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第二十章 マロード男爵領とジンさんの結婚式

四百五十八話 戦闘終結です

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 夕方前には、ブランターク男爵領の森に向かった兵と冒険者も屋敷に戻ってきました。

「おかえり!」
「ただいま戻りました」

 リズが玄関ホールで皆を出迎えると、ランカーさんが代表して挨拶してくれました。
 疲れているだろうし、応接室で森の中の話を聞きます。
 
「どうも、一部のゴブリン達が夜の内に逃げたようですね」
「辺境伯領で結構な戦いがあったと聞いたので、恐らく逃げたゴブリンも討ち取ったでしょう」

 ジェリルさんの話に、ティナおばあさまが頷きます。
 ゴブリンも逃げる事はあるし、全て予定通りにはいかないよね。

「ゴブリンの巣は壊滅しました。ゴブリンキングが二体いましたが、一体は近衛騎士の合体魔法で、もう一体は、その、プリンが単独で撃破しました」
「ありゃすげー雷魔法だったな。ゴブリンキングが一発で倒れたぞ」
「おー、プリンちゃん凄いね!」

 ジェリルさんと冒険者の報告を聞いたけど、まさかプリンがゴブリンキングを単独で倒すとは。
 プリンは得意げにフルフルと震えているけど、スラちゃんのレベルに近づいたかもしれないな。

「ひとまず大元を取り除いたけど、まだ森の中に魔物が逃げている可能性があります。今日はゆっくりと休んで、明日から再び森の中を捜索しましょう」
「「「はい」」」

 これで先ずはミッションクリアだけど、最低でも二日間は森を探索するそうです。
 ここで、ランディ様が立ち上がりました。

「皆様、ブランターク男爵領の危機を救ってくださりありがとうございます。皆様がいなければ、ブランターク男爵領は駄目だったかもしれません」
「私達はちゃんと依頼を受けて対応したから、全く問題ないわ。足りない所を把握して素直に助けを求めるのも、領主の資質の一つよ。あなたはそれを分かっているわ」
「はい、ありがとうございます。この事は忘れぬよう肝に銘じます」

 ティナおばあさまもランディ様の事を褒めていたけど、今回は無理をしなかったのが結果的に良かったのかも知れません。
 若い領主だから大変かもしれないけど、これからも頑張って欲しいです。

 そして、各地が落ち着いたのもあったので、王城に主要メンバーが集まる事になりました。
 僕は王城に行って、各地にゲートを繋ぎます。

「この度は大変だったが、死者もなく何よりであった」

 陛下の言う通り、怪我人は出たけど死者は一人も出ていません。
 このレベルの魔物討伐では、複数人の死者が出る事もあるそうです。

「ゴブリンキングが三体も出たのでな、遠征費用と冒険者への依頼料を払っても十分にお釣りがくるぞ」
「ご配慮頂きありがとうございます」

 今回の様に軍の派遣を依頼した場合は遠征費の一部を依頼した領地が負担します。
 ただ、今回は得た獲物の数が多いので、ブランターク男爵領の負担金は無いそうです。

「あと、捕らえた執事の件はちょっと厄介でな。業者と結託して、どうもかなりの誇大な額をブランターク男爵家に請求させていたらしいぞ」
「それはまたあくどいですね」
「ここまで横領額が大きいのは、王国の歴史上でも数少ない。その為に、ブランターク男爵家が本来負うべき借金の額は、改めて再計算することになる」

 既に関係者は捕縛されていて、執事の屋敷も兵によって捜索されている。
 というか、執事の為の屋敷って初めて聞いたぞ。

「また、執事による前領主の殺害疑惑も出てきた。恐らく直接の死因は心の臓の病だろうが、その前から少しずつ毒薬を飲ませていたらしい」
「それって、とんでもない事ではありませんか?」
「闇ギルドとは全く関係なかったが、執事のやっている事はまさに闇ギルドと一緒だな。学園卒業したてのランディを操って更に金を集めようとしていたのだが、執事の予想以上にランディが優秀だったので執事の手に負えなくなった様だ」
「それでランディ様に横領の証拠を突きつけられたら、逆にナイフで刺したのですね」
「とんでもないクズ野郎だな」
「ジンの言う通り、クズの極みだな」

 ジンさんの言う通り、ブランターク男爵領の執事は本当にクズな人だったんだ。
 ランディ様が辺境伯領へ助けを求めなければ、更に執事は暴走していたかもしれないぞ。

「既にここまでの証拠が出てきている。今後新たに出てくる証拠に関係なく、執事は死刑確定だ。他の関係者も、罪の重さに応じた罪状になる」
「その位は当然だな。もしかしたら、執事が横領した金をブランターク男爵家に返還しても余りあるのでは?」
「そう考えた方が良いだろう。何せ、子爵家並に金を溜め込んでおったぞ」
「うわあ、それはすげー」

 ともあれ、ブランターク男爵領に関してはこれで一段落です。
 僕達は念の為にあと二日間は各地にいて、その後撤収になります。
 と、ここで陛下からジンさんにとある提案が。

「おお、そうだ。こうして関係を持ったのだから、ジンの結婚式にランディを招待してやってはどうだ?」
「俺は全然平気です。というか、戦勝祝いって事で冒険者がかなり盛り上がっていまして」
「ははは、それは良いことだ。ランディも今後の為に、結婚式に参加する貴族と顔を合わせておくのだぞ」
「ご配慮頂き、誠にありがとうございます」

 こうして、ランディ様もジンさんの結婚式に参加する事になりました。
 ジンさんの結婚式はとんでもない参加者が集まるから、ランディさんがびっくりしない事を祈ります。
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