異世界転生したので、のんびり冒険したい!

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
18 / 394
第一章 バルガス公爵領

第十八話 バルガスの街の冒険者ギルドマスター

しおりを挟む
 カツンカツン。
 えー、只今バルガスの街の冒険者ギルドの二階に上がる階段を登っております。
 俺とミケの冒険者登録で、ゴブリンの件は隊長さんが説明すると思っていました。
 それが一緒にギルドマスターに説明する事になりました。
 
 こんこん。

「ギルドマスター、お連れいたしました」
「おう入ってくれや」

 二階の奥の部屋の前に着いたところで、職員さんがギルドマスターに俺たちが着いた事を告げたら、中から野太い声が聞こえた。
 きっと冒険者ギルドのマスターだから、きっといかつい人のはず……

 かちゃ。

 ドアが開くと、中には小柄な若い長い髪の女性と、二メートル近くのスキンヘッドの筋肉モリモリの男性がいた。
 おお、さすがギルドマスター。いかにも歴戦の冒険者って感じだ。
 案内してくれた職員の方がお茶を入れてくれた。

「どうぞお座りください」

 女性の方が声をかけ、一同はソファーに座った。

「隊長殿、今回は災難だったな。報告は聞いたが、あんなこと普通は起きはしない」
「全くだ、ガンドフ殿。我々だけの戦力ではとても太刀打ち出来なかった。サトー殿が助っ人に入ってくれなければ全滅も覚悟したほどだ」
「そいつは幸運だったな。そこの兄ちゃんと嬢ちゃんは見かけによらず強いんだな」
「うー、嬢ちゃんじゃないもん。ミケだもん!」
「がっはは! そうか悪いな」
 
 このガンドフと言われる人は豪快な人だな。それに意見を言い返したミケもすごいが。
 ガンドフという人がギルドマスターかと思ったら、衝撃の結果が待っていた。

「ほら、あなた。ミケちゃんが困惑していますよ」
「そうですよガンドフ殿。ギルドマスターもお困りですし」
「そいつはいけねえや、悪いな嬢ちゃん」
「だから嬢ちゃんじゃないもん!」

 あれ?隊長さんが女性の方をギルドマスターといったぞ。それに女性の方がガンドフさんをあなたといったぞ。
 まさかまさか……

「サトー殿、混乱させてすまない。こちらの女性がギルドマスターのマリシャ殿だ。そして男性の方が副ギルドマスターのガンドフ殿だ。ちなみにお二人はご夫婦でもある」

 えー!、女性の方がギルドマスターなのか!。しかも夫婦かよ。マジで美女と野獣、下手すれば犯罪者に見えるぞ。

「改めまして、この街の冒険者ギルドマスターのマリシャと言います。旦那が失礼な事をして申し訳ありません」
「副ギルドマスターのガンドフだ。改めてよろしく」
「サトーです。この子はミケで、オオカミがシル、スライムがスラタロウです。しかしご夫婦なのですね、正直驚きました」
「ミケです!」
「サトーさんにミケちゃんね。ミケちゃん、さっきはごめんね」
「大丈夫!」

 いや、ギルドマスターがマリシャさんだということよりも、二人が夫婦という事に驚いたよ。

「がはは、みんなそういうから気にする事ないぞ。それにマリシャの方が歳……」

 ゴス、どん。
 あれ、目の前からガンドフさんが吹っ飛んで、床に転がっているぞ。

「あなた、お客様の前で女性の年齢は喋ってはいけませんよ」
「ヒューヒュー」
「隊長さん、サトーさん。ごめんなさいね。あれはいないものだと思ってもらって結構ですよ」
「「はい……」」

 ……マリシャさん、笑顔だけど圧力が半端ないぞ。ミケもびっくりしている。
 ガンドフさんは、虫の息だけど大丈夫か?

「サトー殿、マリシャ殿は武芸の達人で、『瞬殺拳のマリシャ』と言われた凄腕です」
「何となく理解出来ました……」
  
 隊長さんがこっそり教えてくれたが、でないと巨漢の男性が吹っ飛ばないよね。
 マリシャさんには逆らわない様にしないと。

「では、始めましょうか。隊長さん、ゴブリンが襲ってきた時の状況をもう一度説明していただけますか」
「は! 道中は普段と変わらず、順調でした。しかしながら街まで半日という所で、突然上位種を含むゴブリンの集団が襲ってきました。最初は我々だけで撃退していましたが、だんだんと押されてきました。そこをサトー殿が助っ人で入っていただき、何とか撃退出来ました」
「そう、大変でしたね隊長さん。サトーさんも状況を教えてもらえないですか?」
「はい、俺たちも特に道中は問題なかったです。このシルが魔物とかの気配を感じることが出来て、少し先で魔物が大量に検知され血の匂いもしたと。ですので急いで現場に駆けつけました」
「ありがとうサトーさん。うーん、その時だけ急にゴブリンの大群がきたのね。明らかにおかしいですね」

