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第十七章 教皇国編
三百六十三話 まさかの婚約発表
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「はあ、やっと落ち着いた」
ヤークス教皇の取りなしてようやく剣を下ろす事ができたジンさんは、精神的な疲れもあったのかグッタリとしていた。
剣を掲げていたのは三分位だけど、その間は周りの人が聖剣を祈る事をやめなかった。
まあ、神々しい光が刀身から溢れたら、教皇国の人は聖なる剣だと信仰の対象になるよね。
そして、ヤークス教皇は集まった人にまだ何かを発表する様だ。
「最後に、聖女様とブンデスランド王国王太子ルーカス殿下との婚約を発表する」
「「「はっ?」」」
「「「うおー!」」」
えーっと、僕も全く聞いてない話なんですけど。
ルーシーお姉様とエレノアとリズも、二人の婚約の話を聞いていなかった様だ。
ルーカスお兄様とアイビー様とカレン様は、流石に話を聞いているのか平然とした表情だった。
歓声が上がる中、カレン様がヤークス教皇の側に移動した。
「皆様、突然の発表となりご迷惑をおかけしました。私はこの度のブンデスランド王国からのお話を、喜んでお受けしようと思っております。しかし、私もルーカス殿下もまだ未成年でおります。また、私も次代の聖女を育てるという使命が御座います。残された期間、私は精一杯努めを果たしたいと思っております」
「わー、聖女様!」
「聖女様、万歳!」
カレン様の決意に、多くの人が拍手を送っていた。
確かルーカスお兄様とアイビー様の結婚式は二人が成人してからだから、カレン様との結婚式も同じタイミングになるかもしれない。
「これにて、就任式の一切を終了します。皆様、お集まり頂き有難う御座います」
式典はこれで完了だけど、色々と確認しないといけない事がある。
なので、僕達は大教会に戻って、迎賓館の応接室に集まります。
どうせだというので、孤児院の子どもやシスターも一緒です。
「お兄様! 私、婚約って話聞いていないんだけど!」
「えっと、それは……」
口火を切ったのは、ルーシーお姉様。
ルーカスお兄様とカレン様の結婚に反対ではなく、婚約の話を聞かされていなかった事に怒っている様だ。
どう答えようかとルーカスお兄様が悩んでいた所に、ティナおばあさまが手を差し伸べた。
「ルーシー、私が説明するわ。先ずは国家間の話だから、関係者以外には漏らせなかったのよ。別に、ルーシーを蔑ろにした訳ではないわ」
「うん」
「教皇国側に話をしたのも、私達が皇都に着いてからなのよ。勿論、アレク君やリズちゃんも知らないのよ」
「うん……」
あ、だから教皇国に着いての会議は全てティナおばあさまとジンさんが出ていたのか。
二人の婚約の情報が漏れるのを、極力抑える様にしたのか。
こういう風にティナおばあさまに言われてしまうと、ルーシーお姉様は何も言えなくなってしまう。
「分かりました。でも、折角の良い話なのにお祝いできなかったのは寂しいです」
「改めてお祝いをしましょう。大々的ではなくて、身内でやりましょうね」
「そうですね。そうしましょう」
どうも未来の王妃になる為の勉強などもあるというので、カレン様は定期的に王城に来るという。
カレン様が来たタイミングで、改めてお祝いをする事になった。
カレン様の件はこれでいいとして、もう一つ問題があった。
「ミカエルちゃんは、ブリットちゃんの事が好き?」
「すきー!」
「ブリットちゃんはミカエルちゃんの事が好き?」
「すきー!」
ティナおばあさまが念の為といった感じで、ミカエルとブリットに話を聞いていた。
よっぽど馬が合うのか、今も二人は椅子に座りながら手を繋いでいる。
「ミカエルちゃん。ブリットちゃんはね、教皇国の孤児院で暮らしていたから簡単には王国に来られないのよ」
「えー」
「だから、今はたまに会う位にして、おばあちゃんがブリットちゃんが王国に来れる様にするからね」
「うー、あい」
ミカエルは歳の割に聞き分けの良い子だから、ちゃんと理由を話すと納得してくれる。
問題は、どうやってブリットを王国に連れてくるかだ。
「ほほほ。なら、勇敢なる天使様の下で聖女としての訓練をするという事にすれば良かろう。双翼の天使様に導くもの様も側におられる。それに、聖女候補者は意外といるのじゃよ」
ここで出てきたのが、前教皇からの提案だ。
確かにこの方法なら、教皇国内でも文句は出てこないだろう。
「ただ、ティナ様の言う通りで、ブリットが王国に行くのは恐らく来年になるかと思われます。他の聖女候補者の成長なども確認しないとなりませんので」
「すみません、お手数をおかけします」
「ははは、なんのなんの。我が国が受けた大恩に比べれば、簡単な事ですよ」
という事で、ブリットが王国に来るのは早くても来年となった。
「ミカエルちゃん、良かったね。ミカエルちゃんもいっぱい勉強しないとね」
「うん! ミカ、がんばゆ!」
来年になったらブリットと一緒に暮らせると分かったので、ミカエルは機嫌がかなり良くなった。
