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第十五章 再びの貴族主義派の不正

二百六十九話 炊き出し完了!

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「それじゃあ、炊き出しでも作りますか」
「「「うっ……」」」

 お昼の時間になるので炊き出しを作ろうとしたら、近衛騎士の人々から嫌な声が上がってきた。
 うーん、野菜を切る位なら上達していると思うけどなあ。
 少なくとも、レイナさんやカミラさんの様にまな板ごと野菜を切ることはないし。

「スラちゃんは風魔法で野菜を切っていますし、無理矢理包丁で切らなくても良いのではないでしょうか?」
「「「そうか!」」」

 僕の提案に、ランカーさん達の表情が一気に明るくなった。
 その手があったかといった表情です。
 という事で、早速炊き出しを作る事に。

「調理前は必ず手と調理道具を水で洗います」
「「「はい」」」

 おさらいという事で、基本から話し始めます。
 これだけの避難民がいるから、お腹壊したら治療も大変だよね。
 僕もよく手を洗います。
 
「今日は野菜炒めを作ります。野菜とお肉を均一に切るのは、スープを作るのと変わりありません」

 一口大の大きさに野菜を切って行って、お肉も一口大に切ります。
 近衛騎士は包丁を使う人、魔法を使う人に分かれていて、ランカーさんとノエルさんは器用に風魔法を使って野菜とお肉を切っています。
 うーん、僕としては包丁で切った方が楽なんだけどなあ。

「切り終わったらフライパンで一気に炒めていきます。今日はバザール領産の何でも美味しくなる調味料を使います」
「「「おお、いい匂い!」」」

 本当にこの調味料は万能だよね。
 今日は最新作ではなく市販品だけど、野菜炒めとかにかけるだけでとっても美味しくなるんだよ。
 大皿に盛って、後は取り分けて貰おう。

「うお、これは美味いな」
「久々に美味いものを食べた気がするな」
「おかわりできるか?」

 うんうん、避難民にも大好評だし上手く行ったみたいだな。

「今日はとても簡単な料理でしたが、どうでしたか?」
「これなら何とかできそうです」
「というか、この調味料が凄いんですね」
「王都でも普通に売られていますよ」

 皆、調味料の入った瓶をしげしげと見ていた。
 王都でもヒット商品になっている様だし、何よりもかけて炒めるだけという手軽さが良いよね。
 僕達のお仕事はここまでです。
 後は軍が引き継いでくれるので、あの調味料も込みで引き継ぎました。

「アレク君、お帰り」
「ただいま帰りました。仮設住宅は無事にできあがりました」
「そう、それは良かったわ」

 屋敷に戻ると、ティナおばあさまが出迎えてくれた。
 王城から来た侍従部隊の活躍によって洪水被害を受けた屋敷の一階はかなり綺麗になり、官僚達も仮設テントから屋敷の中に移っていた。
 ティナおばあさまも玄関から出迎えてくれた。
 すると、玄関に姿を現した人が。

「フィル様、体調は大丈夫なのですか?」
「まだ完調じゃないけど、少しずつやっていきます」
「皆さんに申し訳ないという事を聞かないんです。何かありましたら、私が止めますので」

 サラさんはフィル様をちらりと見て苦笑しているけど、フィル様の顔色は随分と良くなっている。
 無理をしない範囲でやって欲しいなあ。
 対策本部代わりの応接室に移動して、今後の事を話し合う事に。

「想像以上に復興のペースが早いですが、焦っては禁物です。計画も逐一修正が入りますので、慌てずにやっていきましょう」
「「「はい」」」

 会議の初めに、ティナおばあさまが全員に語りかけていた。
 確かに急ぐあまりに焦ってはいけないよね。

「また、今回の災害対策を検証して、今後の復興対策のモデルを作ります。アレク君が作った仮設住宅も、土魔法使いがいればできますしね」

 ここまでティナおばあさまが話して、官僚にバトンタッチ。
 いざという時にマニュアルってとても大事だよね。
 国としても予防策も含めて積極的に動くんだって。

「では、今後の対策について報告致します。物資搬入ルートは確保しており、既に一部商人が動き始めております。また、幸いにも製材所の被害が少なく直ぐに稼働見込みです」
「農地も農閑期という事もあり、来年の作付けに間に合うように復興計画を立てます。まだ、この際ですので、作付け面積を広げる事も計画しております」
「内務卿より、翌年のナシュア子爵領は税金免除が確定したと報告されました。復興資金についてもアホラ子爵より徴収する罰金で問題なさそうです」

 ここまではある程度予想通りだった。
 ナシュア子爵領は林業などの地場産業もあるので、自前で復興に必要な資材を用意できるのが大きかった。
 これなら、来年春までには、復興もある程度形にできるだろうとの予想だった。

「どちらかというと、アホラ子爵領の方が不味い状態でした。重税の為に市民生活が疲弊していて、産業が崩壊寸前です」
「税金面での支援も勿論ですが、物資が足りていません。医療も崩壊しています」
「カスラ男爵領とクズラ男爵領は問題ありません。両方の領地共に産業が発達する余地はあります」

 ははは、やっぱりというかアホラ子爵は本当にアホだったんだ。
 アホラ子爵に領地経営の能力は皆無で、どっちにしても転落する運命にあったんだ。
 
「結果でいうと、復興の進展が見られているナシュア子爵領よりもアホラ子爵領の方が危ういという事が判明しました。この後、私達はアホラ子爵領の調査にも赴きます」
「「「はい」」」

 という事で、会議は終了し僕達はアホラ子爵領に向かう事に。
 昨日のうちにアホラ子爵領に行っていて良かった。
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