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第二十三章 ルルーさんの結婚式と新たな命の誕生
五百八十六話 偽装だらけだった婚姻許可書
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うん、僕が見ても直ぐに分かったもん。
マロード男爵家と書いたつもりが、マローネ男爵家ってなっているよ。
いくらなんでも、ドとネを間違えるってありえないんじゃないかな?
「それに、内務卿のサインも違っている。我が家は婚姻が続いて、申請を二回出しているからな」
「あっ、えっ?」
そして、今度は辺境伯様のターンです。
僕も内務卿のサインを何回も見た事があるけど、筆跡が全然違うんだよね。
ボンバー伯爵の顔色が真っ青になって汗だくになっているけど、僕達は特に気にしていません。
「あと、決裁日が二日前になっていますけど、実はこの日に僕はルーカスお兄様と一緒に内務卿の手伝いをしていまして。婚姻関連の書類を処理した記憶が一切ないですよ」
「あっ、うあ、あが……」
トドメに僕のターンです。
この日の内務卿は午前中は会議で仕事ができなくて、午後から学園から帰ってきたルーカスお兄様と一緒に僕も書類整理をしていたんだよね。
だから、この書類を内務卿が処理したかどうかは僕も分かるんだよ。
ボンバー伯爵は、顔が真っ青から真っ白になっちゃったよ。
まるで、白粉を塗ったみたいだね。
「さて、茶番はこのくらいで良いだろう。アレク君、悪いが内務卿がここに連れてきて欲しいと返信があったから頼めるか?」
「分かりました。直ぐに呼んできます」
「はへ……」
ボンバー伯爵が訳もわからない顔で座り込んで動けないでいるけど、好都合なのでさっさと王城に行きましょう。
「中々面白い事になっている様だな」
「実際に見ていた僕としては、ボンバー伯爵の行為は奇劇そのものでした」
「ははは、アレク君も中々言うもんだな」
内務卿は、いつもの執務室にいました。
どうも辺境伯様とマロード男爵様からリアルタイムで情報が送られていたらしく、ニヤニヤとしながら僕を迎え入れてくれました。
「公的書類の偽造だから、私も行った方が良いだろう。全く頭が痛いものだ」
たまたま軍の重鎮であるケーヒル伯爵様も、内務卿の執務室を訪れていました。
貴族家から軍人になる人の手続きで、普通に内務卿に書類を出してきたみたいです。
更にケーヒル伯爵様付きの兵も二人助っ人も来てくれる事になったので、僕達はボンバー伯爵の所に戻りました。
「うが! 離せ、離しやがれ!」
「往生際が悪いわね」
「観念しなさい!」
ボンバー伯爵の屋敷の応接室に戻ると、暴れているボンバー伯爵をイザベラ様とマロード男爵夫人がソファーに押さえつけていました。
直ぐにケーヒル伯爵様付きの兵が、ボンバー伯爵を拘束しました。
普通は辺境伯様とマロード男爵様という男性がボンバー伯爵を押さえつけるのかと思ったけど、それが出来ない理由が分かりました。
「辺境伯様、マロード男爵様、大丈夫ですか?」
「いてて……」
「うぐっ……」
辺境伯様とマロード男爵様は、頬が腫れる程の怪我を負っていました。
どう見ても、ボンバー伯爵が二人を殴ったのでしょう。
僕は直ぐに、二人に回復魔法をかけました。
「いやあ、助かったよ。アレク君が王城に行って直ぐに、ボンバー伯爵が急に我に返ってな。突然、婚姻許可書を破ろうとしたのだよ」
「私達は慌ててボンバー伯爵を止めようとして、二人ともに顔を殴られたんだよ」
何となく予想は出来たけど、ボンバー伯爵は婚姻許可書をなかった事にしたかったんだね。
