転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
212 / 943
第十八章 少し平和な日々

三百七十一話 ジンさんの跡取りが誕生

しおりを挟む
 今日は謁見だけで午後は何もない予定だ。
 そう、予定がないだけで突然予定が入ってくる事がある。
 食後の紅茶を飲んでいた時、辺境伯様のタブレット型魔導具に連絡があった様だ。

「何々? ジェイドからの連絡だな。お、レイナとカミラが産気づいたそうだ」
「「「え!」」」

 中々凄い情報が、辺境伯様からもたらされた。
 ジンさんも勿論だけど、レイナさんの父親である商務卿とカミラさんの祖父である宰相もかなり驚いた様だ。
 あ、商務卿はオロオロし始めたぞ。

「ふむ。午後は特に議題もないし、宰相と商務卿も二人の様子を見に行ってやるが良い」
「「ご配慮頂き、感謝します」」

 特にオロオロしている商務卿を見て、陛下は宰相と商務卿に対して午後の仕事はなしと言っていた。
 とはいえ、少し笑っている陛下も王妃様とアリア様が妊娠した時はオロオロとしていなかったっけ?
 とりあえず、僕は辺境伯様とジンさんと赤ちゃんが見たいルーカスお兄様達を先に屋敷に送って、一度王都の屋敷に戻って準備をする宰相と商務卿を迎えてから、改めて屋敷に向かった。

「「「オロオロオロオロ」」」
「お父様もお兄様達も、少しは落ち着きなさい。不審者の様ですよ」

 うん、僕もレイナさんの妹さんの意見に賛成だ。
 宰相は家族と共にデーンと構えているけど、商務卿は息子二人と共に出産用の部屋の前でオロオロとしていた。
 三人は、口からもオロオロと言うほど落ち着きがなかった。

「ジンさんは落ち着いていますね」
「ここの所、出産する所に遭遇する事が多かったからな。男は待つしかないと分かっているし」

 とはいえ、ジンさんも拳をぎゅっと握りしめていた。
 やっぱり、心の中は不安で堪らないよね。

「まあ俺も不安だが、あれを見ると逆に落ち着いたぞ」
「「「オロオロ……」」」
「僕もそう思います」

 未だにオロオロと態度と言葉で示している商務卿と二人の息子のお陰で、皆ある程度落ち着きを取り戻していた。
 ある意味、商務卿のファインプレーになっています。

 そして、おやつの時間になって皆でお茶を飲んでいる時だった。

「「オギャー!」」
「「「産まれた!」」」

 元気な泣き声が、レイナさんとカミラさんのいる出産用の部屋から聞こえてきた。
 ゾンビの様な顔になっていた商務卿と息子が、一気に息を吹き返した。
 そして、出産用の部屋に駆けて行きガチャガチャと扉を開けようとするが、扉は鍵がかかっているので閉まっていた。
 商務卿の様な人がいるから、部屋に誰も入らない様に鍵を閉めているのですよ。

 かちゃ、ドゴン!

