上 下
657 / 880
第二十六章 ミカエルの五歳の祝い

七百八十三話 王都の五歳の祝いの始まり

しおりを挟む
 子ども達が仲良くしている、そんな和やかな雰囲気をぶち壊す三家が登場しました。
 申し合わせた様に、三家が揃ってパーティー会場に姿を現しました。

「ふん、なんだ出迎えも寄越さないのかよ」
「これだから、歴史の浅い貴族は使い物にならないんだよ」
「全く、しつけがなっていないな」

 何だろう、この嫌味タラタラな太った男爵達は。
 会場の雰囲気が、一気に嫌なものに変わってしまった。
 一緒にいる子どもは大人しそうな感じだから、あの男爵三人がおかしいんだ。
 しかも、夫人が一緒じゃないのが妙に気にかかるなあ。
 このタイミングで、当初の予定通りカーセント公爵、グロスター侯爵のおじいさま、更にニース侯爵が動き始めました。

「ふむ、出迎えは儂らでは不満の様だな」
「そうですな。今日は子どもが主役ですから、多めに見ましょう」
「うむ、歴史ある貴族を出迎えるには、少し役不足でしょうがな」
「「「なっ」」」

 おお、三人が極上の笑顔で男爵家を出迎えたよ。
 何だか、極悪人登場って感じだ。
 流石にこの迫力に押されて、男爵家は一瞬びっくりしたかと思ったけど素直に着いてきました。

「うーん、まだ待った方が良さそうだね」
「そうだね」

 ミカエルとブリットは、男爵家の子ども三人に突撃するのを後回しにしました。
 空気の読める子になっていますね。

「時に男爵よ、今宵は夫人は同伴じゃないのか?」
「この子は側室の子だ。儂がいれば十分だろう」

 うーん、さりげなくニース侯爵が男爵夫人が同伴していない理由を聞いたけど、とんでもない理由だな。
 恐らく、正妻と側室で対応の差をつけているんだろう。
 その貴族家のやり方だから口出しはできないけど、何だかなあって思っちゃうね。
 そしてそろそろ開始時間になるので、僕はアナウンスを始めます。
 トラブルが起きる前に、さっさと始めた方が良さそうですね。

「皆様、静粛にお願いいたします。まもなく五歳の祝いを開始しますので、席に着くようお願いします。繰り返します、まもなく五歳の祝いを開始しますので、席に着いて下さい」

 着席を促すアナウンスをしても、男爵の三家は一ヶ所に纏まって話を聞かないでいる。
 おじいさまが促しても、全く話を聞かないよ。
 ここで、僕が持っているマイク型魔導具を陛下がおもむろに取りました。

「うむ、何か勘違いしている者がおるな。歴史の長さなどどうでも良く、ルールに従わなければそれはただの我儘だ。我が国は法治国家であるからにして、ルールを守るのは大前提だ。ましては、今宵は五歳の子どもの成長を祝うパーティーだ。大人が率先してルールを守らなければならない」

 陛下は、敢えて誰とは言わなかったけど大人がルールを守るべきと暗に男爵の三家に行っていた。
 流石に陛下に言われたらどうしようもないので、男爵の三家はすごすごと用意されたテーブルに着きます。
 他の人も、用意されたテーブルに座って行きます。
 こうなったら、反論できないように一気に進行しちゃいましょう。

「それでは、これから五歳の祝いを開始します。王家の方々、並びに聖女カレン様とクロスロード子爵が入場します」
「「「おおー」」」

 僕が入場者のアナウンスをすると、会場内からどよめきが起きました。
 聖女様であるカレン様が五歳の祝いに参加するのは、事前に予告されていなかったからです。
 初めてカレン様を見た子ども達は、思わずカレン様の美しい姿に見入っていました。
 今日のカレン様は、聖女としてのローブを身に纏っていて、とっても神々しい姿です。
 そして、同時に登場したジンさんにも子ども達の視線は釘付けです。
 憧れの救国の勇者様であるジンさんを目の前にして、子どもたちのテンションは上がっているみたいですね。
 ジンさんの衣装が派手って話もあったけど、煌びやかなパーティーだから全然目立ってはいません。
 王妃様とアリア様とティナおばあさまもいつの間にか陛下のところにいて、ルーカスお兄様、ルーシーお兄様、エレノアに手を引かれたルカちゃんとエドちゃんもいます。
 そして、僕も知らなかったんだけど、ベビーカーに乗せられたエリちゃんもやってきました。
 もちろん、エリちゃんの傍には飛天虎の子どもが寄り添っています。
 何だか、王家勢揃いになって凄い事になっているよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あれ?なんでこうなった?

志位斗 茂家波
ファンタジー
 ある日、正妃教育をしていたルミアナは、婚約者であった王子の堂々とした浮気の現場を見て、ここが前世でやった乙女ゲームの中であり、そして自分は悪役令嬢という立場にあることを思い出した。  …‥って、最終的に国外追放になるのはまぁいいとして、あの超屑王子が国王になったら、この国終わるよね?ならば、絶対に国外追放されないと!! そう意気込み、彼女は国外追放後も生きていけるように色々とやって、ついに婚約破棄を迎える・・・・はずだった。 ‥‥‥あれ?なんでこうなった?

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する

土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。 異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。 その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。 心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。 ※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。 前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。 主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。 小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。

聖女の姉が行方不明になりました

蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。