その行為自体が、婚姻許可書は偽造されたものだという証拠にもなったよ。
「こんな下手くそな偽装をしたもんだな。そういえば、ボンバー伯爵家に融資した金が返ってこないと、業者から王城に連絡が入ったな」
「うぐっ……」
偽の婚姻許可書を手に取りながら、内務卿は呆れた目でボンバー伯爵を見ていました。
という事は、ボンバー伯爵家にある数多くの物が差し押さえになりそうだね。
裕福な男爵家に無理やり嫁を送り込んで、男爵家からお金を奪い取る。
どうせ男爵だから伯爵家の言うことは聞くし、念の為に婚姻許可書を作っておくか。
こんな筋書きですね。
借金がかさんで追い詰められたにせよ、余りにも短絡的だよね。
「取り敢えずボンバー伯爵は、貴族当主二人への暴行の現行犯で良いだろう。どうせ他の罪も沢山ありそうだしな」
ケーヒル伯爵がタブレット型魔導具でどこかに指示を出していたけど、恐らく王都の軍だろうね。
という事で、僕達も捜査に協力する為に暫くボンバー伯爵家に残る事になりました。
そして、数十分後……
「「「何でこんな事を教えてくれなかったの!」」」
ちょっとプンプンモードのリズとサンディとイヨが、何故か軍務卿の馬車で軍務卿と一緒にやってきました。
スラちゃんも一緒で、触手をフリフリとしながら僕に抗議をしていました。
実は、リズ達は朝から王城で勉強をしていたのです。
だから、今日は僕とプリンでずっと動いていました。
「まあ、勉強も終わったみたいだし、辺境伯家が絡んでいるとなるとリズちゃんも気になるよな」
貴族関連の犯罪になったので王城からやって来た軍務卿も、ちょっと苦笑いをしながら話をしていました。
因みに、リズ達は軍と一緒に宝探しという名の証拠品集めをしていて、ちゃっかりと偽装を行った証拠を見つけていました。
まあ他家の貴族当主と現職の大臣のサインを偽造したから、ボンバー伯爵家は厳罰になるでしょうね。
そして、エマさんとオリビアさんが後で教えてくれたけど、金ピカだったボンバー伯爵の娘はいつの間にか金ピカじゃなくなって、その内に学園から姿を見なくなったそうです。
マロード男爵家と書いたつもりが、マローネ男爵家ってなっているよ。
いくらなんでも、ドとネを間違えるってありえないんじゃないかな?
「それに、内務卿のサインも違っている。我が家は婚姻が続いて、申請を二回出しているからな」
「あっ、えっ?」
そして、今度は辺境伯様のターンです。
僕も内務卿のサインを何回も見た事があるけど、筆跡が全然違うんだよね。
ボンバー伯爵の顔色が真っ青になって汗だくになっているけど、僕達は特に気にしていません。
「あと、決裁日が二日前になっていますけど、実はこの日に僕はルーカスお兄様と一緒に内務卿の手伝いをしていまして。婚姻関連の書類を処理した記憶が一切ないですよ」
「あっ、うあ、あが……」
トドメに僕のターンです。
この日の内務卿は午前中は会議で仕事ができなくて、午後から学園から帰ってきたルーカスお兄様と一緒に僕も書類整理をしていたんだよね。
だから、この書類を内務卿が処理したかどうかは僕も分かるんだよ。
ボンバー伯爵は、顔が真っ青から真っ白になっちゃったよ。
まるで、白粉を塗ったみたいだね。
「さて、茶番はこのくらいで良いだろう。アレク君、悪いが内務卿がここに連れてきて欲しいと返信があったから頼めるか?」
「分かりました。直ぐに呼んできます」
「はへ……」
ボンバー伯爵が訳もわからない顔で座り込んで動けないでいるけど、好都合なのでさっさと王城に行きましょう。
「中々面白い事になっている様だな」
「実際に見ていた僕としては、ボンバー伯爵の行為は奇劇そのものでした」
「ははは、アレク君も中々言うもんだな」