 マリシャさんに促されて、隊長さんと俺がゴブリンに襲われた際の状況を話したが、ゴブリンに襲われる前後は特に問題がなかったんですよね。

「マリシャ殿。実はゴブリンに襲われた後、こんな物が馬車の下にくっついてました。事前の点検ではこんなものはくっついていませんでした」

 隊長さんが見せてくれたのは、小さな何か焦げたものだった。
 確かお屋敷に着いたときに、バルガス様が執事さんに馬車のチェックをするように言っていたけど、何かあったんだ。
 そう思ったら、床にのびていたガンドフさんが急に起き上がった。

「この道具は……、隊長殿、しばらく預かっても構わないかな?」
「ええ、どうぞ。バルガス様の許可もあります」
「ありがたい。しばらくこれを解析させていただきたい」
「あなた、何かわかるの?」
「昔、意図的に魔物を呼び寄せる道具があった。これはそれの改良型のようだ。しかし誰が何の目的でこんな物を。こういうのは闇市場にしか出回ってない物だぞ」

 おお、ガンドフさんすげー。一気に状況が進んだぞ。
 しかしガンドフさんは見た目とは違って、そういうのに詳しいんだ。
 
「隊長殿、何かわかったらすぐに連絡します。これは出回ってはいけないものだ」
「感謝する。よろしく頼むガンドフ殿」

 これでギルドマスターとの話は終わりかな?
 そう思っていたら、マリシャさんがミケに話しかけた。

「ミケちゃん、今日は旦那がごめんね。お詫びにこれをあげるね」
「これは?」
「これは私が昔使っていたガントレットよ。私には小さいけどミケちゃんにはピッタリだと思うよ」
「ありがとー!」

 マリシャさんはアイテムバック? みたいな物からガントレットを取り出して、ミケにプレゼントしていた。
 サイズ的にもミケにピッタリだ。

「マリシャさん、こんな良いものをありがとうございます」
「良いのよ。ちゃんと整備してあるから問題ないし、ものは使ってもらった方がいいですし」
「そうですか。ミケ、大事に使いなね」
「うん!」

 ミケもガントレットをもらって大喜びだ。
 と、ここでまたガンドフさんがやらかしてしまう。

「お、嬢ちゃんいいのもらったな。でも何十年も前のもの……、ごふ」
「あなた、そんな昔の様なものの言い回しはやめてください。さあみなさん、下に降りましょう。あなたはそこの書類を片付けるように」
「ヒューヒュー」
「「「……」」」

 ガンドフさんはまた吹っ飛ばされて、床の上で虫の息。しかも書類整理をやれというおまけ付け。
 隊長さんとミケと顔を合わして、改めてマリシャさんには逆らわないようにしようと心に誓ったのであった。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜

赤井水
ファンタジー
 クロス伯爵家に生まれたケビン・クロス。  神に会った記憶も無く、前世で何故死んだのかもよく分からないが転生した事はわかっていた。  洗礼式で初めて神と話よく分からないが転生させて貰ったのは理解することに。  彼は喜んだ。  この世界で魔法を扱える事に。  同い歳の腹違いの兄を持ち、必死に嫡男から逃れ貴族にならない為なら努力を惜しまない。  理由は簡単だ、魔法が研究出来ないから。  その為には彼は変人と言われようが奇人と言われようが構わない。  ケビンは優秀というレッテルや女性という地雷を踏まぬ様に必死に生活して行くのであった。  ダンス?腹芸?んなもん勉強する位なら魔法を勉強するわ!!と。 「絶対に貴族にはならない!うぉぉぉぉ」  今日も魔法を使います。 ※作者嬉し泣きの情報 3/21 11:00 ファンタジー・SFでランキング5位(24hptランキング) 有名作品のすぐ下に自分の作品の名前があるのは不思議な感覚です。 3/21 HOT男性向けランキングで2位に入れました。 TOP10入り!! 4/7 お気に入り登録者様の人数が3000人行きました。 応援ありがとうございます。 皆様のおかげです。 これからも上がる様に頑張ります。 ※お気に入り登録者数減り続けてる……がむばるOrz 〜第15回ファンタジー大賞〜 67位でした!! 皆様のおかげですこう言った結果になりました。 5万Ptも貰えたことに感謝します! 改稿中……( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )☁︎︎⋆。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...