781 / 949
第二十八章 エマさんとオリビアさんの結婚
九百七話 祖父と孫の初顔合わせ
しおりを挟む
そして、葬儀の準備が着々と進む中、ブライトさんに祖父が会いに来ました。
場所は、葬儀の準備が進むデンバー男爵の屋敷です。
僕も、同席することになりました。
「初めて会うな。ナーガ男爵と申す」
「あ、あ、あの、デンバー男爵家のブライトと言います」
うーん、何だろうかこの他人行儀な挨拶は。
お互いに緊張していて、挨拶して以来話が続いていない。
ナーガ男爵はシルクハットが似合う白髪のダンディな老人なんですけど、表情がとても固い。
対するブライトさんも、何を話して良いのか分からずにいた。
そんな二人の状況を打破したのは、僕と一緒に同席してくれたこの人だった。
「あなたは、昔から真面目ね。そして、孫を傷つけない様に話をするにはどうすれば良いか悩んでいるのね」
「うう、流石ですティナ様」
なんと、ティナおばあさまとナーガ男爵は、学園の同級生だそうです。
そんなナーガ男爵に、ティナおばあさまはとある解決方法を話しました。
「ナーガ男爵、こういうのは考えちゃうと余計に悩んでしまうものよ。隣に行って、抱きしめて上げましょう」
「えっ……」
言葉にならない時は態度で示せば良いと言い、ティナおばあさまは手を引きながら強引にナーガ男爵をブライトさんの隣に連れてきました。
そして、ナーガ男爵は恐る恐るブライトさんを抱きしめました。
「うぅ、あの子の息子がこんなにも大きくなったなんて……」
「お、お祖父様……」
ナーガ男爵は、ブライトさんを抱きしめた瞬間、涙が止まらなくなりました。
ブライトさんがナーガ男爵の背中を撫でて慰める形になったけど、どうやら最初の関門は突破したみたいです。
しばらくの間、応接室内にはナーガ男爵のすすり泣く声が響いていました。
「亡くなったデンバー男爵は、まだマシな男だった。だからこそ、娘を嫁がせたのだ。しかし、表面上は大人しくしていた正妻が、まさかの大悪人だったなんて……」
「僕も、父は優秀な人ではなかったのかもしれませんが、優しい人だと感じました。ただ、あの正妻は本当に苛烈な人でして……」
お互いの固まっていた気持ちが少し溶け、そして話し始めたのは例の正妻の件でした。
正妻は外面は良かったとの証言が他の人からも聞かれたので、人によって顔を使い分けていたのでしょう。
そして、僕は二人に側室殺害の理由を伝えました。
「正妻は、側室が女の子を産むのを期待していたそうです。他家に嫁がせて、関係強化を狙ったみたいです。しかし、産まれたのは男の子で正妻にとって邪魔でしかなかった。なので、最初はブライトさんを殺害しようとして、何らかの手違いで側室を殺害したみたいです」
「ふう、貴族らしい考え方だけど、余りにも極端すぎるわ。しかし、そういう考えを持つ者だからこそ、平気で大事件を起こしたのでしょう」
僕の報告に、ティナおばあさまが少し付け加えてくれました。
二人は、真剣な表情で話を聞いていました。
しかし、膝の上に乗せた拳をぎりぎりと強く握りしめています。
きっと、まさかそんな理由で側室が殺されるなんて思ってもみなかったのでしょう。
これ以上この話をしても仕方ないと思った中、ナーガ男爵がブライトさんにとある提案をしてきました。
「ブライトよ、我がナーガ男爵家に婿入りする気はないか? 実は、ブライトと同じ年の孫がいるのだよ。我が家は女の子ばかり生まれる家系で、ものの見事に生まれるのが女の子ばかりなのだ」
「あの、その、とてもありがたい提案です。でも、まだ頭の中の整理がついていませんので……」
「そうだろう。まだ未成年なのに、色々な事を取り仕切ろうとしている。葬儀が終わって落ち着いてからでよい。孫も葬儀に参加させるから、そこで顔を合わせよう」
ブライトさんにとっても、良い条件の話です。
血縁的には従兄弟同士だから、結婚するには問題ありません。
その後も、今は何をしているのかなどをメインに話をしていました。
ぎごちない祖父と孫の会話だったけど、僕とティナおばあさまは微笑ましく見ていました。
