転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

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第二十七章 ちびっ子たちの冒険者デビュー

八百五十四話 ピエロの立体画像

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 念の為に周囲を探索しても、誰かが隠れている様子はない。
 今のところ、大丈夫みたいですね。

「間もなく入園式の時間となります。新入生は、席について下さい。保護者の皆さまは、保護者席について下さい」
「うー、緊張するよ」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん五歳で挨拶したもん」
「それは、アレクお兄ちゃんだからだよ」

 時間となって、エレノアはより一層緊張してきた。
 リズは何とかエレノアを励ましているけど、僕だって初めての挨拶の時は緊張したよ。

「帰ったら簡単なパーティをやるのだから、エレノアも頑張ろうね」
「うん、頑張る!」

 ティナおばあさまがエレノアに楽しい未来があると教えて、何とかやる気を取り戻していた。
 昼食は、ミカエルたちと一緒に美味しい食事をする事になっています。
 ルーカスお兄様の時もそうだったので、ちびっ子軍団はみんな楽しみにしています。
 学園長や他の人も揃ったので、僕も学園側の席に座ります。
 司会は、ルーカスお兄様です。

「それでは、入園式を開式します。開会の挨拶を、教頭先生お願いします」

 うん、やっぱり教頭先生はバーコードヘアで、頭を下げるたびに髪の毛がふさってなるね。
 新入生の中にも、少し笑いを堪えている人がいるよ。
 僕も、気持ちはよく分かります。

「続きまして、教職員を代表して学園長先生より祝辞を頂戴します」

 ザワッ。

 式典恒例の、学園長先生のながーい話の始まりです。
 新入生も既に体験入園で学園長先生のながーい話を聞いているので、色々なところからざわめきが起きています。
 そんなざわめきを気にせずに、学園長先生か演台に向かいました。

「皆さん、ご入園誠におめでとうございます。教職員を代表して、皆さんにお祝い申し上げます。これからの学園生活が、より良いものになるように、皆さんも切磋琢磨して下さい。さて……」

 毎回思うんだけど、学園長先生の話は最初のところだけでも十分な気がするんだよね。
 きっと、他の人も同意してくれるはずです。
 今回も三十分を超える話になるかなと思ったけど、学園長先生が話し始めて五分後に予想外の事態が発生しました。

 ブォーン。

 急に学園長先生の前に謎の立体映像が現れ、慌てた学園長先生が他の先生に誘導されながら自席に戻った。
 僕たちも、直ぐに戦闘態勢を整えます。

「みんな、落ち着いて。立体映像だから、何も怖くないわ」

 新入生の席も騒めいて逃げ出そうとする人がいたけど、ルーシーお姉様が周囲を落ち着かせようと大声を出していた。
 そんな中、ドレス姿でレイピアを構えたティナおばあさまの鋭い声が響いた。

「その姿、ピエロ!」
「おやおや、これはこれはティナ様ではありませんか。とてもお綺麗なお姿で」

 立体映像に映し出されたのは、紛れもなく道化師の仮面を被ったピエロだった。
 襲撃を警戒していたのだけど、まさか立体映像を使ってくるとは思わなかった。
 ピエロの視線はティナおばあさまに向けられているけど、僕はこの映像のとあるところに目線が入っていた。

「ふふ、ドクターを捕まえるとは、こちらも予想外でした。まあ、既に用済みでしたけどね」
「ピエロ、戦力が落ちているのではないか?」
「とんでもない。新しいアジトも見つけて、同志も集まっていますよ」

 どうやらティナおばあさまもピエロのとあるところに気がついていて、あえて戦力の事に触れていた。
 ピエロは、いわば道化師だ。
 何が本当で何が嘘か分からない。

「私も忙しいので、これで失礼します。ティナ様、またお会いできる人を楽しみにしております」
「ピエロ、逃げる気か!」

 ブォーン。

 ピエロは、またもや恭しく一礼して立体映像が消えていったけど、この時点で僕は確信しました。
 でも、まずは入園式を無事に終えないと。
 兵が新入生を席に再び誘導し、入園式が再開しました。
 司会のルーカスお兄様も、アナウンスを始めます。

「失礼いたしました。それでは、続きまして学園在校生を代表しまして、生徒会長より祝辞を頂戴します」

 学園長先生が「えっ?」って表情をしているけど、中途半端な状態で進めるのは良くないよね。
 結果的に、三十分以上かかると思った学園長先生の話がピエロの騒動も含めても十分で終わったので、みんな別の意味でホッとしていました。
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