内務卿は、いつもの執務室にいました。
どうも辺境伯様とマロード男爵様からリアルタイムで情報が送られていたらしく、ニヤニヤとしながら僕を迎え入れてくれました。
「公的書類の偽造だから、私も行った方が良いだろう。全く頭が痛いものだ」
たまたま軍の重鎮であるケーヒル伯爵様も、内務卿の執務室を訪れていました。
貴族家から軍人になる人の手続きで、普通に内務卿に書類を出してきたみたいです。
更にケーヒル伯爵様付きの兵も二人助っ人も来てくれる事になったので、僕達はボンバー伯爵の所に戻りました。
「うが! 離せ、離しやがれ!」
「往生際が悪いわね」
「観念しなさい!」
ボンバー伯爵の屋敷の応接室に戻ると、暴れているボンバー伯爵をイザベラ様とマロード男爵夫人がソファーに押さえつけていました。
直ぐにケーヒル伯爵様付きの兵が、ボンバー伯爵を拘束しました。
普通は辺境伯様とマロード男爵様という男性がボンバー伯爵を押さえつけるのかと思ったけど、それが出来ない理由が分かりました。
「辺境伯様、マロード男爵様、大丈夫ですか?」
「いてて……」
「うぐっ……」
辺境伯様とマロード男爵様は、頬が腫れる程の怪我を負っていました。
どう見ても、ボンバー伯爵が二人を殴ったのでしょう。
僕は直ぐに、二人に回復魔法をかけました。
「いやあ、助かったよ。アレク君が王城に行って直ぐに、ボンバー伯爵が急に我に返ってな。突然、婚姻許可書を破ろうとしたのだよ」
「私達は慌ててボンバー伯爵を止めようとして、二人ともに顔を殴られたんだよ」
何となく予想は出来たけど、ボンバー伯爵は婚姻許可書をなかった事にしたかったんだね。
その行為自体が、婚姻許可書は偽造されたものだという証拠にもなったよ。
「こんな下手くそな偽装をしたもんだな。そういえば、ボンバー伯爵家に融資した金が返ってこないと、業者から王城に連絡が入ったな」
「うぐっ……」
偽の婚姻許可書を手に取りながら、内務卿は呆れた目でボンバー伯爵を見ていました。
という事は、ボンバー伯爵家にある数多くの物が差し押さえになりそうだね。
裕福な男爵家に無理やり嫁を送り込んで、男爵家からお金を奪い取る。
どうせ男爵だから伯爵家の言うことは聞くし、念の為に婚姻許可書を作っておくか。
こんな筋書きですね。
借金がかさんで追い詰められたにせよ、余りにも短絡的だよね。
「取り敢えずボンバー伯爵は、貴族当主二人への暴行の現行犯で良いだろう。どうせ他の罪も沢山ありそうだしな」
ケーヒル伯爵がタブレット型魔導具でどこかに指示を出していたけど、恐らく王都の軍だろうね。
という事で、僕達も捜査に協力する為に暫くボンバー伯爵家に残る事になりました。
そして、数十分後……
「「「何でこんな事を教えてくれなかったの!」」」
ちょっとプンプンモードのリズとサンディとイヨが、何故か軍務卿の馬車で軍務卿と一緒にやってきました。
スラちゃんも一緒で、触手をフリフリとしながら僕に抗議をしていました。
実は、リズ達は朝から王城で勉強をしていたのです。
だから、今日は僕とプリンでずっと動いていました。
「まあ、勉強も終わったみたいだし、辺境伯家が絡んでいるとなるとリズちゃんも気になるよな」
貴族関連の犯罪になったので王城からやって来た軍務卿も、ちょっと苦笑いをしながら話をしていました。
因みに、リズ達は軍と一緒に宝探しという名の証拠品集めをしていて、ちゃっかりと偽装を行った証拠を見つけていました。
まあ他家の貴族当主と現職の大臣のサインを偽造したから、ボンバー伯爵家は厳罰になるでしょうね。
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