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第二十章 マロード男爵領とジンさんの結婚式

四百七十九話 セシルさんがおめでたです

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「あの、何で頭が潰された個体が多いのですか?」
「深く聞かないでくれ。色々あったんだよ」
「はぁ……」

 結局午前中で害獣駆除が終わったので、他の人をマロード男爵領の屋敷へ送った後、僕とジンさんでマロード男爵領の冒険者ギルドにストレス発散対象として狩られた害獣を卸します。
 うん、見事なまでに頭がぐちゃぐちゃな個体が多いなあ。
 ギルド職員も思わずびっくりしていて、ジンさんもなすすべ無しって感じで首を横に振っていた。
 
「はい、皆さんの手続きも済ませてあります」
「おう、悪いな」
「しかし、あのジンも貴族になった上に子持ちか。時が流れるのは早いなあ」
「何故しみじみ言うんだよ」
「いいえ、特に他意はないぞ」

 ジンさんとギルド職員は顔見知りなので、談笑をしながら手続きをしていました。
 お互いからかいながら、とっても楽しそうです。
 さてさて、ギルドでの手続きも終わったので僕とジンさんも屋敷に向かいます。

「にーに、おかえりー」
「ミカエル、ただいま。良い子にしていた?」
「うん!」

 屋敷に着くと、庭で遊んでいたミカエルが僕をお出迎えします。
 ミカエルも、だいぶ話すのがはっきりしてきたね。
 他の子はまだ追いかけっこをしていて、元気な声が庭に響いています。
 スラちゃんとプリンも一緒に混ざっていて、とても楽しそうです。
 因みに害獣駆除に行かなかったルーカスお兄様とルーシーお姉様も、元気よく遊ぶ子ども達の相手をしていました。
 ルカちゃんとエドちゃんも一緒に混ざっていたので、こればっかりはしょうがないよね。

「昼食の準備ができましたよ。今日は紅葉鍋ですよ」
「「「わーい」」」

 ここで、アレクサさんが僕達の事を呼びに来てくれました。
 マロード男爵領といえば、新鮮なお肉を使ったお鍋だよね。
 子ども達もお鍋が大好きなので、とっても良い笑顔になっています。
 王妃様達は既に屋敷の食堂にいるので、僕達も屋敷の中に入っていきます。

「はいはい、手をふきふきしましょうね」
「順番ね」
「「「はい!」」」

 ルリアンさんとナンシーさんがお手拭きを持ってきて、ミカエルや子ども達の手を順番に拭いています。
 そして、席には同じく狩りに行かなかったティナおばあさまとマイク様の奥さんのセシルさんが座っていました。
 実は今回屋敷に沢山の人が残ったのには、ちょっとした訳がありました。

「セシルさん、体調はもう大丈夫ですか?」
「はい、おかげさまですっかり良くなりました」
「でも、マロード男爵家にも新しい命が誕生するのはとってもめでたい事よね」
「ありがとうございます。私もとっても嬉しいです」

 そうです、実はセシルさんが妊娠している事が発覚したのです。
 今朝屋敷に行ったときにセシルさんが真っ青な顔をしていたので、皆とっても慌てていました。
 そうしたら、ミカエルがセシルさんを指さして赤ちゃんがいると言ったもんだから大騒ぎになりました。
 念の為にと、ティナおばあさまやルーカスお兄様達が屋敷に残る事になりました。
 因みに、辺境伯家に伝えたらとっても喜んでいるそうで、明日僕達と一緒に来る事になっています。

「にーに、たべよー!」
「はいはい、ちょっと待っていてて」

 紅葉鍋が並べられたので、ミカエルが僕の事を呼んできます。
 他の人も席について、お鍋を食べ始めました。

「いやあ、久々に体を存分に動かしましたな」
「やはりストレスは溜めるものではありませんな」

 軍務卿と内務卿は害獣駆除で大暴れをしたので、今はとっても良い笑顔です。
 王妃様とアリア様も、すっきりとした表情をしています。

「ほら、レイカ、あーんして」
「あーん」

 レイナさんが、小さく切ったお肉をレイカちゃんに食べさせています。
 微笑ましい光景ですが、ここでジンさんがマイク様にチクリと言いました。

「マイク。いいか、赤ん坊が出来たら何もかもが赤ん坊優先になる。覚悟しておけよ」
「じ、ジンさん。そんな脅さなくても」
「いいえ、これは本当よ。四六時中赤ちゃんの面倒を見ないといけないのよ」
「うんうん、良く分かる。自分の時間が持てなくなるのよ」
「貴族家だから育児がどうなるかは分からないけど、奥さんを助けないとならないわよ」
「は、はい……」

 あ、マイク様がカミラさんとルリアンさんナンシーさんにもぼこぼこに言われてしまってちょっとへこんでいます。
 まあ、マロード男爵家は当主夫妻が健在だし、僕の経験上孫バカにクラスチェンジするから大丈夫じゃないかな?
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