104 / 942
第十五章 再びの貴族主義派の不正
二百六十二話 人為的に引き起こされた災害
しおりを挟む
「うん? ティナ様からの連絡だ。アレク君、王城にゲートを繋いでくれ」
「はい、分かりました」
ティナおばあさまの準備も終わったのだろう。
僕は王城内の兵がいる場所に向かった。
ティナおばあさまとサンディの姿は直ぐに分かったのだが、ティナおばあさまの直ぐ側には不安そうにしている夫妻と少女がいた。
「アレク君、こっちよ」
「お待たせしました。こちらの方は?」
「ロロノア男爵夫妻と娘さんよ。今回被害を受けたナシュア子爵家の嫡男に娘さんが嫁ぐ予定で、今朝ナシュア子爵領から応援要請が入ったそうよ」
「そうですか、フィル様の婚約者ですか」
僕はロロノア男爵夫妻と娘さんに現地の状況を軽く説明する事にした。
「ナシュア子爵領は、川の決壊で酷い事になっています。現在は決壊した川岸の復旧と市内の復旧にあたっています。それから、ナシュア子爵夫妻は濁流に巻き込まれて遺体で発見され現場指揮はフィル様がとっております」
「おお、何と言う事だろうか」
「アレク殿下、ナシュア子爵夫妻は亡くなったのですか?」
「はい、現場に入った軍の兵によって発見されました。フィル様は怪我はありませんが、疲労とご両親を亡くされたショックで精神的にダメージを受けておられます」
「そんな、フィル様……」
三人はナシュア子爵領の惨状に絶句していた。
とりあえずはと言う事で、追加の救援物資と共に僕達はナシュア子爵領の屋敷に向かった。
「「「こ、これは……」」」
辺り一面泥まみれの市内を見たロロノア男爵夫妻と娘さんは、言葉を失っていた。
これでもだいぶ市街地の土砂は取り除かれたんだよね。
そして屋敷に入ると、棺桶に入っている両親と悲しみの対面をしているフィル様の姿があった。
「フィル様!」
「サ、サラさん。どうしてここに?」
「アレク殿下に連れてきて貰いました。こんな酷い事になっているとは……」
ロロノア男爵夫妻の娘サラさんが涙が止まらないフィル様の元に駆けつけていった。
そして、内務卿がロロノア男爵夫妻に話しかけてきた。
「ロロノア男爵、大変な時に来て頂きかたじけない。フィル殿は肉体的にも精神的にも限界にきている。少し休ませてくれないか?」
「はい、こちらにお任せ下さい。閣僚閣下には色々とお手数をおかけします」
幸いにして屋敷の二階は洪水の被害を受けていないので、フィル様はロロノア男爵夫妻とサラさんと共に二階に移動した。
「報告します。バラバラに避難していた住民を郊外の一箇所にまとめ始めました」
「報告します。決壊した川岸の仮復旧が完了しました。しかし亀裂が入っている場所が複数あるため、引き続き対応にあたっております」
矢継ぎ早に様々な報告が入ってきて、次の指示が飛んでいく。
王国としてもこの規模の災害はあまり例がなく、閣僚が現地にいてとても助かっている。
と、ここで気になる報告が入ってきた。
「報告します。軍用船での調査により、川の上流でダム湖が決壊しているのが確認されました」
「となると、ダム湖の決壊がこの災害の原因と見て良いだろう」
「しかし、ダム湖は岩盤が安定していて、そう簡単には決壊しないはずです。排水対策もしておりました」
対策会議に残っている家宰の説明に、一度首を傾げた。
では、なぜダム湖は決壊したのか。
その原因は更にもたらされた追加報告で判明した。
「軍用船より追加報告です。山肌が崩れていて排水路を塞いでいるのが確認されたとの事です。しかし、土砂崩れの様な跡ではなく発破をかけた様なえぐれた跡との事です」
「そういう事か。人為的に土砂崩れを起こして排水路を塞ぎ、その結果で越水が起きたのか」
いち早く農務卿が越水の原因に気がついた。
