上 下
277 / 951
第十九章 懐古派の砦編

四百三話 アレクサさんも一緒にお鍋タイム

しおりを挟む
 道中はトラブルもなく、順調に今日のポイントまで到着しました。
 この後は安全の為に、僕達の屋敷に戻る事になっています。

「アレクサさんは宿とかはどうするつもりでいましたか?」
「えっと、宿を取るつもりでおりました」
「なら、今日は僕の屋敷に招待しますね」
「えっ?」

 アレクサさんは街に泊まるつもりだけど、安全の為に僕の屋敷にご招待します。
 という事で、ひと目につかない所に移動して、僕の屋敷の庭にゲートを繫ぎます。

「信じられません。これが伝説といわれる移動魔法ですか」

 アレクサさんはゲートを初めてみたので、突然別の所に移動してびっくりしていた。
 教皇国から王国にあっという間に移動したから、気持ちはわかるなあ。

「あら、皆帰ってきたのね」
「ただいまー!」

 丁度いいタイミングで、お隣の辺境伯様の屋敷からイザベラ様が顔を見せた。
 リズが挨拶をするけど、どうやらミカエル達は辺境伯様の屋敷の中にいるようだ。

「あら、初めての人もいるわね」
「あ、はい。私は教皇国のシスターをしております、アレクサと申します」
「ご丁寧にどうもありがとうね。私はイザベラ、辺境伯家の夫人ですわ」
「えっ?」

 あ、今度はイザベラ様の返答を聞いて、アレクサさんが固まってしまった。
 そういえば、僕の両隣の屋敷の事を話してなかった。

「アレクサさん。僕の屋敷のお隣が、この地を治める辺境伯様の屋敷で、反対がジンさんの屋敷です」
「そ、そうだったんですね。びっくりしました」
「いえいえ、僕も説明不足でした」

 アレクサさんは、僕の説明を聞いて落ち着きを取り戻した。
 その間に、馬車は辺境伯家の馬丁がやってきて馬も含めて辺境伯家の馬房に連れて行ってくれました。
 今の所、馬も馬車も特に問題ないそうです。
 
「陛下には特に問題ないって連絡したから、王城には向かわなくて良いわ」
「ティナおばあさま、ありがとうございます」

 ティナおばあさまの言う通り、確かに今日は少々オオカミとかが現れた程度で本当に何もなかったもんな。
 僕達は、そのまま辺境伯様の屋敷に入ります。
 
「「おかーり!」」
「ただいま!」

 辺境伯様の屋敷に入ると、直ぐにミカエルとブリッドが駆けつけてきました。
 そのままリズが、ミカエルとブリッドを抱きしめます。
 すると、ブリッドがアレクサさんに気がついた様です。

「あ、アレちゃ!」
「ミカもあった!」
「覚えてくれて嬉しいですわ」

 どうもブリッドとアレクサさんは顔見知りの様で、ミカエルも新教皇の戴冠式で顔を合わせている。
 というか、ミカエルもよく覚えていたなあ。

「にーに、ごはん!」
「おなべ!」
「皆でお鍋なんだね」
「「あい!」」

 そして、ミカエルとブリッドは僕の手を繫いて食堂に案内し始めた。
 皆でワイワイと食べるお鍋は、ミカエル達に限らず皆大好きだよね。

「おお、丁度いいタイミングだな。皆、席に着くがいい」

 食堂に入ると、辺境伯様も孫であるステラちゃんとオリバーちゃんを膝に乗せて挨拶をしてくれた。
 
「へ、辺境伯様、初めまして。教皇国でシスターをしているアレクサと申します」
「おお、ご丁寧にどうも。私はホーエンハイム辺境伯のヘンリーだ。ここは公式の場ではない。気楽にしてくれ」
「は、はい」

 アレクサさんは緊張しながら辺境伯様に挨拶をしていたけど、今の辺境伯様は孫を抱っこしてデレデレになっている。
 そして、ジェイド様とソフィアさんが他の赤ちゃん達を連れていた。
 侍従のお姉さんもいて、お姉さん達の子どもであるメイちゃんとリラちゃんも一緒です。

「父がステラとオリバーを離さないのでな。代わりに私がグランドとガリバーを、ソフィアがレイカとガイルの面倒を見ていたのだよ」
「流石は侍従の子どもなのか、メイちゃんとリラちゃんもお母さんの真似をして赤ちゃんの面倒を見ようとしていたわ」

 まあ、メイちゃんとリラちゃんもまだ二歳になっていないし、お手伝いといいつつおままごとの延長線上だろうね。
 そして、沢山の赤ちゃんや子どもを見て、アレクサさんは目を輝かせます。

「わあ、とっても可愛いですね」
「レイナさんとカミラさんとルリアンさんとナンシーさんの赤ちゃんです。ソフィアさんの赤ちゃんや侍従のお姉さんの子どももいるので、僕達が教皇国に行っている間は纏めて面倒を見てもらっています」
「そうなんですね」

 アレクサさんは赤ちゃんが好きなのか、ステラちゃんを抱いてとても上機嫌だ。
 ステラちゃんも、嫌がらずにアレクサさんに抱っこされています。

「それじゃ、食事としますか」
「「「「あい!」」」」

 辺境伯様の合図に、ミカエルとブリッドとメイちゃんとリラちゃんが元気よく答えます。
 お鍋の時は、皆でワイワイと食べるのが基本です。
 アレクサさんも、子ども達を食べさせる名目で一緒に食べます。

「とても感じの良い人ですね」
「そうですわね。それに頑張り屋さんなんですよ」
「あらあら、それはそれは素晴らしいですわ」

 イザベラ様とティナおばあさまが、アレクサさんに聞こえない音量で何か話をしています。
 二人ともニヤニヤとしているのが気にかかりますが、僕は怖くて聞くことができません。
 
「お兄ちゃん、お鍋美味しいね」
「アレク様、こっちも美味しいですよ」

 現実にはリズとサンディの相手をしているので、それどころではありません。
 まあ悪い事ではなさそうなので、ここはスルーしておきます。
 こうして、皆で楽しく夕食を食べました。
 明日はどんな旅になるのか、とても楽しみです。
しおりを挟む
感想 235

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜

三月べに
ファンタジー
 令嬢に転生してよかった〜!!!  素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。  少女漫画や小説大好き人間だった前世。  転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。  そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが? 【連載再開しました! 二章 冒険編。】

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。