転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
299 / 934
第二十章 マロード男爵領とジンさんの結婚式

四百五十八話 戦闘終結です

しおりを挟む
 夕方前には、ブランターク男爵領の森に向かった兵と冒険者も屋敷に戻ってきました。

「おかえり!」
「ただいま戻りました」

 リズが玄関ホールで皆を出迎えると、ランカーさんが代表して挨拶してくれました。
 疲れているだろうし、応接室で森の中の話を聞きます。
 
「どうも、一部のゴブリン達が夜の内に逃げたようですね」
「辺境伯領で結構な戦いがあったと聞いたので、恐らく逃げたゴブリンも討ち取ったでしょう」

 ジェリルさんの話に、ティナおばあさまが頷きます。
 ゴブリンも逃げる事はあるし、全て予定通りにはいかないよね。

「ゴブリンの巣は壊滅しました。ゴブリンキングが二体いましたが、一体は近衛騎士の合体魔法で、もう一体は、その、プリンが単独で撃破しました」
「ありゃすげー雷魔法だったな。ゴブリンキングが一発で倒れたぞ」
「おー、プリンちゃん凄いね!」

 ジェリルさんと冒険者の報告を聞いたけど、まさかプリンがゴブリンキングを単独で倒すとは。
 プリンは得意げにフルフルと震えているけど、スラちゃんのレベルに近づいたかもしれないな。

「ひとまず大元を取り除いたけど、まだ森の中に魔物が逃げている可能性があります。今日はゆっくりと休んで、明日から再び森の中を捜索しましょう」
「「「はい」」」

 これで先ずはミッションクリアだけど、最低でも二日間は森を探索するそうです。
 ここで、ランディ様が立ち上がりました。

「皆様、ブランターク男爵領の危機を救ってくださりありがとうございます。皆様がいなければ、ブランターク男爵領は駄目だったかもしれません」
「私達はちゃんと依頼を受けて対応したから、全く問題ないわ。足りない所を把握して素直に助けを求めるのも、領主の資質の一つよ。あなたはそれを分かっているわ」
「はい、ありがとうございます。この事は忘れぬよう肝に銘じます」

 ティナおばあさまもランディ様の事を褒めていたけど、今回は無理をしなかったのが結果的に良かったのかも知れません。
 若い領主だから大変かもしれないけど、これからも頑張って欲しいです。

 そして、各地が落ち着いたのもあったので、王城に主要メンバーが集まる事になりました。
 僕は王城に行って、各地にゲートを繋ぎます。

「この度は大変だったが、死者もなく何よりであった」

 陛下の言う通り、怪我人は出たけど死者は一人も出ていません。
 このレベルの魔物討伐では、複数人の死者が出る事もあるそうです。

「ゴブリンキングが三体も出たのでな、遠征費用と冒険者への依頼料を払っても十分にお釣りがくるぞ」
「ご配慮頂きありがとうございます」

 今回の様に軍の派遣を依頼した場合は遠征費の一部を依頼した領地が負担します。
 ただ、今回は得た獲物の数が多いので、ブランターク男爵領の負担金は無いそうです。

「あと、捕らえた執事の件はちょっと厄介でな。業者と結託して、どうもかなりの誇大な額をブランターク男爵家に請求させていたらしいぞ」
「それはまたあくどいですね」
「ここまで横領額が大きいのは、王国の歴史上でも数少ない。その為に、ブランターク男爵家が本来負うべき借金の額は、改めて再計算することになる」

 既に関係者は捕縛されていて、執事の屋敷も兵によって捜索されている。
 というか、執事の為の屋敷って初めて聞いたぞ。

「また、執事による前領主の殺害疑惑も出てきた。恐らく直接の死因は心の臓の病だろうが、その前から少しずつ毒薬を飲ませていたらしい」
「それって、とんでもない事ではありませんか?」
「闇ギルドとは全く関係なかったが、執事のやっている事はまさに闇ギルドと一緒だな。学園卒業したてのランディを操って更に金を集めようとしていたのだが、執事の予想以上にランディが優秀だったので執事の手に負えなくなった様だ」
「それでランディ様に横領の証拠を突きつけられたら、逆にナイフで刺したのですね」
「とんでもないクズ野郎だな」
「ジンの言う通り、クズの極みだな」

 ジンさんの言う通り、ブランターク男爵領の執事は本当にクズな人だったんだ。
 ランディ様が辺境伯領へ助けを求めなければ、更に執事は暴走していたかもしれないぞ。

「既にここまでの証拠が出てきている。今後新たに出てくる証拠に関係なく、執事は死刑確定だ。他の関係者も、罪の重さに応じた罪状になる」
「その位は当然だな。もしかしたら、執事が横領した金をブランターク男爵家に返還しても余りあるのでは?」
「そう考えた方が良いだろう。何せ、子爵家並に金を溜め込んでおったぞ」
「うわあ、それはすげー」

 ともあれ、ブランターク男爵領に関してはこれで一段落です。
 僕達は念の為にあと二日間は各地にいて、その後撤収になります。
 と、ここで陛下からジンさんにとある提案が。

「おお、そうだ。こうして関係を持ったのだから、ジンの結婚式にランディを招待してやってはどうだ?」
「俺は全然平気です。というか、戦勝祝いって事で冒険者がかなり盛り上がっていまして」
「ははは、それは良いことだ。ランディも今後の為に、結婚式に参加する貴族と顔を合わせておくのだぞ」
「ご配慮頂き、誠にありがとうございます」

 こうして、ランディ様もジンさんの結婚式に参加する事になりました。
 ジンさんの結婚式はとんでもない参加者が集まるから、ランディさんがびっくりしない事を祈ります。
しおりを挟む
感想 236

あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

悪役令嬢は蚊帳の外です。

豆狸
ファンタジー
「グローリア。ここにいるシャンデは隣国ツヴァイリングの王女だ。隣国国王の愛妾殿の娘として生まれたが、王妃によって攫われ我がシュティーア王国の貧民街に捨てられた。侯爵令嬢でなくなった貴様には、これまでのシャンデに対する暴言への不敬罪が……」 「いえ、違います」

婚約破棄の場に相手がいなかった件について

三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。 断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。 カクヨムにも公開しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。