つまり、今回の災害は人為的に起こされた事と判断されたのだ。
するといち早く軍務卿が動いた。
「アレク君、王都郊外の駐屯地にゲートを繋いでくれ。周辺三貴族の領地と王都の屋敷に捜索に入る」
「はい」
僕も周辺貴族の犯行が濃厚だとおもっている。
何せ貴族主義の連中な上に、災害を見過ごして領主乗っ取りを計画していたのだからだ。
直ぐに王城郊外の駐屯地にゲートを繋ぎ、軍務卿指示の下軍が一斉に動き出した。
周辺三領地へも一個中隊を派遣し、徹底的に調査する事になった。
こうなると閣僚の手がもう少し必要なので、宰相も呼び寄せる事に。
「召喚された領主は、王都に着き次第身柄の拘束を行おう。情報が漏れる様では、ロクに証拠保存はしておらんだろう」
宰相も憤慨している状況だ。
貴族間の領地を巡る紛争はあるらしいが、今回の事は遥かに紛争レベルを超えてしまっている。
すると、三領地に向かった兵より直ぐに連絡が入った。
「軍務卿閣下、主犯と思われるアホラ子爵領にてアホラ兵と軍が交戦しております」
「早速尻尾を出しやがったか」
軍務卿と共にティナおばあさまも立ち上がった。
おお、ティナおばあさまのこめかみが怒りでピクピクとしているぞ。
「アレク君、早速現地に行くわよ」
「はい!」
「ルーカスはナシュア子爵領を宰相と共に取りまとめてね」
「はい、二人ともお気をつけて」
僕はティナおばあさまとプリンと共に追加で交戦地に行く兵と馬車で向かいます。
先ずは現地を抑えないと。
「はい、分かりました」
ティナおばあさまの準備も終わったのだろう。
僕は王城内の兵がいる場所に向かった。
ティナおばあさまとサンディの姿は直ぐに分かったのだが、ティナおばあさまの直ぐ側には不安そうにしている夫妻と少女がいた。
「アレク君、こっちよ」
「お待たせしました。こちらの方は?」
「ロロノア男爵夫妻と娘さんよ。今回被害を受けたナシュア子爵家の嫡男に娘さんが嫁ぐ予定で、今朝ナシュア子爵領から応援要請が入ったそうよ」
「そうですか、フィル様の婚約者ですか」
僕はロロノア男爵夫妻と娘さんに現地の状況を軽く説明する事にした。
「ナシュア子爵領は、川の決壊で酷い事になっています。現在は決壊した川岸の復旧と市内の復旧にあたっています。それから、ナシュア子爵夫妻は濁流に巻き込まれて遺体で発見され現場指揮はフィル様がとっております」
「おお、何と言う事だろうか」
「アレク殿下、ナシュア子爵夫妻は亡くなったのですか?」
「はい、現場に入った軍の兵によって発見されました。フィル様は怪我はありませんが、疲労とご両親を亡くされたショックで精神的にダメージを受けておられます」
「そんな、フィル様……」
三人はナシュア子爵領の惨状に絶句していた。
とりあえずはと言う事で、追加の救援物資と共に僕達はナシュア子爵領の屋敷に向かった。
「「「こ、これは……」」」
辺り一面泥まみれの市内を見たロロノア男爵夫妻と娘さんは、言葉を失っていた。
これでもだいぶ市街地の土砂は取り除かれたんだよね。
そして屋敷に入ると、棺桶に入っている両親と悲しみの対面をしているフィル様の姿があった。
「フィル様!」
「サ、サラさん。どうしてここに?」
「アレク殿下に連れてきて貰いました。こんな酷い事になっているとは……」
ロロノア男爵夫妻の娘サラさんが涙が止まらないフィル様の元に駆けつけていった。
そして、内務卿がロロノア男爵夫妻に話しかけてきた。
「ロロノア男爵、大変な時に来て頂きかたじけない。フィル殿は肉体的にも精神的にも限界にきている。少し休ませてくれないか?」
「はい、こちらにお任せ下さい。閣僚閣下には色々とお手数をおかけします」