場所は、葬儀の準備が進むデンバー男爵の屋敷です。
僕も、同席することになりました。
「初めて会うな。ナーガ男爵と申す」
「あ、あ、あの、デンバー男爵家のブライトと言います」
うーん、何だろうかこの他人行儀な挨拶は。
お互いに緊張していて、挨拶して以来話が続いていない。
ナーガ男爵はシルクハットが似合う白髪のダンディな老人なんですけど、表情がとても固い。
対するブライトさんも、何を話して良いのか分からずにいた。
そんな二人の状況を打破したのは、僕と一緒に同席してくれたこの人だった。
「あなたは、昔から真面目ね。そして、孫を傷つけない様に話をするにはどうすれば良いか悩んでいるのね」
「うう、流石ですティナ様」
なんと、ティナおばあさまとナーガ男爵は、学園の同級生だそうです。
そんなナーガ男爵に、ティナおばあさまはとある解決方法を話しました。
「ナーガ男爵、こういうのは考えちゃうと余計に悩んでしまうものよ。隣に行って、抱きしめて上げましょう」
「えっ……」
言葉にならない時は態度で示せば良いと言い、ティナおばあさまは手を引きながら強引にナーガ男爵をブライトさんの隣に連れてきました。
そして、ナーガ男爵は恐る恐るブライトさんを抱きしめました。
「うぅ、あの子の息子がこんなにも大きくなったなんて……」
「お、お祖父様……」
ナーガ男爵は、ブライトさんを抱きしめた瞬間、涙が止まらなくなりました。
ブライトさんがナーガ男爵の背中を撫でて慰める形になったけど、どうやら最初の関門は突破したみたいです。
しばらくの間、応接室内にはナーガ男爵のすすり泣く声が響いていました。
「亡くなったデンバー男爵は、まだマシな男だった。だからこそ、娘を嫁がせたのだ。しかし、表面上は大人しくしていた正妻が、まさかの大悪人だったなんて……」
「僕も、父は優秀な人ではなかったのかもしれませんが、優しい人だと感じました。ただ、あの正妻は本当に苛烈な人でして……」
お互いの固まっていた気持ちが少し溶け、そして話し始めたのは例の正妻の件でした。
正妻は外面は良かったとの証言が他の人からも聞かれたので、人によって顔を使い分けていたのでしょう。
そして、僕は二人に側室殺害の理由を伝えました。
「正妻は、側室が女の子を産むのを期待していたそうです。他家に嫁がせて、関係強化を狙ったみたいです。しかし、産まれたのは男の子で正妻にとって邪魔でしかなかった。なので、最初はブライトさんを殺害しようとして、何らかの手違いで側室を殺害したみたいです」
「ふう、貴族らしい考え方だけど、余りにも極端すぎるわ。しかし、そういう考えを持つ者だからこそ、平気で大事件を起こしたのでしょう」
僕の報告に、ティナおばあさまが少し付け加えてくれました。
二人は、真剣な表情で話を聞いていました。
しかし、膝の上に乗せた拳をぎりぎりと強く握りしめています。
きっと、まさかそんな理由で側室が殺されるなんて思ってもみなかったのでしょう。
これ以上この話をしても仕方ないと思った中、ナーガ男爵がブライトさんにとある提案をしてきました。
「ブライトよ、我がナーガ男爵家に婿入りする気はないか? 実は、ブライトと同じ年の孫がいるのだよ。我が家は女の子ばかり生まれる家系で、ものの見事に生まれるのが女の子ばかりなのだ」
「あの、その、とてもありがたい提案です。でも、まだ頭の中の整理がついていませんので……」
「そうだろう。まだ未成年なのに、色々な事を取り仕切ろうとしている。葬儀が終わって落ち着いてからでよい。孫も葬儀に参加させるから、そこで顔を合わせよう」
ブライトさんにとっても、良い条件の話です。
血縁的には従兄弟同士だから、結婚するには問題ありません。
その後も、今は何をしているのかなどをメインに話をしていました。
ぎごちない祖父と孫の会話だったけど、僕とティナおばあさまは微笑ましく見ていました。
702
お気に入りに追加
8,817
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。