上 下
544 / 878
第二十四章 お兄ちゃんの官僚としての忙しい日々

六百七十話 もしかし飢餓輸出?

しおりを挟む
 皆で闇組織の構成員を縛り上げて、僕とスラちゃんのゲートで王都郊外の軍の駐屯地に送ります。

「ふう、片付きましたね。でも、まだまだ闇組織の構成員がいるかもしれないですね」
「というか、いるみたいよ。もう出てきたわ」
「「「うらー!」」」

 僕もティナおばあさまもげんなりしながら、また襲ってきた闇組織の構成員を迎え撃ちました。

「「せりゃ! おりゃ!」」

 うん、またもや内務卿と農務卿が大活躍しています。
 勿論、兵を押しのけてって事は無いけどね。
 供述ができるレベルで、襲ってきた闇組織の構成員を倒していきます。

「わ、わわわわ、私はただの侍従です。何でも、ないです、よ?」
「あっ、この人が悪い執事だよ。スラちゃんが見破ったよ」
「なっ!」

 更に各部屋に入って、悪人を確認しながら捕まえていきます。
 というか、誰が悪人か一目みて直ぐにわかりますね。
 何も問題を起こしていない人はかなり痩せていて、悪い人は太っています。
 もしかして、食事もろくにしていなかったのだろうか。
 何だか、とっても嫌な予感がしてきたよ。

「内務卿、農務卿、まさかとは思うのですけど、カスバク子爵領では飢餓輸出が行われていたのではないですか?」
「可能性は高いだろう。貴族主義の領地では、既に前例があるからな」
「カスバク男爵領でも飢餓輸出が起きている可能性がある。早めに向かわないとならないな」

 向かってくる構成員を倒しながら、僕達は懸念材料の話をしました。
 直ぐにティナおばあさまが、王城に連絡して炊き出しや治療の手配をしてくれました。

「よし、こんなもんだろう。兵を増やして証拠を抑えるのと、治療と炊き出しをしないとな」
「じゃあ、王城にゲートを繋ぎますね」

 僕が王城にゲートを繋ぐと、調査官と炊き出し担当の侍従と共に、宰相と外務卿がやってきました。

「飢餓輸出までしているとなると、話がとても大きくなるな。状況を確認して、王都との交易量を増やさなければならない」
「こちらは私達が受け持つので、早めに男爵領に行って貰うと助かる。何せ、何かあっても王都から馬車で一日あれば着くからな」

 宰相と外務卿がありがたい事を行ってくれたので、僕達はスラちゃんのゲートでカスバク男爵領に向かいました。

「うりゃー!」
「おりゃー!」

 そして、残念ながらカスバク男爵家の屋敷でも肉体言語でのお話が始まってしまいました。
 しかも屋敷に入った瞬間に、闇組織の構成員が僕達を襲ってきました。
 うん、弱い、弱すぎる。
 完全に見掛け倒しのチンピラレベルの闇組織構成員なので、ここでもあっという間に制圧完了です。

「ここも侍従が痩せ細っていますね」
「あのね、ご飯ちゃんと食べていないから、お腹ペコペコなんだって」
「屋敷の者にろくに食事を与えずに、自分達は贅沢ばかりをしている。統治者として最低ね」

 大体の闇組織の構成員を捕まえた所で、カスバク男爵家にも応援を呼びました。
 うん、ティナおばあさまが余りの統治の酷さにガチギレしているよ。
 僕も流石に怒っています。

「はあ、ここまで酷いとは何という事か。バザール領よりも深刻な状況ではないか」

 今度は調査官と兵と王城の侍従と共に、商務卿がやってきました。
 商務卿も、余りの状況の酷さに顔をしかめていました。

「これじゃあ、どうにかしてと陳情が来るのは当たり前ですね」
「物流が止まって、物や人にお金の流れも止まったのだろう。急いで改善しないとならないな。このままでは、大量の餓死者が出るぞ」

 商務卿は商売に詳しいだけあって、直ぐに色々と指示を出していました。
 炊き出しだけじゃ、その場しのぎの対応になっちゃうもんね。

「うん? ケーヒル伯爵からの連絡だわ。まあ、大変! 闇組織がゴブリンやオークなどを召喚して、かなり抵抗しているそうよ」
「物量で押し切るつもりですね。早く助けに行かないと」

 森の方では、結構大変な事になっていました。
 そもそも屋敷だとスペースが限られるので、魔物を召喚しても余り意味がありません。
 でも、広いスペースのある森だと、幾らでも魔物を召喚できますね。

「お兄ちゃん、早く助けに行かないと」
「アレク君、こちらは任せて貰って大丈夫だ。早く行くのだよ」

 商務卿もここは大丈夫だと、僕達に言ってくれました。
 僕達は急いで、スラちゃんのゲートで森に向かいました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。