幸いにして屋敷の二階は洪水の被害を受けていないので、フィル様はロロノア男爵夫妻とサラさんと共に二階に移動した。
「報告します。バラバラに避難していた住民を郊外の一箇所にまとめ始めました」
「報告します。決壊した川岸の仮復旧が完了しました。しかし亀裂が入っている場所が複数あるため、引き続き対応にあたっております」
矢継ぎ早に様々な報告が入ってきて、次の指示が飛んでいく。
王国としてもこの規模の災害はあまり例がなく、閣僚が現地にいてとても助かっている。
と、ここで気になる報告が入ってきた。
「報告します。軍用船での調査により、川の上流でダム湖が決壊しているのが確認されました」
「となると、ダム湖の決壊がこの災害の原因と見て良いだろう」
「しかし、ダム湖は岩盤が安定していて、そう簡単には決壊しないはずです。排水対策もしておりました」
対策会議に残っている家宰の説明に、一度首を傾げた。
では、なぜダム湖は決壊したのか。
その原因は更にもたらされた追加報告で判明した。
「軍用船より追加報告です。山肌が崩れていて排水路を塞いでいるのが確認されたとの事です。しかし、土砂崩れの様な跡ではなく発破をかけた様なえぐれた跡との事です」
「そういう事か。人為的に土砂崩れを起こして排水路を塞ぎ、その結果で越水が起きたのか」
いち早く農務卿が越水の原因に気がついた。
つまり、今回の災害は人為的に起こされた事と判断されたのだ。
するといち早く軍務卿が動いた。
「アレク君、王都郊外の駐屯地にゲートを繋いでくれ。周辺三貴族の領地と王都の屋敷に捜索に入る」
「はい」
僕も周辺貴族の犯行が濃厚だとおもっている。
何せ貴族主義の連中な上に、災害を見過ごして領主乗っ取りを計画していたのだからだ。
直ぐに王城郊外の駐屯地にゲートを繋ぎ、軍務卿指示の下軍が一斉に動き出した。
周辺三領地へも一個中隊を派遣し、徹底的に調査する事になった。
こうなると閣僚の手がもう少し必要なので、宰相も呼び寄せる事に。
「召喚された領主は、王都に着き次第身柄の拘束を行おう。情報が漏れる様では、ロクに証拠保存はしておらんだろう」
宰相も憤慨している状況だ。
貴族間の領地を巡る紛争はあるらしいが、今回の事は遥かに紛争レベルを超えてしまっている。
すると、三領地に向かった兵より直ぐに連絡が入った。
「軍務卿閣下、主犯と思われるアホラ子爵領にてアホラ兵と軍が交戦しております」
「早速尻尾を出しやがったか」
軍務卿と共にティナおばあさまも立ち上がった。
おお、ティナおばあさまのこめかみが怒りでピクピクとしているぞ。
「アレク君、早速現地に行くわよ」
「はい!」
「ルーカスはナシュア子爵領を宰相と共に取りまとめてね」
「はい、二人ともお気をつけて」
僕はティナおばあさまとプリンと共に追加で交戦地に行く兵と馬車で向かいます。
先ずは現地を抑えないと。
546
お気に入りに追加
8,893
あなたにおすすめの小説

(短編)いずれ追放される悪役令嬢に生まれ変わったけど、原作補正を頼りに生きます。
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚約破棄からの追放される悪役令嬢に生まれ変わったと気づいて、シャーロットは王妃様の前で屁をこいた。なのに王子の婚約者になってしまう。どうやら強固な強制力が働いていて、どうあがいてもヒロインをいじめ、王子に婚約を破棄され追放……あれ、待てよ? だったら、私、その日まで不死身なのでは?

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。


なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。