上 下
148 / 890
第十五章 再びの貴族主義派の不正

二百七十三話 久々の冒険者活動

しおりを挟む
 今日は特にやる事も無いので、ちょっと久々の薬草採取です。
 いつもだったらレイナさんとかも一緒なのだけど、妊娠したのでお休みです。

「俺も冒険者活動は久々だなあ」
「護衛はやっていますけどね」
「あれを護衛と呼んで良いものなのか……」

 ジンさんも久々の冒険者活動で張り切っています。
 この前の帝国に行ったのも護衛の一種だったから、ちゃんと依頼料は払われています。
 まあ、ジンさんはお金を持っているから、お金は気にしない様だけどね。

「今日はエレノアとかもいないし、この人数ってのも久々ですね」
「王族が混じると、警備とか厳重にしないといけないからな」

 僕とリズも王族だけど、王族よりも冒険者歴の方が長いんだよね。
 なので、護衛抜きで冒険者だけで動くのも結構好きです。
 
「へえ、リズちゃんは小さいのにEランク冒険者なんだ」
「そうだよ。もう少してDランクに上がるんだ」

 今日は初心者の冒険者も一緒に活動していきます。
 昨年のこの時期には、あの冒険者のお姉さん達も初心者として一緒に参加したんだよね。
 今回参加する人は若い男性の三人組です。
 成人になったばかりで、地方からきたから僕達が王族ってのを知らないんだって。
 なので、僕達が王族っていうのはまだ言っていません。
 
「え、ジンさんってAランク冒険者ですか?」
「すげー! 冒険者の高みが目の前にいるよ!」

 新人冒険者にとって、Aランク冒険者のジンさんは英雄に近い存在で、ジンさんの事を羨望の眼差しで見ていた。
 しかし、ジンさんが新人冒険者に余計な事を言ってしまった。

「俺よりもアレクとリズ、それにスライム二匹の方が強いぞ」
「「「はっ?」」」

 そりゃそうだろう。
 今年六歳になる子どもと魔物の中では最弱と言われているスライムだ。
 Aランク冒険者に言われても、にわかには信じられないよね。
 新人冒険者は、僕とリズの事を疑念の目で見ていた。
 ちなみにサンディは、いつも薬草採取で一緒になるおばさんとおしゃべりしています。

「じゃあ、早速ウルフを倒そう!」

 ジンさんに煽られたわけでもないのに、リズとスラちゃんがとってもやる気になっています。
 という事で、薬草採取の現場に現れたウルフの群れを僕達で倒す事に。
 ウルフも良い食料が目の前にきたと思っているのか、とってもやる気になっています。

「じゃあ、やるか。行くよ、プリン!」

 バリバリ、バリバリ!

「「「ええ!」」」

 先ずは僕とプリンで先制の広範囲の電撃をウルフの群れに向けて放ちます。
 倒しちゃうといけないので痺れる程度に威力を抑えているけど、広範囲の魔法に新人冒険者はかなりびっくりした表情で僕とプリンを見ていた。

「とー!」
「「「あんな大きな武器を子どもが振り回している!」」」

 ウルフは僕とプリンの魔法でかろうじて立っている状態なので、リズとスラちゃんの振り回す剣に難なく倒されていく。
 サンディもレイピアを繰り出しているが、あくまでも子ども用のレイピアだ。
 リズのファルシオンとスラちゃんのロングソードは大人用だから子どもが振るうにはだいぶ大きいけど、二人とも身体強化を使って軽々と振るっているからなあ。

「どっせーい!」
「「「おばさんもすげー……」」

 おばさんも愛用のメイスをぶん回して、ウルフの頭を潰していく。
 おばさんはマロード男爵領で現れた魔獣にも立ち向かっていった実力者だから、新人冒険者が逆立ちしても勝てる相手ではない。
 どうも新人冒険者はただの街にいるおばさんって思っていた様で、メイスをぶん回す姿に動けなくなっていた。

「ほら、新人共もこっちにきな」
「血抜きのやり方を教えてやるよ」
「「「はい……」」」

 そして昨年も新人に対して行っていたジンさんとおばさんの血抜き講習です。
 新人冒険者もおばさんに本当にお尻を叩かれながら、恐る恐る血抜きを行っています。
 僕達にはスラちゃんとプリンがいるから、血抜きは本当に楽だよね。
 倒したウルフをスラちゃんのアイテムボックスにしまったら、いよいよ薬草採取の開始です。

「これが薬草だよ。薬草は丁寧に取るんだよ」
「「「へえ……」」」

 最近はすっかり新人冒険者の薬草採取の先生役となっているリズが、今日もスラちゃんと一緒になって新人冒険者に薬草採取のやり方を教えています。
 さっき僕達が派手にウルフを倒した事で、新人冒険者もリズの言うことを素直に聞いています。
 リズが教えている事はちゃんとした薬草採取の手順だから、ジンさんも特に口を出さないでいる。
 僕も周囲の警戒をしつつ、サンディとプリンと共に薬草を採っていきます。
 今日は久々にゆっくりしながらの薬草採取なので、普段よりも集中して薬草採取をすることができている。
 すると僕は、とある物を見つけた。

「あ、これってDランクに上がるための毒消し草だ。でも、この前も見つけたよなあ」

 僕の漏らした言葉を聞いたジンさんが、ランクアップについて教えてくれた。

「残念ながら同じ物を沢山集めてもランクは上がらないぞ。様々な物を採取したり、護衛や討伐をしないとランクは上がらない」
「僕達はまだまだって事ですね」
「そうだな。まあお前らは幼いのだから、焦る事はない」

 とは言え毒消し草は買取額も良いので、勿論採取をしておく。
 皆も順調に薬草が採れたので、予定通りに午前中で終了です。
 皆揃ってギルドに帰ります。

「薬草採取をやってみてどうだった?」
「たかが薬草って思っていたのですが、中々大変でした」
「周囲の警戒も良い勉強になりました」
「俺、血抜きは初めてだったので、とても役に立ちました」

 ジンさんが新人冒険者に色々と感想を聞いているけど、薬草採取ってそう甘くないよね。
 獣も出るし、警戒する事が沢山あるよ。

「あーあ、毒消し草だけじゃダメだったよ」
「仕方ないよ。別の指定された物をとらないとね」

 リズも毒消し草を見つけていたが、結局は僕と同じ回答だった。
 サンディもまだまだランク上げる為には依頼をこなさないといけないし、僕達のランクアップの道のりはまだ険しそうだった、
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜

三月べに
ファンタジー
 令嬢に転生してよかった〜!!!  素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。  少女漫画や小説大好き人間だった前世。  転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。  そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが? 【連載再開しました! 二章 冒険編。】

せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。

リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。 そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。 そして予告なしに転生。 ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。 そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、 赤い鳥を仲間にし、、、 冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!? スキルが何でも料理に没頭します! 超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。 合成語多いかも 話の単位は「食」 3月18日 投稿(一食目、二食目) 3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。