上 下
628 / 949
第二十五章 新たな脅威?

七百五十四話 ルーシーお姉様の新しいお友達?

しおりを挟む
 スラちゃんとカミラさん達がブランデー子爵領にいるので、ここはお任せして僕達は目の前の体験入園に集中しよう。
 体験入園が終わったら、急いでブランデー子爵領に向かわないと。

「王妃様、リズ達の手が開いているのでカミラさんの所に合流して貰いますか?」
「ええ、お願いね。現状では、いくら手があっても良いでしょう」

 王妃様の許可を得たので、僕はカミラさんの通信用魔導具に返信を行います。
 今日は近衛騎士が学園にも複数来ている関係で、普段は辺境伯領にいるノエルさんがエレノアの護衛でついています。
 ノエルさんは土魔法も使えるので、ひびが入った土手の修復にも力を発揮してくれるはずです。
 そんな事を思いながら、僕は王妃様とルーシーお姉様と共に体育館に向かいます。

 ざわざわ、ざわざわ。

 体育館の中には入園予定の人々が入り始めていて、知り合いの貴族がいたら挨拶をしていました。
 そんな中、体育館内をキョロキョロとしている一人の小さな少女がいた。
 ルーシーお姉様よりも小さくて、それこそイヨよりも小さいのではと思う赤髪のちょっと癖っ気のショートヘアの少女だった。
 でも学園の制服を着ているので、 来年の新入生でほぼ間違いなさそうだ。
 何かあったのかなと、体育館の中にいて不安げな少女の様子に気が付いた僕、ジンさん、ルーカスお兄様、ルーシーお姉様が少女に近づいていきました。
 しかし、僕たちよりも一歩早く少女に話しかけた存在が。

「ねえ、どうしたの。何かあったの?」
「えっ、あっ」

 少女に話しかけたのは、ルーシーお姉様でした。
 ルーシーお姉様は人見知りしない性格なので、不安そうにしていた少女に積極的に話しかけていました。
 王妃様は、少女に近づいた僕たちのところに来て二人の様子を見守っています。

「初めまして、私はルーシーよ。体験入園に来たの。あなたは?」
「わ、私は、ら、ランです。その、私も体験入園に来ました……」

 少女もといランさんは、やはりルーシーお姉様と同じ年で体験入園に来たみたいです。
 でも、ちょっと気になった事があります。

「あれ? ランちゃんのお父様とお母様は?」
「あ、あの、実は私は孤児で教会の孤児院に住んでいます。きょ、今日はシスターさんがついてくれています」

 ルーシーお姉様がランさんに優しく話しかけていたけど、そういう事情があったのか。
 こちらの様子に気がついて一人のシスターさんが近寄ってきたけど、シスターさんは僕たちの正体に気がついてビックリした表情を隠さないでいるよ。

「という事は、ランちゃんは特待生なんだね」
「は、はい。学問と魔法の特待生です……」
「わあ、そうなんだ。二つも特待だなんて、本当に凄いね!」

 ルーシーお姉様とランさんのやり取りを見ていたルーカスお兄様が、ふと何かを思い出した表情に変わりました。

「確か、学問も魔法もとても優秀な平民の少女が体験入園しにくると聞いたが、それが彼女だったか」
「優秀な少女だから接触しようかと思いましたが、既にルーシーのお友達候補ですわね」
「ええ、立場の違いはあるにせよ、ルーシーにとってもとても良い事だわ」

 おお、ロイヤルな方々もランさんを引き込む気満々だよ。
 とはいえ、ローリーさんの例もあるし、優秀な人は卒園後にどんどんと重要なポジションに引き込まれるでしょうね。
 このタイミングで、僕たちのところにやってきたシスターさんが、慌てた表情のまま挨拶をしてきました。

「ルーシー王女殿下、ランに挨拶をして頂き恐れ入ります。ビクトリア王妃様、ルーカス王太子殿下、アイビー様、アレクサンダー副宰相閣下、クロスロード副宰相閣下、ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」
「いえいえ、こちらこそルーシーがお世話になっている様でして。本日は体験入園です、いわば来年入園する者が主役ですのでお気になさらずに」

 王妃様の言葉に、みんながうんうんと頷いています。
 元々ルーカスお姉様とアイビー様は体験入園のアテンド役だし、僕とジンさんは直接はあくまでもみんなを見守るだけです。
 王妃様も保護者的な立場を崩していないから、特に問題ないんだよね。

「えっ、えっ? も、もしや、る、ルーシー王女殿下?」
「えーっと、確かに私は王女だけど、ランちゃんとは身分とか関係なくお友達になりたいな」
「こ、光栄です……」

 ルーシーお姉様と手を繋いだまま、ランさんは固まってしまいました。
 でも、ルーシーお姉様は正体を明かしてもランさんへの態度を崩さないし、ランはんと本当にお友達になりたいんだろうね。
 そんなルーシーお姉様とランさんの周囲に、おずおずとしながらも人が集まってきました。

「あ、あの、私も挨拶をして良いですか?」
「僕も良いですか? その、男爵家ですけど……」
「全然良いよ。こちらこそ宜しくね」

 ルーシーお姉様は、周りに集まってきた人にも積極的に挨拶したり握手をしています。
 ランさんも、そんなルーシーお姉様の様子を見てちょっとホッとしていますね。
 そんなにこやかな雰囲気の集団を、王妃様は少し嬉しそうに見つめていました。
しおりを挟む
感想 235

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。