した結果を出している。
 薬草だけでなく様々な種類の物が出てきた。
 それが種類別に分けられているが、全てが山の様に積み上がってる。
 今日は一時間だっけだったけど、これを丸一日行ったらどれほどの結果になるのか。

「お兄ちゃん、これだけ取れれば大丈夫?」
「ああ、十分だよ。ありがとうなミケ」
「ふむ、オーク肉といい、デビルシープの素材といい、これだけの採取量がある。難民達の食糧はひとまず事足りるかのう」
「ソウデスネー」
「うわー、昨日も思ったけど、いくら魔物がいるとはいえ、これだけの素材を取れる人は珍しいよー」
「ソウデスネー」

 うん、現地の食糧事情もわからないし、ギルドからの資材では足りるか心配だったけど、一気に食糧事情が改善された。
 でもこの量は流石に衝撃的です。妖精のリーフも認定しています。

「お兄ちゃん、お腹すいた! 良い匂いがするよ!」
「それじゃ手を洗ってご飯にしようか?」
「はーい!」

 丁度料理も良い具合に出来たので、みんなで夕食です。
 スラタロウのデミグラスソースのシチューの感想は……

「うーん、美味しいよ!」
「こんな美味しいのを、まさかスライムがねー」
「なんと、王城のシェフの料理よりも美味しいのじゃ」
「本当に美味しいです。我が家のシェフではこの美味しさに太刀打ちできません」
「こんなに美味しい物は人生で初めてです」
「はぐはぐもぐもぐ」
「素晴らしい味です。これじゃメイドでも敵わないですわ」
「ふむ、これは良い味だぞ。もっと食べたいぞ」

 みなさん大絶賛です。
 わお、王城のシェフを超えますか。
 そりゃ炊き出しの時も絶賛されたスラタロウの料理だ。
 そんじょそこらのシェフでは敵わないだろう。

 作ってくれたスラタロウの代わりに、食後の片付けは食べたみんなで行います。
 と言っても生活魔法で一撃ですが。
 ふとスラタロウの姿がないと思ったら、二頭の馬の近くに。
 何か話しているように見えたと思ったら、突然スラタロウが聖魔法使った。
 もしかして馬は怪我でもしたのかな?
 ミケが馬とスラタロウに話しかけているので聞いてみよう。

「お兄ちゃん。お馬さんがね、スラタロウに魔法見せてくれって言っていたみたい。だからスラタロウ魔法使ったんだね」
「よかった。馬が怪我したかと思ったよ」
「お馬さんみんな元気だよ!」
「でもなんでスラタロウに魔法を見せてって聞いたんだ?」
「うんとね、お馬さんがこの中でスラタロウが一番魔法使うのが上手だって。だから頼んだんだって」
「そっか……」

 ミケとの会話が聞こえちゃって、そこでのの字を書いているルキアさんとマリリさん。
 俺も馬にもスラタロウが一番魔法が上手いって判断されたショックはわかります。

「何かあれば我が直ぐに皆を起こすぞ。今日はゆっくり休むが良いぞ」

 相変わらずのイケメンオオカミ発言に感謝して、就寝となります。
 今日は戦いとかも色々あって疲れたなあ。
 そう思っていたら、ミケがテントの中に入ってきた。
 当初の予定では、女性陣がまとまって寝るはず。

「お兄ちゃん、一緒に寝ていい?」
「あれ? あっちでみんなと寝るんじゃないの?」
「いつもお兄ちゃんと寝ていたから、今日も一緒に寝たいよう」
「分かった。こっちにおいで」
「うん」

 やっぱりまだお婆さんの事が頭をよぎったのかな?
 少し泣きそうな顔だったミケを呼び寄せて寝させます。
 ミケは安心したのか、直ぐに寝息を立てた。
 俺ももう寝よう。
 明日にはバスク子爵領に無事着くかな?
 ……無事についてほしいなあ……
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

処理中です...