「「「うご!」」」

 その時、扉の鍵が開いて扉が勢いよく開いた。
 扉の真正面に構えていた商務卿と二人の息子の顔面に扉が勢いよく当たり、顔面を押さえて廊下にうずくまっていた。

「あなた、何やっているんですか? 大体理由は分かりますけど」

 どうも扉を開けたのは商務卿夫人で、廊下に転がっている主人と息子を馬鹿な目で見ていた。

「お兄ちゃん、赤ちゃんが産まれたよ! 元気な男の子と女の子だよ!」
「そうか、良かった」

 ジンさんは、妹のルルーさんから赤ちゃんが無事に産まれたと聞いてほっとしていた。
 僕達はジンさんと共に部屋に入っていった。

「レイナさんの赤ちゃんが女の子で、カミラさんの赤ちゃんが男の子だよ」
「二人とも、俺の髪色にそっくりだな」

 産まれた赤ちゃんは、ジンさんにそっくりの燃える様な赤い髪だった。
 どこからどう見ても、ジンさんの赤ちゃんだって一目でわかるぞ。

「レイナ、カミラ、お疲れ様」
「はは、流石に疲れたよ。赤ちゃんを産むって、こんなにも大変なのね」
「ナンシーとルリアンが安産だったから、完全に油断していたわよ」

 少し難産だったのか、レイナさんとカミラさんはだいぶ体力を消費していた。
 回復魔法で治る訳ではないし、ご飯を食べて体力を回復してもらわないとね。
 
「可愛いね、じーじでしゅよ」
「お父様、キモい」

 そしてレイナさんの赤ちゃんが女の子とあってか、商務卿はいきなり孫馬鹿になっていた。
 レイナさんの妹さんから辛辣な言葉を浴びせられても、全く意に返さない。
 うーん、こりゃ暫く商務卿は使い物にならなさそうだぞ。

「ほほほ、これは元気な男の子じゃな。立派な跡取りじゃ」
「おじいちゃん。ジンは名誉貴族だから、継承権は無いよ」

 宰相がカミラさんの赤ちゃんの頭を撫でているけど、宰相の言葉にカミラさんが突っ込んでいる。
 そうか、レイナさんとカミラさんは、ジンさんが子爵になった事を知らないんだ。

「カミラさん、ジンさんは今日の謁見で子爵になったんだよ」
「そうなの? まあ、そこそこ功績は溜まっていたからね」

 カミラさんは、あっさりとジンさんが子爵になった事を受け入れていた。
 レイナさんも特に驚きは無かった。
 この辺は、二人とも貴族令嬢ってのもあるだろう。

「お兄ちゃんが子爵様? ええー!」

 対してジンさんの妹のリリーさんは、ジンさんが子爵になった事にかなり驚いていた。
 名誉貴族になっただけでも驚いたらしいが、本物の貴族になったので驚きが倍速だ。

「となると、リリーも貴族令嬢としての勉強をしないとなりませんわね」
「ええー!」
「「「ははは」」」

 そして、レイナさんの妹の一言で、リリーさんも貴族令嬢としての勉強が決まってしまった。
 そんなリリーさんの慌てる様子を見て、周りの人も思わず笑っています。
 いずれにせよ、今日はジンさんにとって嬉しい事が沢山あった日になりそうです。
しおりを挟む
感想 237

あなたにおすすめの小説

元捨て子の新米王子様、今日もお仕事頑張ります!

藤なごみ
ファンタジー
簡易説明 転生前も転生後も捨て子として育てられた少年が、大きく成長する物語です 詳細説明 生まれた直後に病院に遺棄されるという運命を背負った少年は、様々な境遇の子どもが集まった孤児院で成長していった。 そして孤児院を退寮後に働いていたのだが、本人が気が付かないうちに就寝中に病気で亡くなってしまいす。 そして再び少年が目を覚ますと、前世の記憶を持ったまま全く別の世界で新たな生を受ける事に。 しかし、ここでも再び少年は生後直ぐに遺棄される運命を辿って行く事になります。 赤ん坊となった少年は、果たして家族と再会する事が出来るのか。 色々な視点が出てきて読みにくいと思いますがご了承ください。 家族の絆、血のつながりのある絆、血のつながらない絆とかを書いて行く予定です。 ※小説家になろう様でも投稿しております

追放された令嬢は愛し子になりました。

豆狸
恋愛
「婚約破棄した上に冤罪で追放して悪かった! だが私は魅了から解放された。そなたを王妃に迎えよう。だから国へ戻ってきて助けてくれ!」 「……国王陛下が頭を下げてはいけませんわ。どうかお顔を上げてください」 「おお!」 顔を上げた元婚約者の頬に、私は全体重をかけた右の拳を叩き込んだ。 なろう様でも公開中です。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。