こうして、二つの縁談は無事に決着がついたのだった。
ヤークス教皇の取りなしてようやく剣を下ろす事ができたジンさんは、精神的な疲れもあったのかグッタリとしていた。
剣を掲げていたのは三分位だけど、その間は周りの人が聖剣を祈る事をやめなかった。
まあ、神々しい光が刀身から溢れたら、教皇国の人は聖なる剣だと信仰の対象になるよね。
そして、ヤークス教皇は集まった人にまだ何かを発表する様だ。
「最後に、聖女様とブンデスランド王国王太子ルーカス殿下との婚約を発表する」
「「「はっ?」」」
「「「うおー!」」」
えーっと、僕も全く聞いてない話なんですけど。
ルーシーお姉様とエレノアとリズも、二人の婚約の話を聞いていなかった様だ。
ルーカスお兄様とアイビー様とカレン様は、流石に話を聞いているのか平然とした表情だった。
歓声が上がる中、カレン様がヤークス教皇の側に移動した。
「皆様、突然の発表となりご迷惑をおかけしました。私はこの度のブンデスランド王国からのお話を、喜んでお受けしようと思っております。しかし、私もルーカス殿下もまだ未成年でおります。また、私も次代の聖女を育てるという使命が御座います。残された期間、私は精一杯努めを果たしたいと思っております」
「わー、聖女様!」
「聖女様、万歳!」
カレン様の決意に、多くの人が拍手を送っていた。
確かルーカスお兄様とアイビー様の結婚式は二人が成人してからだから、カレン様との結婚式も同じタイミングになるかもしれない。
「これにて、就任式の一切を終了します。皆様、お集まり頂き有難う御座います」
式典はこれで完了だけど、色々と確認しないといけない事がある。
なので、僕達は大教会に戻って、迎賓館の応接室に集まります。
どうせだというので、孤児院の子どもやシスターも一緒です。
「お兄様! 私、婚約って話聞いていないんだけど!」
「えっと、それは……」
口火を切ったのは、ルーシーお姉様。
ルーカスお兄様とカレン様の結婚に反対ではなく、婚約の話を聞かされていなかった事に怒っている様だ。
どう答えようかとルーカスお兄様が悩んでいた所に、ティナおばあさまが手を差し伸べた。
「ルーシー、私が説明するわ。先ずは国家間の話だから、関係者以外には漏らせなかったのよ。別に、ルーシーを蔑ろにした訳ではないわ」
「うん」
「教皇国側に話をしたのも、私達が皇都に着いてからなのよ。勿論、アレク君やリズちゃんも知らないのよ」
「うん……」
あ、だから教皇国に着いての会議は全てティナおばあさまとジンさんが出ていたのか。
二人の婚約の情報が漏れるのを、極力抑える様にしたのか。
こういう風にティナおばあさまに言われてしまうと、ルーシーお姉様は何も言えなくなってしまう。
「分かりました。でも、折角の良い話なのにお祝いできなかったのは寂しいです」
「改めてお祝いをしましょう。大々的ではなくて、身内でやりましょうね」
「そうですね。そうしましょう」
どうも未来の王妃になる為の勉強などもあるというので、カレン様は定期的に王城に来るという。
カレン様が来たタイミングで、改めてお祝いをする事になった。
カレン様の件はこれでいいとして、もう一つ問題があった。
「ミカエルちゃんは、ブリットちゃんの事が好き?」
「すきー!」
「ブリットちゃんはミカエルちゃんの事が好き?」
「すきー!」
ティナおばあさまが念の為といった感じで、ミカエルとブリットに話を聞いていた。
よっぽど馬が合うのか、今も二人は椅子に座りながら手を繋いでいる。
「ミカエルちゃん。ブリットちゃんはね、教皇国の孤児院で暮らしていたから簡単には王国に来られないのよ」
「えー」
「だから、今はたまに会う位にして、おばあちゃんがブリットちゃんが王国に来れる様にするからね」
「うー、あい」
ミカエルは歳の割に聞き分けの良い子だから、ちゃんと理由を話すと納得してくれる。
問題は、どうやってブリットを王国に連れてくるかだ。
「ほほほ。なら、勇敢なる天使様の下で聖女としての訓練をするという事にすれば良かろう。双翼の天使様に導くもの様も側におられる。それに、聖女候補者は意外といるのじゃよ」
ここで出てきたのが、前教皇からの提案だ。
確かにこの方法なら、教皇国内でも文句は出てこないだろう。
「ただ、ティナ様の言う通りで、ブリットが王国に行くのは恐らく来年になるかと思われます。他の聖女候補者の成長なども確認しないとなりませんので」
「すみません、お手数をおかけします」
「ははは、なんのなんの。我が国が受けた大恩に比べれば、簡単な事ですよ」
という事で、ブリットが王国に来るのは早くても来年となった。
「ミカエルちゃん、良かったね。ミカエルちゃんもいっぱい勉強しないとね」
「うん! ミカ、がんばゆ!」
来年になったらブリットと一緒に暮らせると分かったので、ミカエルは機嫌がかなり良くなった。
こうして、二つの縁談は無事に決着がついたのだった。
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