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第十四章 五歳の祝いとマロード温泉

二百四十話 迷惑な来客

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 温泉から出て夕飯まで部屋で過ごす事になった。
 なったのだが……

「お兄ちゃん、何だか騒がしいね」
「何かあったのかも。皆、部屋から出ないでね」

 宿のどこかで何やら騒いでいる声がする。
 言い争っている様にも聞こえるぞ。

「私たちが様子を見てくるから、部屋の中から出ないでね」
「はーい」

 ティナおばあさまが先頭を切って騒動が起きてる所に行くのはどうかと思ったけど、近衛騎士と共に剣を持って向かっていった。

「じゃあ、夕食になるまでの間、少しお勉強しましょうね」
「「「えー!」」」

 ついでといった感じでカミラさんが皆に声をかけてきた。
 リズ達はカミラさんからの思わぬ提案に、絶望的な声をあげているぞ。
 レイナさんと冒険者のお姉さん達も護衛を兼ねて一緒に勉強を見てくれるみたいだし、時間潰しにはちょうどいいのでは。
 という事で、急遽の勉強時間です。
 今回は僕とルーカスお兄様とアイビー様も、教師役にまわります。

「リズはもう少し丁寧に文字を書かないとね」
「ううー、文字書くの苦手だよ」

 今日は問題ではなく綺麗に文字を書く練習だ。
 リズはもう少し文字を書く事に慣れないと。
 まあ、リズが書く字は十分判別出来るレベルではあるんだけどね。

「うーん、スラちゃんは達筆だよね」
「正直なところ、文官が書く字よりも綺麗だな」

 僕とルーカスお兄様がびっくりしているのは、スラちゃんの書く文字。
 本当に綺麗に文字を書くんだよね。
 でもスラちゃん、書いた紙をドヤ顔でリズに見せないの。
 わざとリズやエレノアを煽らない様に。

「ただいま、本当にアホな貴族だったぞ」
「自称貴族主義勢力の武闘派と言いつつ、実際にはただの無能なマフィアだったわ」

 ある程度文字を綺麗に書く練習が終わった所で、玄関に様子を見に行っていた一向が帰ってきた。
 ジンさんとティナおばあさまの愚痴から察するに、玄関で騒動となっていたのはムノー子爵の関係者だった様だ。

「どうもこの宿にレイナやカミラに冒険者の女性が泊まっているのを知ってな、綺麗な女性がいるのならお酌させるのに寄越せって言ってきたんだよ」
「「「「「はあ?」」」」」

 うん、やっぱり馬鹿な貴族だったんだ。
 温泉宿に泊まりにきている女性をホステス扱いにしてお酌をさせようとは。
 レイナさんとカミラさんに加えて、冒険者のお姉さんからも怒りの声が上がっている。

「ジンが名誉男爵って言ったらこちらは子爵だって余計にヒートアップしてきてね、しょうがないから私が王家の証を出したらすごすごと引っ込んでいったわ」

 不満そうにお茶を飲むティナおばあさまだが、確かにそんな馬鹿な相手をすれば不満も溜まりそうだ。
 近衛騎士の人もやれやれって顔をしているよ。

「ティナおばあさま、宿に押し寄せてきたのは貴族本人でしたか?」
「こんな所に本人が来るはずないでしょう。護衛の騎士がきてたわ。本人が来ていたらぶっ飛ばしてやったわよ」

 おお、ティナおばあさまは珍しく荒れている。
 詳しくは聞かないけど、ムノー子爵の騎士との間で何かあったんだ。
 ジンさんも苦笑しているという事は、ティナおばあさまにとっても嫌なことがあったんだ。
 これはちょっとした火種になってしまうかもしれないぞ。
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