転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
689 / 953
第二十七章 ちびっ子たちの冒険者デビュー

八百四十八話 更に面倒くさい人

しおりを挟む
 しかし、僕が午後会った人は超面倒くさかった。
 商務部門に異動してきたばっかりの子爵家の貴族当主らしく、元商務卿の宰相も知らない人だった。
 上司は宰相と知り合いらしいけど、どうもこの担当者は宰相への相談を兼ねているみたいだ。
 担当者は上司と一緒にやってきたのだけど、あろう事か上司を無視して宰相に話しまくっていた。

「こちらの商品はこうで、こちらの商品はこうした方が良いかと。そして、こちらはこうして、更にこうした……」
「おい、君」
「あっ、課長大丈夫です。私が全て説明します」

 早口で説明するので全然聞き取れないし、しかも課長がいるのに話を遮っています。
 資料を見れば何となく言いたいことが分かるんだけど、説明する人がこれじゃ駄目だよね。
 ちなみに、魔導船を使用した各地の運搬の件です。
 どんなものが運べるか、提案しています。
 僕は魔導船に乗ったことがあるから、どんなものが運べるか何となく分かるんだよね。
 担当者の早口の説明も終わったから、僕も質問しようっと。
 この資料、残念だけど駄目なところが沢山あるんだよね。

「あの……」
「ああ、子どもは黙っていて。僕の説明なんて、どうせ君には分からないでしょう」

 担当者が僕のことを睨みながら無下に発言を遮ったので、宰相と課長の表情が固まってしまった。
 うん、そういう人だったのか。
 自分の作った案が正しいと思って他人の意見が入らないようにごり押ししていて、尚且つ人を見下すんだ。
 商務部門に異動してきたって聞いたけど、この分だと元の部署でも問題を起こしていそうだ。
 流石に普段とても温厚な宰相も、少し頭に来たようだ。

「君、あまりにも失礼ではないか? 上司の課長の意見を遮るし、アレク君は学園入園前だが官僚試験もパスした副宰相だ」
「官僚試験が何ですか。あんなの、知識の多さを測るだけです。僕には何も関係ありません」

 この言い分だと、この担当者は官僚試験を落ちたか受けていないかのどちらかですね。
 理論も稚拙だし、そもそも人に対する話し方が出来ていない。
 そして、この言葉を聞いた宰相が決断を下した。

「提案の途中だが、この案は却下する。そもそも今回は課長が共に説明すると聞いていたが、課長を無視し尚且つこちら側の意見も遮った」
「なっ、そんな形式張った意見があるからこの国は駄目なんだ。黙って、できる人の意見を聞けば良いんだ!」
「残念ながら、色々な意味でできる人のランクに達していない。そして、魔導船による商品の輸送案件は、国家の繁栄に大きく関わる。しかしこの提案書も穴だらけで、本来なら議論する余地すらない」
「ぐっ……」

 おお、宰相がバッサリと担当者の意見を切り捨てたよ。
 宰相が険しい表情でここまで言うのは、とっても珍しい事ですね。
 流石にトップにここまで言われてしまったので、担当者も黙らざるを得なかった。

「失礼する」

 そして、担当者は勝手に席を立ってスタスタと宰相執務室のドアに向かっていった。
 うーん、なんと言えばいいのだろうか。
 悪人まではいっていないけど、考え方が極端過ぎる。
 前に捕まったツンツン頭よりも、もっと面倒くさいよ。

 ガチャ。

「戻りま、うおっ!」
「ちっ」

 そして、宰相執務室に戻ってきたジンさんと担当者がはち合わせしたけど、担当者はジンさんの顔を見るなり舌打ちをして部屋を出ていった。
 宰相がジンさんと一緒に入って来たレイナさんにコクリと頷くと、レイナさんはササッと部屋を出て担当者の尾行を始めた。

「な、何なんだアイツは?」
「まあ、簡単に説明する。ジンもカミラも座れ」
「うん? うーん、何かあったみたいだな」

 ジンさんは、僕と課長の表情が暗いのを見て何かを察したみたいです。
 この辺りは、一流の冒険者って事ですね。
 宰相が、何があったのかをササっと説明しました。
 ジンさんとカミラさんも、何があったか直ぐに把握しました。

「皆さまには本当にご迷惑をおかけしました。特に、アレクサンダー副宰相には奴が暴言を言い謝罪のしようもない」

 課長が宰相と僕に謝罪したけど、やっぱりあの担当が気になったので話を聞いてみた。
 宰相も、あの担当は何かあると思っているみたいです。

「皆さんの予想通り、問題を起こしては次々と別の部署に飛ばされています。官僚試験に落ち続けて以降、ある意味完全に開き直っております」
「あー、うん。前に似た奴がいたな。どうせ、似たような奴で徒党を組んでいるんだろう?」
「まさにその通りです。十人前後のグループが、勉強会と称して集まっております」

 うーん、本当に面倒くさい貴族が復活したんだ。
 返答したジンさんも、だいぶ面倒くさそうにしています。
 僕だけでなくジンさんにも敵意を見せていたので、警戒しないと駄目ですね。
しおりを挟む
感想 246

あなたにおすすめの小説

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。