上 下
228 / 890
第十七章 教皇国編

三百五十四話 悪の親玉と遭遇

しおりを挟む
 僕達が大教会に足を踏み入れると、祭壇付近に教皇や枢機卿が縛られて座らされていた。
 教皇や枢機卿の周りを兵が取り囲み、更にはその兵の後ろに豚みたいな教会関係者がいた。
 一番豪華な衣装を着ているのが、例のアホスタイル枢機卿なのだろう。
 鼻息荒く、僕達の方を指差していた。

「おーお、ここまでやってくるとは流石だな。流石は双翼の天使様御一行といった所だな」

 うーん、アホスタイル枢機卿はオークよりも更に太った醜い姿で、魔物がブヒブヒと喋っているとしか見えないぞ。

「お兄ちゃん、あの人がアホスタイル枢機卿?」
「そうだね。僕の鑑定でも、間違いなくアホスタイル枢機卿ってでているよ。悪に魂を売り渡した者とも出ているね」
「ふーん、そうなんだ。オークよりも太っているから、魔物が喋っているかと思ったよ」
「「「ぶふぉ!」」」

 リズが僕が思っている事を声に出したので、僕達の周りにいる大人がお腹を抱えて爆笑を堪える様に笑っている。
 そんな僕達の余裕のある姿に、オーク枢機卿もといアホスタイル枢機卿の怒りに火がついた様だ。
 
「おいこら、余裕ぶっているのも今のうちだけだ。人質がこちらの手にある事を分かっているのか! 一匹やっちまえ!」

 と、ここでアホスタイル枢機卿の指示を受けた兵が若いシスターの髪の毛を掴んで剣を振り下ろした。

 すか。

「えっ?」

 剣は若いシスターの首を切ろうとしていたのだが、突然シスターの姿が消えて剣は空振りしてしまった。
 兵は何が何だかわからない様だ。

「はあ、僕達が何もしないであんな馬鹿な事を話していないですよ」
「あれ?」

 切られる寸前だったシスターは僕達の側に来ていて、何が何だか分からない様子だった。
 そのシスターの側では、スラちゃんがアホスタイル枢機卿を挑発する様にクネクネと謎の踊りをしていた。

 シュンシュンシュンシュン。

「はあ!」
「「「えっ!」」」
「ぐっはあ!」

 そして、スラちゃんは人質になっていた全ての人を連れてきた。
 いくらスラちゃんのショートワープとはいえ、近距離でも一回に連れてこれるのは一人が限度だ。
 なら、素早く次の人をショートワープで連れてくれば良い。
 アホスタイル枢機卿は突然目の前から全ての人質が消えて、目玉が飛び出しそうな程驚いている。
 対して、助けられた人も突然僕達の側に現れたので、状況を把握できていない様だ。
 更にスラちゃんは、アホスタイル枢機卿のお尻に触手を突き刺してからこちらに戻ってきた。
 スラちゃん、最近悪人のお尻に触手を突き刺す事が多いなあ。
 スラちゃんは、全ての人質をこちらに連れてきた所で、またもや謎のクネクネダンスをプリンと共に行なってアホスタイル枢機卿達を挑発していた。

「教皇様、ご無事ですか?」
「ああ、ありがとう。流石は皆様方だ」

 その間に、拘束されていた人の縄をジンさんや近衛騎士が切っていく。
 リズも回復魔法をかけて治療しているが、どうも複数の人に殴られた痕があった。
 特に教皇様とヤークス枢機卿はボコボコにされていた。
 もしかしたら、一緒に捕まった若いシスターを庇ったのかもしれない。

「アホスタイル枢機卿、これで形勢逆転ね」
「ぐっ」

 僕達が大教会に足を踏み入れて僅か数分。
 全ての人質も取り返して、完全に状況は変わった。
 ティナおばあさまは剣をすらりと抜いて、剣先をお尻を押さえているアホスタイル枢機卿に向けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜

三月べに
ファンタジー
 令嬢に転生してよかった〜!!!  素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。  少女漫画や小説大好き人間だった前世。  転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。  そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが? 【連載再開しました! 二章 冒険編。】

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。

リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。 そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。 そして予告なしに転生。 ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。 そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、 赤い鳥を仲間にし、、、 冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!? スキルが何でも料理に没頭します! 超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。 合成語多いかも 話の単位は「食」 3月18日 投稿(一食目、二食目) 3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。