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第一章 バルガス公爵領

第二十五話 闇の魔道具

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 今日はバルガス様とビアンカ殿下と一緒に冒険者ギルドに。
 ミケはシルと一緒に魔法の特訓です。
 魔法の特訓にはシルバーシルクスパイダーのタラちゃんも参加みたいで、風と闇魔法の適性があるとの事。
 隠密スパイダーの素質ありそうだ。
 ビアンカ殿下のゴールデンシルクスパイダーのフランソワは、ビアンカ殿下と一緒に行くそうだ。フランソワなりの護衛の任務なのかな?
 因みにフランソワは雷属性と闇属性らしい。ビアンカ殿下とツインサンダーとか撃ってそう。

「シル、お屋敷の護衛も頼む。それから……も頼めるか?」
「うむ、我に任せるのだぞ、そのくらい朝飯前だぞ」

 俺がいないので、シルにはお屋敷の護衛を頼んだ。
 あと、とある頼み事もした。

「お兄ちゃん行ってらっしゃい!」

 ミケに見送られながら、馬車で冒険者ギルドに出発。
 流石にバルガス様とビアンカ殿下を歩かせるわけにはいかない。
 馬車に揺られる事十分、あっという間に到着です。
 冒険者を驚かせないために、裏口に馬車を置いてギルドの中へ。
 馬車はバルガス様の騎士が護衛します。

「バルガス様、ビアンカ殿下。お忙しいところ、ご足労いただきありがとうございます」
「いや、こちらの案件でもあるのだ。気にすることはない」
「恐れ入ります。こちらになります」

 ギルドマスターのマリシャさんが出迎えてくれた。
 そのまま二階のギルドマスター室へ。
 ビアンカ殿下は前にギルドに来たことがあるらしく、普通に階段を上がっていく。
 
「バルガス様、ビアンカ殿下、お待たせいたしました。サトーもわざわざすまない」

 ギルドマスター室に入ると、ガンドフさんがいたが、表情が悪い。
 いかつい顔もあって、なかなか強烈な表情だ。
 マリシャさんがお茶を淹れてくれて、報告がはじまった。

「会議の前に、確認する事があります。ビアンカ殿下は王都への連絡手段をお持ちですか?」
「妾は、手紙を特定の人に直ぐに届ける手段がある」
「ありがとうございます。恐らくは急ぎの事案になるかと」
「案ずるな、それぐらい想定済じゃ。いつでも動ける様準備しておる」

 会議の前にマリシャさんとビアンカ殿下で話をしているが、昨日話ししていた懸念がいきなり現実になったよ。
 確認が済んだところで、ガンドフさんが話し始めた。 

「それでは早速魔道具についてお話しします。結論から言いますと、やはり魔物を呼び寄せる魔道具でした。しかも特定の魔物を呼び寄せる物です。今回はゴブリンの群れとそれを指揮するゴブリンロードが対象でした」
「ふむ、やはりそうだったか。昔似たような魔道具を見たことがあったから、なんとなくそんな気がした」
「はい、ビアンカ殿下もご存じかと思われますが、この手の魔道具は闇の魔道具と呼ばれ、普段は王城などで厳重に管理されております。その為、今回の魔道具の流出経路は、管理されていた場所もしくは闇ギルドになるかと思われます」

 やはり問題のある魔道具だったか。
 今回の襲撃はそれだけの魔道具を使う必要があったということだ。
 しかし闇ギルドとはなんだろう?

