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第十四章 五歳の祝いとマロード温泉

二百四十八話 現場検証

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「うーん、良く寝たなあ」

 僕は昨晩のムノー子爵の対応で寝不足の為、食堂での朝食の途中で眠ってしまった様だ。
 いつの間にか、宿泊している部屋のベッドで寝かされていた。
 そして、何故かランカーさんにベッドの中で抱きしめられていた。

「殿下、起きられましたか?」
「はい、何だか良く眠れた気がします良く眠れました」
「それは良かったですわ」

 とっても満足そうな笑顔のランカーさんがドアップであるけど、僕はこの状況を聞かなくてはならない。

「ランカーさん、何しているんですか?」
「殿下の護衛です」

 自信満々に答えるランカーさんに、ちょっと笑いそうになってしまいました。
 あえて深く突っ込まなかったけど、昨日からの流れを推測するに僕の護衛を誰がするかで壮絶なジャンケン大会が行われたのだろう。
 そして、勝ち残ったのが、ここにいるランカーさんだったのだろう。
 僕はベッドからモゾモゾと起きて、身支度を始める。

「皆はどうしていますか?」
「まだ午前中ですので、昨夜のムノー子爵の騒動の捜索に参加しています」
「そうだよね。あれだけの事件なのだから、更なる現場検証は必要ですね」

 まだ皆で捜索を進めているというので、僕も準備して合流する事に。
 先ずは放火された木こりの宿の外壁にランカーさんと向かった。
 するとそこには、ジンさんとレイナさんとカミラさんの他に冒険者のお姉さん達とルーカスお兄様とアイビー様の姿があった。
 宿の壁はというと……
 うお、結構煤が広がっているぞ。
 それに辺りには油っぽい匂いもしているな。

「お、アレクか。だいぶマシな顔になったな」
「はい、ゆっくり寝たらだいぶ楽になりました」

 僕とランカーさんが近づいた事に、ジンさんが気がついた様だ。
 レイナさんとカミラさんも僕達に手を振っている。

「だいぶ焦げちゃってますね」
「既に被害範囲の計測とかは終わったけど、こりゃ外壁は貼り直した方が安全だな」
「そうですね。外壁が焦げて、強度も落ちている可能性もありますね」

 ジンさんと立ち話をするけど、正直な話焦げる位で事が収まって本当に良かった。
 全焼なんてなったら、目も当てられないよな。

「ムノー子爵の犯行だけど、賠償金が確定するまで待っていられないですね」
「そこは大丈夫だ。一度男爵家に請求がいって、後で賠償金で補填する事で決着した」
「先程、業者が修理見積もりに来ましたわ。本当に貴族主義の連中は、ロクでもない事をしますわね」

 流石はルーカスお兄様だ。
 既に復旧に向けて手を打っているとは。
 アイビー様も、ムノー子爵の行った行動に憤慨している様子だ。
 とはいえ宿泊する問題ないし、営業を続けられるのは幸いな事だ。

「アレク君、高級宿にも行く?」
「これから向かいます」
「じゃあ、ルーカス殿下とアイビーちゃんも一緒に連れて行ってくれないかな?」
「はい、分かりました」

 レイナさんとカミラさんからこれからの事を聞かれたので、ランカーさんとルーカスお兄様とアイビー様と共に直ぐ側の高級宿に向かった。
 高級宿は外壁などには影響がないので、一見して何も起きていない様だ。

「アレク君、起きたのね」
「はい、ゆっくりできました」

 高級宿に入ると、カウンターにはティナおばあさまが昨晩も一緒にいた宿の主人と話をしていた。
 僕の姿を見つけると、ティナおばあさまは僕の頭を撫でてきた。
 
「アレク殿下、昨夜は夜分遅くにも関わらずありがとうございました」
「いえいえ、これは僕達にも関わりのある事ですし、何よりも王国の貴族が関わっている事ですので」

 ちょっとぽっちゃりな宿の主人と話をするけど、昨晩は王国の貴族の犯行だから王族として対応するのは当然だよね。
 すると、宿の主人は僕の隣にいるルーカスお兄様とアイビー様に気がついた様だ。

