転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
690 / 966
第二十七章 ちびっ子たちの冒険者デビュー

八百十六話 午後も頑張ります

しおりを挟む
 午後も炊き出しと治療をしつつ、物資の配布を行います。
 リズ達治療班に加えてエマさんオリビアさん達の炊き出し班も順調に動いていて、今のところ大きな混乱は見られません。
 物資については、町中はサギー男爵領の守備隊と協力しながら配布する事ができます。
 そして郊外や農村への物資の輸送については、バザール領の復興作業と同じ方法を取ることになりました。

「では、行ってくるわ。上手くいくだろうって、既に連絡が入ったわ」
「私も同行しようぞ。冒険者に面倒な事をお願いしなくてはならないのでな」

 それは、サギー伯爵領にいるサギー男爵領出身の冒険者に郊外の荷物の輸送を依頼する方法です。
 既にサギー伯爵が冒険者ギルドに打診をしていて、協力すると返答があったそうです。
 ポッキーのゲートを使って、ティナおばあさまと先々代夫人はサギー伯爵家の屋敷に向かいました。
 そして、この子達はお役御免になりました。

「「「うみゅ……」」」
「みんなお昼寝の時間ね。ひとまず、王城に行きましょうね」
「「「うん……」」」

 ミカエルとブリットはまだ大丈夫だけど、他のちびっ子軍団の目は既にとろんとしています。
 僕は王城にゲートを繋いで、ルシアさんに引率してもらいながらちびっ子軍団を送り届けました。
 ミカエルとブリットは、リズと一緒に治療班です。
 レイナさんとカミラさん、それにルリアンさんとナンシーさんには、更に別の事をしてもらいます。

 ちょいちょい。

「おっ、あいつだね」
「では、さっさと捕まえますか。意外なところから、闇ギルドの構成員が見つかるかもよ」

 それは手の空いたスラちゃんとプリンと共に、不審者を徹底的に捕まえる事です。
 サギー男爵と結託していた者もいるだろうし、闇ギルドの構成員も僕達を監視しているかもしれません。
 ジンさんも、もう少ししたらレイナさん達に加わるそうです。
 そして、辺境伯様とニース侯爵は今日一日僕と一緒に調整をしてくれます。
 王城で多くの調整がついているので、支援体制をどうするかがポイントとなっています。

「そういえば、サギー男爵領の名産って何でしょうか? バザール子爵領の時は農業生産も回復して特産のソースも売り出せたけど、何か良いものがあれば良いですね」
「サギー伯爵領から男爵領にかけて、香辛料が沢山採れるぞ。どうもサギー男爵は食い物じゃないからと、あまり奨励はしなかったみたいじゃがな」

 ニース侯爵がこの辺りの名産を教えてくれたけど、香辛料か採れるなら十分に名産になりそうな気がする。
 元々サギー男爵は目の前の金品に目がくらみ、統治者として大事なことを全然やってこなかったんだ。
 どうも王都のサギー男爵家の屋敷にも大した物は残ってないらしく、屋敷に残された使用人も保護されているそうです。
 そうこうしているうちに、ティナおばあさまから連絡が入りました。

「えーっと、『冒険者を送るから、荷物を屋敷の庭に出しておいて』だそうです。じゃあ、僕は庭に行ってきます」
「アレク君、気を付けてね」

 僕は辺境伯様とニース侯爵に見送られながら、応接室から庭に移動します。
 各地に行くための荷馬車が準備してあり、僕はアイテムボックスから荷馬車の荷台に荷物を乗せていきます。

 シュッ。

「アレク君、待たせたわね。冒険者を連れてきたわ」
「おお、なんじゃこりゃ! こんなに酷い状況になっているのかよ」
「こりゃヤバいぞ。直ぐに動かないと」

 三台分の荷馬車の準備を終えたタイミングで、ポッキーの長距離転移でティナおばあさまと十人ほどの冒険者が屋敷の庭に現れました。
 冒険者は炊き出しと治療に並んでいる人の列を見て、相当驚いていました。
 まさか生まれたところが、ここまで酷いことになっているとは思わなかったみたいです。

「ここは俺等に任せておけ。地元の事は地元の人間が一番良く知っているぞ」
「直ぐに荷物を運んでやるぞ。こうしちゃいられねーぞ!」

 冒険者達はすぐさま荷馬車に乗り、三つのグループに分かれてあっという間に出発しました。
 ここまでくれば、取り敢えず一安心ですね。
 すると、今度は街を巡回していたジンさんが僕のところに駆け寄ってきました。
 そして、僕とティナおばあさまに耳打ちをしました。

「未確認だけど、さっき捕まえた奴が闇ギルドの構成員だった。スラちゃん経由で王城に送って尋問しているけど、何かしらの情報を持っているかもしれない」

 僕とティナおばあさまは、お互いに顔を見合わせてからジンさんにコクリと頷きました。
 本当に町中の不審者から、闇ギルドに繋がる情報が出てくるかもしれないよ。
しおりを挟む
感想 236

あなたにおすすめの小説

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。 隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

陣ノ内猫子
ファンタジー
 神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。  お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。  チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO! ーーーーーーーーー  これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。  ご都合主義、あるかもしれません。  一話一話が短いです。  週一回を目標に投稿したと思います。  面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。  誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。  感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)  

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

悪役令嬢は蚊帳の外です。

豆狸
ファンタジー
「グローリア。ここにいるシャンデは隣国ツヴァイリングの王女だ。隣国国王の愛妾殿の娘として生まれたが、王妃によって攫われ我がシュティーア王国の貧民街に捨てられた。侯爵令嬢でなくなった貴様には、これまでのシャンデに対する暴言への不敬罪が……」 「いえ、違います」

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。