「話の途中で申し訳ございません。闇ギルドとはなんでしょうか?」
「サトーさんが知らないのも無理ないわね。いわば冒険者ギルドの対局にある犯罪組織よ。お金さえあればなんでも請け負うわ」
「なんとなく分かりました、ありがとうございます」

 マリシャさんが答えてくれたが、言わばマフィアみたいな存在だな。
 この世界にもそんなものがあるんだ。

「ビアンカ殿下にお願いがあります。王都に急ぎ連絡を取って頂けないでしょうか」
「もちろんじゃ。内容は妾と公爵が襲われた事。襲撃に闇の魔道具が使われた事。王城の管理庫に問題はないか、こんな感じでどうじゃ?」
「問題ございません。お手数をおかけし申し訳ありません」
「うむ、しばし待つが良い」

 ビアンカ殿下が手紙を書いて何やら魔道具を起動した。ぱっと見小さなファックスみたいだな。
 そういえば話の中にあった公爵って……、一人しか思い当たらない。
 もしかして……

「ガンドフ様、今のお話しの中にありました公爵様とは、ひょっとして……」
「そういえば言ってなかったかな? ワシの事になるぞ」
「今までの失礼な言動、大変申し訳ございません!」

 久々のジャンピング土下座発動!
 あわわ、公爵といえば爵位で一番上の位。
 しかもビアンカ殿下が滞在するんだ。普通の貴族ではないはずだ。
 そんな人のお屋敷に何も知らずに泊まっていたなんて……

「サトー殿、あなたは私の恩人です。しかもビアンカ殿下も認めていらっしゃる。何も問題はありませんよ」
「しかし……」
「それに妻と娘ともいい関係でおります。大丈夫ですよ、さあソファーに戻ってくださいな」

 うう、流石バルガス様、器が大きい。
 こんな小市民によくしてくれるなんて。

「おや、早速返事が返ってきたのじゃ。なになに、王城の格納庫は問題ないそうだ」

 ビアンカ殿下の魔道具に返信がきた。本当にファックスみたいだな。
 しかし王城に問題がないということは、闇ギルド一択か。

「こちらに助っ人を送ってくれるそうじゃ。併せて王城でも調査してくれるそうじゃ」
「おお、それはありがたい。ビアンカ殿下、ありがとうございます」
「これは王家にも関わること。逆にギルドにも迷惑をかけておる」

 助っ人も来るということは、問題解決も進みそうかな。
 今回の件は色々な人に迷惑があるからなあ。
 そういえばビアンカ殿下は誰に手紙を送ったのだろう?

「ビアンカ殿下、どなたに手紙を送ったか、お聞きしても大丈夫でしょうか?」
「なんじゃそんな事か。父上に送っておるぞ」
「父上って、もしかして国王陛下?」
「そうじゃ、襲撃の件は既に伝えておる。サトーやミケの事も伝えたら興味があるようじゃったぞ。因みに助っ人も第三王子のアルス兄様じゃ。近衛兵を連れてくるらしい。兄様もサトーに是非会いたいそうじゃ」

 おう、既に俺たちの事が王様や王子様に知られているとは……
 どうしてこの世界のロイヤルファミリーはこんなに気さくなんだろう。

「さてサトーよ、ギルドでの情報を一つ伝える。昨日絡んでいた奴らは冒険者登録されていない。恐らく今回の件に絡んでいるのは間違いなさそうだ」
「そうなんですね。なんかそんな気がしました。あまりにも粗暴で」
「ギルドでも警戒しますが、サトーさんも十分に注意してくださいね」

 ガンドフさんとマリシャさんが昨日の男どもの情報をくれたが、やっぱりって感じだ。
 ミケ達にも注意するように言わないと。

「ふむ、恐らくサトーを撹乱させる為じゃな」
「俺ですか?」
「サトーが屋敷にいる間、問題は起きておらん。屋敷の警備が厳重になっているとはいえ、サトーの力は大きい。出来るだけ冒険者の時に掻き乱そうとしている可能性があるのじゃ」
「忠告ありがとうございます」
 
 何でもかんでもやられるのは困るよなあ。まだランクも低いし。

「まああれじゃ。それだけサトーの力は規格外という事じゃ」
「そうですな殿下」
「そうですね、もう上級者並みの力はありますね」
「ワハハ、初心者講習で上級ゴーレムを瞬殺なんで初めてだからなあ」

 ……みなさん、そこは一致しないでください!
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