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第十七章 教皇国編

三百四十話 炊き出しの準備

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 皇都二日目の朝。
 僕達は早起きして、いつもの訓練をした後に朝食を食べます。
 
「いやあ、こんな豪勢な所だと逆に寝れないな」

 僕とリズはどこでも寝れるけど、ジンさんはそうではなかった様だ。
 少し眠たそうな表情で、朝食を食べていた。
 レイナさんとカミラさんだったら、貴族令嬢でもあるし豪華な所でも寝られそうだよね。

 朝食も終わって王城にカレン様を迎えに行ったのだけど、同行人がもう一人。

「教皇国でも必要とあればお手伝いしますわ。治療なら、私も少しできますから」

 アイビー様も皇都での炊き出しに参加する事に。
 カレン様とアイビー様は仲が良いので、ちょうど良いかもね。
 ルーカスお兄様達は、今日は陛下について色々とお仕事があるそうです。

「私もお手伝いします」
「ミカも!」

 人手はあって問題ないので、サンディとミカエルも炊き出しに同行する事に。
 ミカエルは炊き出しのマスコット的な存在かな?

「気をつけて行ってくるんだよ」
「「「はーい」」」

 ティナおばあさまに見送られて、僕達は炊き出しをする所に向かいます。
 いつも教会で炊き出しをしている所があるというので、馬車に乗って現地に向かいます。
 流石にというか、近衛騎士だけでなく聖騎士もガッチリと僕達の護衛につきます。

「ミカちゃん、お姉さんに囲まれていいね」
「えへへ」

 馬車の中で、ミカエルはカレン様とアイビー様に挟まれて座っています。
 時折、カレン様とアイビー様に抱っこをしてもらって、ミカエルはとてもご機嫌です。
 そして馬車の一角では、スラちゃんとプリンにアマリリスとヒカリが何やら従魔会談をしています。
 もしかしたら、今日の炊き出しの護衛の事を話しているのかな?
 そんな事を思いながら、馬車は皇都内にある小さな教会に到着。
 僕達はカレン様の後をついて行きながら、小さな教会の中に入って行きます。

「おお、聖女様。賊に襲われて重傷と聞きましたが、ご無事で何よりです」
「司祭様にもご心配をおかけしました。この通り無事に元気になりました」

 中年のハゲている司祭が、カレン様の手をとって号泣している。
 周りにいるシスターも、ハンカチで涙を押さえていた。
 カレン様が無事で、本当に嬉しいのだろうね。
 すると、一人の少女がカレン様の近くに寄ってきた。

「カレン様、ご無事で何よりです」
「シャーリー、有難う。ところで、他の二人はどうしたの?」
「実は懐古派の息がかかっている事が分かり、取り調べを受けております」
「そうなのね。残念だけど、仕方ないわね」

 そう言いながら、カレン様は少女をこちらに連れてきた。
 ルーシーお姉様と同じくらいの年齢で、緑っぽいウェーブのかかった肩までの髪をしている。
 うーん、どこかで見た顔だなあ。

「皆様、この子は聖女見習いのシャーリーと言います。ワーロード司祭の娘でもあるのですよ」
「シャーリーです。皆様、よろしくお願いします」
「えっ!」

 アイビー様は何の事だか分からない様だけど、僕達は驚きだよ。
 ワーロード司祭にこんな大きな子どもがいたなんて。
 確かに髪の毛の色が、ワーロード司祭とそっくりだ。

「この子は聖女見習いで、他にも二人の候補者がいたのですが」
「懐古派の影響下にあった人なんですね」
「小さい子にまでこんな事をするなんて、本当に酷い事です」

 カレン様も悔しいのか、唇を噛み締めている。
 操り人形の聖女を作るつもりだったんだね。
 ともあれ、炊き出しと治療を行う事にしよう。
 そして今日の治療は特別バージョンです。

「ふふふ、これだけの患者を診ることができるとは。腕がなりますな」
「沢山の情報が取れますな」

 毒飴の時にも活躍した研究者が、今回の炊き出し時の治療に参加する事になった。
 皇都の薬師も参加して、指導するという名目だけどね。
 教会前で炊き出しの準備を進めていると、意外な人が顔を出した。

「どう? 準備は順調かな?」
「ワーロード司祭」
「お母さん!」
「うふふ、娘の事が気になって様子を見に来たのよ」

 とてもじゃないけど、大きな子どもがいるとは全く思えないワーロード司祭。
 でも、確かに近くで見るとシャーリーさんと髪の毛や顔つきがそっくりだなあ。

「ワーロード司祭様、他の候補者の件を聞きました」
「彼女達は真面目に訓練していたのに、後ろ盾になっていた人物に問題があったのよ」
「中々難しい問題ですね。候補者自身は問題ないのに」
「そうなのよ。ただ、聖女見習いは続けて訓練をする事になったわ。優秀な人材には間違いないからね」

 きっとワーロード司祭が連れてきたカレン様とシャーリーさんが抱き合っている二人の少女が、聖女候補者だったんだろうね。
 教皇国もキチンと配慮している様だし、きっと大丈夫だろう。
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