転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

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第二十七章 ちびっ子たちの冒険者デビュー

八百二十四話 今できる事をやります

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 お昼になったので、書類整理でヘロヘロになった宰相に声をかけます。

「宰相、明日までは現地にいますけど、状況によってはまた王城にきますので」
「ははは、アレク君は勤勉だのう。少しゆっくりしても良いのだぞ」

 苦笑する宰相だけど、ここ数日分の書類整理は終わらせたので僕としては大満足です。
 補助金関係の申請書類も書けたので、後は処理待ちですね。
 そして、出向機関の代理所長も決まったそうなので、サギー伯爵領の出向機関に行ってからサギー男爵の屋敷に向かいました。

「戻りました」
「「あっ、アレク君お帰り」」

 屋敷の庭に着くと、炊き出しを配膳しているエマさんとオリビアさんが僕にニコリとしながら声をかけていました。
 そして、エマさんとオリビアさんの横に少し表情が暗いサギー伯爵の姿がありました。

「サギー男爵領の住民の苦しみは、私の予想を遥かに超えていました。こんなに住民が苦しんでいるのに、自分だけ贅沢しているなんて考えられません。かなり昔に分かれたとはいえ、サギー男爵と縁類だった事に嫌悪感を感じます」

 昨日よりも明らかに住民の顔色は良くなったけど、それでも住民の置かれた環境にサギー伯爵はかなり憤慨していました。
 サギー伯爵が立派な領主だからこそ、サギー男爵の犯した飢餓輸出が許せないのだろう。
 そんなサギー伯爵に、エマさんとオリビアさんが優しく話しかけていた。

「昔から真面目だったから、不正が許せないんだね。私達も、とっても怒っているよ。でも、目の前で困っている人を何とかするのも私達の仕事だよ」
「私達よりも小さいアレク君が頑張っているのだから、私達も出来る事を一生懸命にやるわ。住民を豊かにするのも困らせるのも、結局は私達上に立つ者のさじ加減なのよ」

 エマさんとオリビアさんはバザール領で飢餓輸出があったのを知っているし、ホーエンハイム辺境伯令嬢として上に立つ人の大変さをよく知っています。
 だからこそ、今は出来る事を精一杯しているのだろう。
 そんなエマさんとオリビアさんの行動に後押しされる形で、サギー伯爵も表情を引き締めて住民からの意見を集めるのを再開した。
 今できることを頑張ろうと、改めて心の中で決心したみたいです。
 ミカエル達も頑張って治療したり配膳したりしてるし、僕も出来る事を頑張ろう。
 僕は報告を兼ねて、屋敷の応接室に向かいました。

「おお、アレク君お帰り。どうじゃったか?」
「ただいま戻りました。補助金関係の申請は終わりました。ついでに溜まっていた書類を整理して、宰相に預けてきました」
「ほほほ、通常の仕事までこなしてくるとは。如何にもアレク君らしいのう」

 応接室の中にはニース侯爵、辺境伯様、ティナおばあさまがいて、今後の対応を色々と決めていました。
 軍務卿は、駐留部隊の視察に行っているそうです。

「サギー伯爵が、住民の困窮を見てかなり悩んでいました。でも、流石は先輩というか、エマさんとオリビアさんがサギー伯爵に色々と声をかけていました」
「サギー伯爵は優秀だけど心優しいところもあるのよ。だからこそ、住民の痛みを強く感じているわ」
「私の娘も我が領地で住民と一致団結しているのを見ているから、かなり思うところがあるのだろう。私からすると、三人とも中々得られないとても貴重な経験をして大きく育つと思っている」

 ティナおばあさまと辺境伯様も、応接室の窓から外を見ながら複雑な表情を見せていた。
 三人とも心優しいので、住民の困窮をかなり悲しんでいるのだろう。
 僕も出来る事は一生懸命やらないとね。

「とはいえ、ほぼできることは行った。物資の流通も始まったので、これからは国から派遣された代官による運営に任せて良いだろう。もちろん、サギー伯爵家から派遣された役人の補助も必要だがな」
「軍も、ホーエンハイム辺境伯領の駐屯地にいる面々を中心に当面駐留するわ。治安に関しても大丈夫でしょう」

 闇ギルド問題も全部片付いた訳ではないし、軍の駐留は致し方ない。
 代官も執務室で忙しく作業をしていて、まさにみんなが一丸になって働いています。
 となると、冒険者にも魔物討伐の依頼を出して対応して貰うのも良いかもしれないね。
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