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第二十七章 ちびっ子たちの冒険者デビュー

八百十九話 奇襲攻撃

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 先行するスラちゃんとプリン、そしてポッキー達がそれぞれの標的に向けて出発しました。
 僕たちも、少し時間を置いて廃村の中に入っていきました。
 直ぐに大きな家の前に到着し、僕達は他の家の物陰に隠れて様子を見ます。
 すると、直ぐに大きな家で動きがありました。

「うん? おい、食べ物が無くなっているぞ。お前食ったか?」
「食わねーよ。でも、確かに無くなってるぞ」
「あれだけ確保したのに。おかしいなあ……」

 どうも、ポッキーが大きい家にあったと思われる食料をアイテムボックスにしまったみたいです。
 中にいる者が家の奥の方に移動していくのを、探索魔法で確認します。
 僕は、ジェリルさんとランカーさんに軽く頷きました。
 二人ともコクリと頷き、後ろにいる人にハンドサインを送りました。
 そして足音を立てずに大きな家に近づき、一気に家の中に入りました。

 だっ。

「おい、誰……、うがあ!」
「ちっ、軍か……、ゴホッ」

 ジェリルさん達は、声を出さずに一気に家の中にいる人を制圧していきます。
 相手も完全に不意をつかれた形なので、殆ど抵抗できないみたいです。
 僕たちもお互いに頷き、武器を手に取って小さい方の家に突入します。

 だっ!

「なっ! どうしてここに?」
「おやおや、これは予想外のお客様ですね」

 家の中には闇ギルドの構成員とドクターがいて、僕達の姿を見て思わず表情を変えていた。
 でもドクターと話をする事もないので、僕達は一気に突っ込んでいきました。
 ドクターに真っ先に剣先をぶつけたのは、やはりティナおばあさまです。
 ドクターも、辛うじて短剣でティナおばあさまのレイピアを受け止めました。 

「ぐっ、先程よりも鋭い剣筋ですね。流石は、華の騎士様です」
「はっ、せい、やあ!」
「話をする事もないのですか。ちっ、これはまずい」

 ティナおばあさまはドクターに魔法を使わせないようにする為に、接近戦でかなりの手数を出しています。
 しかしティナおばあさまの剣技が物凄いので、僕達は二人に近づくことさえできません。

「とう!」
「ぐふっ……」

 その間に、ジンさんがもう一人に強烈なボディーブローをぶち込んでノックアウトさせていました。
 直ぐにノックアウトした闇ギルドの構成員を拘束し、僕のゲートで王城の軍の詰め所に送ります。
 これで、残りはドクター一人だけです。

 ガキン、ガキン。

「ぐっ、これはマズイですね……」

 そして、段々とドクターの動きが悪くなってきた。
 どうもドクターの魔力が残り少なくなってきて、身体能力強化の効果が薄くなってきているみたいだ。
 なら、ここで僕の新しい闇魔法を使う番です。

 シュイーン、ぴかー!

「がっ、ま、魔力が尽きていく……」

 僕はティナおばあさまを巻き込む形で、ドクターに魔力ドレインを放ちました。
 この魔法は、自分の失った魔力分だけ相手の魔力を奪う魔法です。
 今日の僕はゲート魔法を沢山使ったから、かなりの魔力を消費しています。

 だっ。

「よっと。アレク君、私を巻き込むのは良い判断だったわ。アレク君なら、きちんと魔力操作ができると思ったわ」
「すみません、ティナおばあさま。因縁の敵だったのに、横からかすめ取る様な事をして」
「あら、それは良いのよ。私の宿敵は、必然的にアレク君の宿敵になるのよ」

 僕は魔力ドレイン魔法を使いながら、戦闘から離脱したティナおばあさまと話をします。
 よく考えれば、闇ギルドの存在がなければ、僕とリズの両親が亡くなる事もなかったんだよね。

「がっ、くそ、意識が……」

 そしてドクターの魔力の殆どを奪う事に成功し、ドクターは魔力欠乏で意識がフラフラで頭を押さえながら膝をついています。
 ここがチャンスだと思ったら、今度はなんと家の天井から攻撃が行われました。

 シュイーン、ずどーん。
 シュイーン、バリバリバリ!

「うがあー!」

 天井の隙間に隠れていたスラちゃんとプリンが、ドクターの死角から重力魔法と雷魔法のダブル攻撃を仕掛けました。
 重力魔法に潰されてドクターの体中の骨がきしむ音が聞こえ、更に強力な電撃も食らっています。

 ぷすぷすぷす。

「……」

 そして数分後、完全に動けなくなったドクターの姿がありました。
 辛うじて息はあるみたいだけど、もう動けないでしょう。
 直ぐにジンさんとティナおばあさまがドクターを拘束して、特殊な魔導具まで装着していました。

「あっ、相手の魔力を奪う魔導具ですね」
「おう。こういう強力な魔法使いが相手だと、拘束しても直ぐに魔力が復活して魔法攻撃ができるからな。特に、こいつの場合は闇ギルドのツートップな訳だし」

 僕の魔力ドレイン魔法とほぼ同じ原理だそうで、常に一定の魔力を奪い続けます。
 今のドクターの魔力は空っぽなので、この魔導具を取り付けている間はドクターは魔法が使えません。

「よし、これで良いだろう。アレク、王城にある特殊な隔離牢屋にぶち込もう」
「じゃあ、王城にゲートを繋げますね」

 特に重犯罪を犯した者を拘禁する為の施設が、王城にはあるそうです。
 ジンさんはその事を知っていて、僕も直ぐにドクターを王城に送りました。
 王城でも近衛騎士と軍の幹部が待ち構えていて、ドクターを引き取るやいなや直ぐに拘禁と合わせて厳重な監視とつけるように指示を出していました。
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