転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ

文字の大きさ
上 下
174 / 939
第十七章 教皇国編

三百三十三話 ジンさんの二つ名

しおりを挟む
 聖騎士が改めて馬の調子をみて問題ないと判断したので、僕達は皇都に向けて出発します。
 王国の国境からだと、四日目に皇都に着く予定です。
 僕とリズとティナおばあさまにジンさん。
 サイファ枢機卿も一緒です。
 御者役も含めて近衛騎士が八人いて、更には聖騎士も十人つきます。
 うーん、中々の大人数だな。

「何で俺が馬車に乗っているんだ?」
「ジン殿も教皇国からの来賓になりますので、アレク殿下やリズ殿下と同じ扱いになります。ティナ殿下はお二人の保護者となられます」
「俺、御者で良いんだけど……」

 馬車に乗る事に居心地が悪いのかジンさんはサイファ枢機卿に質問していたが、サイファ枢機卿はジンさんは馬車に乗って当然だと言い切っている。
 そして、リズよ。
 スラちゃんとプリンと一緒に自分も外に出るとアピールしないの。

 ガラガラと僕達を乗せた馬車は、教皇国の街道を進んで行きます。
 今朝の聖騎士の馬に対する事を考えると、きっと何処かで懐古派が何かを仕掛けてくるはず。
 皆で周囲を警戒している。

「ウルフが集団で現れたぞ!」
「迎撃しろ!」

 僕達の馬車の前に現れたのはウルフの集団。
 でも集団とはいえ、二十頭位だ。
 馬車の窓からスラちゃんとプリンがぴょんと飛び降りて、近衛騎士と聖騎士と共にあっという間にウルフを倒した。
 うーん、このウルフは普通に街道近くの森から現れたっぽいなあ。
 スラちゃんとプリンも、全く手応えがなくてつまらない様だ。

「また、ウルフが現れたぞ」
「直ぐに倒すぞ」

 その後も何回かウルフの集団が僕達の乗った馬車を襲ってきたけど、辺境伯領の森に現れるウルフよりも弱い。
 終いには手ごたえがないとスラちゃんとプリンも討伐に出る事がなくなり、血抜きだけ手伝っていた。
 そして、あっという間に今日僕達が宿泊する街に到着。
 
「うーん、結局襲撃はなかったですね」
「まだ、何かあると行けないから、警戒はするぞ」

 呆気なく街に着いたけど、ジンさんの一言で僕達は気を引き締めます。
 先ずはこの街の教会に向かいます。
 ここも教会関係者がトップを務めているそうです。
 案内されたのは普通の教会だけど、教会の中に入ったら度肝を抜かれた。

「きゃー、双翼の天使様よ」
「とっても可愛いわ」
「となると、あの方が華の騎士様ね」
「もう一人の方が導く者なのですね」
「「わわ!」」

 教会の中にはシスターに加えて街の人も沢山いて、僕達はあっという間に囲まれてしまった。
 でも、僕とリズの双翼の天使とティナおばあさまの華の騎士という二つ名は分かるけど、導く者って一体誰の事だ?
 すると、教会の偉い人っぽい老人が、サイファ枢機卿に話をしてきた。

「ほほほ。サイファ枢機卿、これは凄い人気ですな」
「これはこれはアベイル司祭。皆様にはオーラがありますから、市民の方にただ者ではないと直ぐ分かりましょう」

 どう見てもヨボヨボの白髪のお爺さんだけど、この人が司祭様か。
 先ずは挨拶をしないと。

「司祭様、初めてお目にかかります。ブンデスランド王国のアレクサンダーと申します。どうぞアレクとお呼びください。本日は皇都への旅に際し、宿泊場所を提供頂き感謝申し上げます」
「おお、幼いのにその様な立派な口上を述べられるとは。儂は深く感動しております。この街の司祭をしておりますアベイルと申します。皆様に、神のご加護があります様に」
「「「素晴らしい、流石は双翼の天使様だ」」」
「あの、皆さん立ち上がって下さい。膝をつかないで下さい!」

 僕が挨拶をしたら、アベイル司祭だけでなく教会内にいた人も僕達を取り囲んで膝をつきながら手を組んで祈り始めた。
 流石にこういうのは精神的にきついので、やめてもらわないと。
 お願いして何とか立ち上がったアベイル司祭に、さっき街の人が話をしていた導く者について聞いてみた。

「アベイル司祭様、先程街の方が言っていた導く者とは一体誰の事ですか?」
「そちらにおられますジン殿の事になります。双翼の天使様に次期ブンデスランド国王陛下を導き聖女様をお救いになられましたので、導く者という二つ名が付けられました」
「え!」

 アベイル司祭の言う事に間違いはない。
 確かにジンさんは僕とリズの冒険者の師匠だし、ルーカスお兄様にも指示ができる。
 よく考えると、一冒険者なのにこれって凄い事だよね。

「ジン、良かったじゃない。Aランク冒険者なのに、ジンに二つ名がないのが気になっていたんだよね」
「ティナ様、勘弁して下さい。俺にそんな大層な二つ名はダメですよ」

 あ、ティナおばあさまがジンさんの事をからかっている。
 でも、ジンさんは凄い冒険者だったのに、二つ名がなかったのは不思議だよね。
 そして、こういった事に食いつきそうなリズとスラちゃんとプリンはというと、

「はい、これで大丈夫だよ!」
「おお、ありがとうございます」

 教会内でいつの間にか怪我人や病気の治療を始めていた。
 治療を受けた人々は、リズとスラちゃんにとても感謝していた。
 悪い事をしているわけではないし、好きにやらせておこう。

「ははは、中々の二つ名だ。ジンにピッタリではないか」
「陛下、勘弁して下さいよ」
「良いではないか。二つ名の由来に間違ってはおらぬ」

 教会での色々な事があって後、宿に入って夕食を食べてから王城で今日の道中の報告を行った。
 朝の聖騎士の乗る馬の件は教皇国内で対応してもらう事で収まったが、ジンさんの二つ名の事で盛り上がった。
 ジンさんは、がっくりと項垂れていたけど。

「ははは、凄い二つ名だな!」
「間違ってはないけど、ははは!」

 そして僕の屋敷に戻ってレイナさんとカミラさんにもジンさんの話をしたら、話を聞いたレイナさんとカミラさんは大笑いしていた。
 陛下といいレイナさんとカミラさんといい、反応が凄いなあ。
 そしてジンさんの二つ名の件は、レイナさんとカミラさんを通じて辺境伯領に一気に広まったのだった。
しおりを挟む
感想 237

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。