「おや? ティナ様、こちらのお子様は?」
「私の甥の一番上の子のルーカスと、その婚約者のアイビーですよ」
「ルーカスです。この度は王国の貴族が大変なご迷惑をおかけしました」
「ルーカス様の婚約者のアイビーですわ。ルーカス様共々、謝罪いたしますわ」
「そ、それはわざわざご丁寧にありがとうございます」

 どうも高級宿の主人はティナおばあさまの事も知っていて、ルーカスお兄様がティナおばあさまの甥の長男となれば王位継承権第一位の王子様だというのは直ぐに分かった様だ。
 更にはアイビー様もルーカスお兄様の婚約者と紹介されたので、未来の王妃様になる事も分かってしまった様です。
 そのルーカスお兄様とアイビー様が宿の主人に対して物凄く丁寧に謝罪しているので、宿の主人はだいぶ恐縮してしまった様だった。

「ティナおばあさま。他の人は昨晩の現場となったスイートルームですか?」
「ええ、そうよ。皆、何か不審なものがないか一生懸命に探しているわ」

 ティナおばあさまがちょっと苦笑しているって事は、スラちゃんとプリンも巻き込んで部屋の中を宝探しの様にあさっていそうだな。
 ルーカスお兄様とアイビー様も僕と同じ光景が浮かんだ様なので、一緒にスイートルームに向かった。

「またあったよ! 変な薬だよ!」
「今度はお金が落ちていましたよ」

 やはりというか、リズにエレノアにサンディ、更にはルーシーお姉様とスラちゃんとプリンがスイートルームのあらゆる場所をごそごそと漁っていた。
 ちゃっかりアイビー様の従魔でもあるアマリリスも捜索に参加していたぞ。
 スイートルームの応接室のテーブルの上に次々と色々な物が積まれていき、あまりの大量の証拠物件にジェリルさんが若干引き気味で監視に当たっていた。

「ジェリルさん、凄い数ですね」
「私も若干戸惑っています。ムノー子爵は、一体何をやりたかったのでしょうか?」

 お金はもしかしたら別の人の落とし物なのかもしれないけど、中には明らかに怪しい薬とかもある。
 主に寝室から見つかっているそうだが、確かにムノー子爵が何をやるつもりだったのかとても気になる。
 
「あ、お兄ちゃん。凄いでしょう!」
「よくこんな数の薬を見つけたね」
「もしかしたら、他の人の薬かもね」

 リズがまた宝探しの様に薬を見つけてきた。
 ご丁寧に、簡単には見つからない場所に隠されていた様だ。
 絶対に意図的に隠されていたとしか言えないぞ。

「アレク君の言う通りね。どうも宿の従業員にも見つからない様に、故意に隠されていた様だわ」

 と、僕の話を肯定する様にティナおばあさまが僕の背後から声をかけてきた。
 
「この薬の成分が何なのかは確認が必要だけど、実はこのスイートルームは貴族主義の連中が連泊してたのよ」
「あ、だからカウンターで宿の主人と色々と確認していたのですね」
「流石はアレク君ね、その通りよ。因みに次にスイートルームに泊まる予定になっているのも貴族主義の連中だったわ」

 そこまで分かれば、後は軍にお任せで良さそうだな。
 という事で、昨日も繋いだ王城の軍施設に再びゲートを繋ぎ、お金以外の応酬品を持っていってもらって分析してもらう事になった。

「うーん、まだ何かありそうだよー」
「こっちにもあるかな?」

 しかし、ごそごそと捜索している女性陣の皆様。
 いくら子どもだとはいえ、捜索に集中するあまり、スカートが捲れてパンツ丸出しは頂けないですよ。
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