上 下
326 / 878
第二十章 マロード男爵領とジンさんの結婚式

四百五十二話 襲撃された人の正体

しおりを挟む
 さてさて、このよく分からない状況を確認する為に、刺されていた二人に話を聞くことにします。

「大丈夫ですか? 私は王国王族のティナです」
「ああ、良かった。手紙が届いたんですね。僕はランディ、ブランターク男爵家の当主です」

 ティナおばあさまの手で起こされたのは、やはりブランターク男爵家の当主だった。
 ランディ様は何とか半身を起こして、話を始めました。

「実はそこの執事が横領している事が分かったので追求していたら、いきなりナイフで刺されました」
「私はちょうどその場面に遭遇しまして、同じく執事に刺されました」

 ランディ様と侍従の話を聞いたティナおばあさまは、怒り心頭です。
 タブレットで情報を王城に伝えた後、組み伏せられている執事に丁寧だけど冷酷な口調で話し始めました。

「貴方の身柄は王城に送られる事になりました。殺人未遂もありますが、どうやら先代の頃から横領していたのでしょう。まあ、厳しい取り調べを受ける事を覚悟してください」
「ぐっ」

 拘束された執事は、王城の軍の施設にゲートを繋いだ後連行されました。
 そして、数人の兵が代わりにやってきて、屋敷の捜索を手伝ってくれるそうです。
 ともあれランディ様と侍従は出血した後なので、ベッドに運ばれました。
 ランディ様は、ベッドから身を起こして僕達に話しかけました。

「僕は三月に学園を卒業したばかりで、他に兄弟はおりません。そして、学園卒業と時を同じくして両親が相次いで亡くなりました」
「その辺りは王城にも連絡があったわ。確か、突然死だとか」
「はい、胸を押さえて急に倒れました。まあ、かなり太っていて今まで贅沢三昧をしてきたツケが回ってきたのでしょう」

 ランディ様の話を聞く限り、両親は心臓病だったのだろう。
 太り過ぎは良くないですね。

「その後、帳簿を調べたらかなりの借金を背負っている事が分かりました。その為、屋敷にある売れるだけの物を売却しました。しかし、売却額と実際に返済された額が違うので再度調べたら、執事が横領していた事が分かりました」
「そうこうしている内に、沢山の動物や魔物が現れた訳ね」
「はい、執事は様々な所から横領を繰り返していて、防衛費も横領していました。その為に、かなり前から十分に動物や魔物を狩ることが出来ていませんでした。そこで僕は信頼する兵に手紙を託して、辺境伯領に向かってもらいました」
「そして、執事を追求したら執事が蛮行を働いたって訳ね。大変だったわね。でも、その判断は正しかったわよ」

 ティナおばあさまが、優しく話しながらランディ様から事情を聞いてくれた。
 恐らく、執事は相当前から横領を繰り返してきたはずだな。

「実は数日前から商隊の往来が滞っていました。往来が減った背景に執事が絡んでいるのか分からないのですが、餓えている人もいたので炊き出しを行っておりました」
「いい判断だわ。あなたはきっと良い領主になるわ。今は私達に任せて、あなたはしっかりと療養して下さい」
「はい、ありがとうございます」

 まだ学園を卒業したばっかりなのに、ランディ様はかなりしっかりとした人物だ。
 両親の反面教師とはいえ、今の危機を乗り切ればブランターク男爵領の未来は明るいだろう。
 ランディ様にはしっかりと養生して貰って、その間は僕達が頑張らないといけないな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。