上 下
632 / 878
第二十五章 新たな脅威?

七百五十八話 馬鹿な真似をしたもの

しおりを挟む
 よし、僕も始めよう。
 対岸にいるスラちゃんに手を振ってから、僕は魔力を溜め始めました。

 シュイーン、ガシッ。

「よっと、うん、上手く固まったね。でも、根本的には灌漑工事しないと駄目だね」
「そうね。この急カーブをどうにかしないと、いつまた氾濫が起きるか分からないわ」

 僕は、カミラさんと一緒に作業を進めます。
 応急処置はこれで良いんだけど、カーブになっている所を上手く避けた排水路がないと駄目だ。
 とはいっても、ブランデー子爵に理解して貰うのは不可能だろうな。

「アレク君、体験入園は無事だったの?」
「ブランデー子爵夫人と息子が、ルーシーお姉様に婚約破棄して俺と結婚しろと迫っていました。王妃様に言い負かされて、そのまま連行されました」
「馬鹿だ、馬鹿すぎる。そもそも子爵と王女の結婚は無理でしょう」

 作業の合間にカミラさんに体験入園であった事を話していたけど、やっぱり結婚しろと言ったのは非常識だよね。
 そもそも、体験入園で結婚しろとは普通言わないはずだ。

「あと、ルーシーお姉様と平民の子がお友達になっていました。ダブル特待生の凄い人らしいですよ。他の人とも仲良くなっていました」
「その平民の子は、いわゆるジンみたいな人なのね。トラブルもそれくらいで何よりだわ」

 ルーシーお姉様は手が空けばランさんに会いに行こうとするだろうけど、炊き出しに行けば会えると思うけどね。
 さて、これで護岸の応急処置は完了です。

「よし、終わった。これで大丈夫ですよ」
「この場は兵に監視させて、私達も屋敷に向かいましょう」

 スラちゃん達の護岸の応急処置も終わったし、河川の水量も一時期と比較して落ち着いてきました。
 上流で降った雨が、何とか落ち着いたんですね。
 全員まとめて、スラちゃんの転移魔法で移動します。

 シュッ。

「よっと。あっ、軍務卿、河川の応急処置は終わって兵に監視して貰っています。屋敷はどうなっていますか?」
「アレク君、本当に助かった。引き続き、兵に監視させよう。屋敷は、その、ブランデー子爵が特上の馬鹿だったのでみんな呆れて執務室から出てきたんだよ」

 屋敷の玄関にいた軍務卿が、思わず頭をポリポリとしちゃった。
 一体ブランデー子爵が何を言ったのか気になるので、僕たちは執務室に向かいました。

「王妃様、落ち着いて、落ち着いて下さい!」
「お母様、こんな奴相手にしても仕方ないですよ!」
「ジン、ルーシー、止めないで! この馬鹿を仕留めないと気がすまないわ!」
「ゲホゲホ……」
「「「うわあ……」」」

 執務室は大混乱だった。
 ジンさんとルーシーお姉様が怒り心頭の王妃様を必死に羽交い締めにして止めていて、ブランデー子爵と思わしき太った中年男性が床に膝をついて喉を抑えながら咳き込んでいた。
 ルーカスお兄様とアイビー様は、泣いているオレンジ色の髪の少年を慰めていた。
 うん、正直何が何だか全く分からないよ。
 取り敢えず王妃様を止めないと、ブランデー子爵を殺しちゃう。

「はあはあはあ……」
「お母様、少し落ち着いて下さい」

 ようやく少し落ち着いた王妃様をソファーに座らせて、ジンさんから何があったかの話を聞くことに。

「ブランデー子爵は、私は王国創立以来の由緒正しい貴族だから何をしても許されると言ったんだよ」
「あの、そこまでのぼせ上がっていたんですね……」
「流石に閣僚も呆れてな、直ぐに証拠を押さえるべく部屋を出て動き出したんだよ。で、暫くしたらブランデー子爵が王妃様の事を年増のババアって言ったんだよ。それで、王妃様が激怒したんだ。どうも、王妃様とブランデー子爵は学園の同級生らしいぞ」

 ジンさんの説明を聞いた全員が、思わず溜息をついちゃいました。
 閣僚を呆れさせるだけでなく、王妃様に喧嘩を売るとは。

「ブランデー子爵を贈収賄で拘束して、さっさと王城に送りましょう」
「そうだな、俺もコイツの顔を見たくないわ」
「「「うんうん」」」

 ジンさんを始めとする全員の意見が一致したので、レイナさんがササッとブランデー子爵を拘束してスラちゃんが王城に連れていきました。
 はあ、久々にまともに相手をするのも馬鹿馬鹿しいのが現れた。
 王妃様にはノエルさんが紅茶を入れていて、更に落ち着かせていました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。