異世界のんびり散歩旅

藤なごみ

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第四章 西の辺境伯領

散歩三百四話 仕事開始!

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 えーっと、先ずは目の前に積み上がった書類を整理しよう。

「辺境伯様、直近で承認が必要な物や重要書類はどちらに纏めてありますか?」
「ははは、分からん!」

 駄目だこりゃ。
 一刻も早く書類を分類しないと。

「スー、ケーシーさん、テルマさん、直近で承認が必要な物とかに分けよう」
「そうですね」
「直ぐにやります」
「あっ、でも、辺境伯様が逃げ出そうとしていますよ」

 テルマさんの言う通り、辺境伯様は抜き足差し足忍び足といった感じで、ドアノブに手をかけていました。
 エミリア様の許可も貰っているし、辺境伯様にはちょっと反省してもらいましょう。
 僕は手に魔力を溜めました。

 バリバリバリ。

「ギャー!」

 先程よりもちょっと出力を上げた電撃を、辺境伯様にぶつけます。
 そして、ちょっと頭にきているスーが、ぷすぷすと煙を上げている辺境伯様の足を持ってずるずると席まで引きずって行きました。

 しゅーん。

 更にスーは、椅子に乗せた辺境伯様を拘束魔法で椅子に縛り付けました。
 勿論、腕は動かせる様にしています。
 そして辺境伯様に回復魔法をかけました。

「はっ、ここはって、椅子に拘束されているぞ!」
「辺境伯様、頑張って書類を処理していきましょう。お疲れでしたら、私が全力の回復魔法をかけますので」

 うん、スーも頭にきているみたいだぞ。
 にっこりと辺境伯様に話しかけているけど、実は青筋を立てている。
 辺境伯様も椅子に固定されているから、逃げようがないです。

 どーん。

「先ずは、こちらの書類にサインをお願いいたします」
「近日中に処理をしないとならないものですので」

 続いて、一部整理の終わった書類をケーシーさんとテルマさんがにっこりとしながら机の上に叩きつけました。
 ケーシーさんとテルマさんも、頭にきているようですね。
 笑顔がとっても怖いです。

「で、でも俺には外での仕事が……」
「坊ちゃま、諦めて下さいませ。ここ数日の予定は、全て奥様が代わりになさるそうです」
「何だって!」

 辺境伯様最後の希望も、執事さんが笑顔で打ち砕きました。
 がっくりとした辺境伯様は、しぶしぶといった感じで仕事を始めました。

「さあ、他の者も今日は忙しいですぞ。何せ最初はキチンと処理日ごとに置いてあった書類を、坊ちゃまが滅茶苦茶にしていましたから」
「「「はい!」」」

 執事さんが、執務室にいる他の侍従に声をかけていました。
 というか、キチンと分類されていた書類を辺境伯様が滅茶苦茶にしたのか。
 この話を聞いたスー達からメラメラと怒りの炎が上がっているけど、必死こいて書類にサインをしている辺境伯様は気づきませんでした。
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