上 下
802 / 880
第二十八章 エマさんとオリビアさんの結婚

九百二十八話 披露宴の始まり

しおりを挟む
 僕たちは、辺境伯家の席近くに用意された子ども用の席に座ります。
 ルシアさんがみんなの面倒をみてくれるけど、子どもたちは仕事をやりきったとちょっと興奮気味です。
 僕も、ちびっ子軍団の気持ちは分からなくもないけどね。
 リズたちも、ちびっ子軍団の相手をしているのでとっても助かります。
 僕はというと、何故かスラちゃんとプリンと共に司会席にいました。
 というのも、入園式で僕の演説を聞いていた人たちなので、是非とも僕に司会をして欲しいそうです。
 というか、僕も一分前に聞いたばっかりなんですけど……

「アレク君、適当にアドリブでやって構わんよ」
「そうそう、アレク君ならアドリブでも全く問題ないわ」

 辺境伯夫妻からありがたーいお言葉を頂いたけど、だいたいこういうのは順番がある気がするよ。
 でも幸いな事に、ジンさんの時の結婚で司会をしているから、初めてではないんだよね。
 これで初めて結婚の司会をしたら、絶対に緊張すると思うよ。
 係の人と簡単な打ち合わせをして、さっそく披露宴を始めましょう。

「皆さま、教会での結婚式に参加して頂きありがとうございます。披露宴の司会を務めます、アレクサンダーです。不慣れなところもありますが、どうぞ宜しくお願いします。エマさんとオリビアさんは僕にとっても恩人なので、お二人の晴れの舞台を見ることができて僕も幸せです」

 僕の挨拶を聞いて、特に辺境伯夫妻がうんうんと感慨深そうに頷いていました。
 リズも思うところがあるのか、思わずニコリとしていました。
 そして、会場からは大きな拍手が起きていました。
 何だかジーンとくるけど、係の人が僕に合図を送ってきました。

「それでは、新郎新婦のお色直しも終わりましたので披露宴を開始します。大きな拍手で、三人をお迎え下さい」

 再び会場中から大きな拍手が送られる中、新郎新婦が姿を現しました。
 純白のウェディングドレスから、鮮やかな赤と青のドレスに着替えています。
 三人はゆっくりと来賓に挨拶しながら進んでいき、用意された席について深く一礼しました。
 さて、次は辺境伯様の挨拶って思ったら、何か結婚にまつわるエピソードを話してくれと係の人から言われちゃった。
 でも、このことしか話しようがないんだよね。

「実は、僕は辺境伯様から大事な話があると言われて初めてエマさんとオリビアさんの結婚を知りました。しかし、良く思えばサギー男爵領の復興の際に三人が仲良く話をしていたり、辺境伯様と先々代夫人様が何か打ち合わせをしていたのを思い出しました。僕が復興対策でとても大変な目にあっていた裏側でそんなことが起きていたなんて、とってもびっくりしました」

 三人の結婚の裏話をすると、会場からはそんなことがあったのかとか、キース様がうまくやりやがったとかが話されていました。
 もちろん、辺境伯様と先々代夫人も苦笑いをしていました。
 では、さっさと続きをしちゃいましょう。

「それでは、乾杯の発声をホーエンハイム辺境伯様にお願いします」

 僕が辺境伯様に振ると、辺境伯様も少し咳払いしながら立ち上がった。
 全員が、グラスを手にしています。

「アレクサンダー様の素晴らしい司会を頂き、感謝申し上げます。補足しますが、私と先々代夫人様はキチンと復興作業の支援をした上で三人の縁談の話をしておりました。本格的に話をしたのも、復興作業が完了してからですのでご心配なく」
「「「ははは」」」

 辺境伯様がチャーミングに話したら、会場から少し笑いが起きていました。
 実際に物資の手配とかはバッチリだったし、確かにキチンと仕事はしていました。

「まだまだ未熟な三人ですので、どうぞ変わらぬご支援を賜りますようお願いします。長い挨拶は嫌われますので、この辺にしておきましょう。それでは、乾杯といたします。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
「「「かんぱーい!」」」

 会場中で乾杯が行われたけど、ちびっ子軍団は元気に声を上げて一気にジュースを飲み干していた。
 頑張ったから、喉が渇いたんですね。
 ウェディングケーキ入場までちょっと時間があるから、僕も出された食事を食べようっと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あれ?なんでこうなった?

志位斗 茂家波
ファンタジー
 ある日、正妃教育をしていたルミアナは、婚約者であった王子の堂々とした浮気の現場を見て、ここが前世でやった乙女ゲームの中であり、そして自分は悪役令嬢という立場にあることを思い出した。  …‥って、最終的に国外追放になるのはまぁいいとして、あの超屑王子が国王になったら、この国終わるよね?ならば、絶対に国外追放されないと!! そう意気込み、彼女は国外追放後も生きていけるように色々とやって、ついに婚約破棄を迎える・・・・はずだった。 ‥‥‥あれ?なんでこうなった?

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

聖女の姉が行方不明になりました

蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。