転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

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第二十七章 ちびっ子たちの冒険者デビュー

八百二十二話 活動開始

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 サギー男爵家を巡る混乱から一夜明け、今日も僕たちは復興作業を行っています。
 といっても一番の懸念だった闇ギルド関連が落ち着いたので、僕たちも気持ちはだいぶ落ち着いています。

「いやあ、これは物凄いボディーガードだな」
「この状況で喧嘩を売る奴は、馬鹿かいっちゃっている奴しかいないな」
「「「キャッキャッ」」」
「ガウ!」

 今日も地方への荷運びをしてくれる冒険者が屋敷の庭に集まっているけど、ミカエル達と一緒に遊んでいるクマの姿を見て思わず苦笑していた。
 実力のある冒険者は直ぐにクマの力を見抜いているし、クマも悪意のある存在以外は襲う事はまずない。
 そんなちびっ子たちに、エマさんとオリビアさんが声をかけていた。

「ほらほら、冒険者が出発するからちゃんと見送らないとね」
「皆さん、頑張って地方に行ってくれるのよ。元気よく見送るのよ」

 ちびっ子達は主に治療のお手伝いなのでほぼ事前準備はないけど、エマさんとオリビアさんは炊き出しなので仕込みの真っ最中です。
 そんな状況でも、周りの事を気遣ってくれています。

「「「いってらっしゃーい」」」
「ガウッ!」
「「「おう、行ってくるぞ」

 こうして冒険者は、沢山の荷を積んだ馬車に乗り込んで地方に向かって行きました。
 ミカエル達とクマも、冒険者に向かって元気よく手を振っています。
 ジンさんたちとポニさんたちの巡回部隊も既に出発しているし、炊き出しと治療もエマさんとオリビアさんが仕切ってくれます。
 僕達は庭から屋敷の中に戻って、これからの事を話し合います。

「じゃあ、行ってくるよ!」
「隠してあるものを探すの!」

 リズ達は、念の為という事でお宝探し部隊を再度結成して屋敷の中の捜索を行います。
 時間ができたら、昨日戦闘が起きた廃村の捜索に移るそうです。
 その間に、僕たちは応接室で改めて今後の事を話し合います。

「闇ギルド構成員への聴取と確認があるのでもう暫くかかりますが、押収した金品は領地運営の資金に当てられます。ほぼ間違いなく、サギー男爵家から闇ギルドが奪い取った金品になります」
「復興資金が得られるのは、この後の事を考えても非常に大きい。当初は全く資金がない状態だと思われていたからのう」

 軍務卿の報告を聞いたニース侯爵が、うんうんと頷きながら返答をしていた。
 復興財源があるのとないとでは、この後の進め方が全然違ってきます。
 国から派遣される代官の采配次第だけど、予算確保できるのはとても助かります。

「サギー男爵家は、王都にいた親類も含めて全て捕縛した。飢餓輸出をして得た金で、一時の豪勢な暮らしをしていたらしいな」
「民を苦しめて得たお金で贅沢をするなんて、私は許せません。領主として、自覚が全く足りません」
「サギー伯爵の言う通りだ。領主は、目先の利益ではなく先の利益も考えないとならない。サギー男爵は、まさに目先の利益にとらわれたといえよう」

 サギー伯爵の何とも言えない言葉に、軍務卿も大切な事を言っていた。
 闇ギルドに付け込まれる統治をしていた事自体、あってはならない事です。
 サギー伯爵はとても若いけど、その辺りの事は良く分かっていた。

「サギー伯爵、サギー男爵とは殆ど縁戚ではないんだよな?」
「はい、その通りです。かなり昔は縁戚でしたが、今ではお互いに婿や嫁を迎える事もなくなりました。少なくとも、五代以上は血縁関係が離れています」

 サギー伯爵曰く、前に仲違いがあってそれから一時期疎遠になっていたという。
 関係改善を図ってきたが、血縁関係までは言及されなかったという。
 今回は、親戚関係でないのが功を奏した形になった。

「ただ、現状はサギー伯爵家がサギー男爵領に深く関与しなければならないな」
「はい、それはもちろんです。幸いにして我が領は農業生産がとても好調ですので、食料支援は全く問題ありません。バザール子爵領からも食料支援を頂けるので、住民が飢えない様にやっていくつもりです」

 うん、サギー伯爵はやっぱりとても良い人です。
 こういう領主がいる領地は、住民も安心して暮らせるね。
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