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第十四章 五歳の祝いとマロード温泉

二百三十話 新しい家族が増えたよ

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「お兄ちゃん、お姉さん達はどうだった?」
「カミラさん達もいるし大丈夫だよ。赤ちゃんが産まれるには、もう少しかかるよ」
「そっか、赤ちゃんが産まれてくるのとても楽しみ!」

 リズが僕にお姉さん達の様子を聞いてきたけど、出産は時間がかかるからなあ。
 スラちゃんとプリンも、赤ちゃんが産まれるのをとっても楽しみにしている。

「にーに、ねーね」
「どうした、ミカエル?」
「ミカちゃんも、お兄ちゃんになるのかな?」
「ミカちゃんの侍従候補かもね」
「男の子かな? 女の子かな?」

 ミカエルはルーカスお兄様達と一緒にお喋りをしている。
 でも、確かにルーシーお姉様の言う通り、産まれてくる子はミカエルの侍従候補になる可能性がある。

 あまり慌ててもしょうがないので、皆で食事を続けていく。
 そもそもパーティは一時間半の予定だし、その間には赤ちゃんは産まれないはずだ。
 折角だから、料理を堪能して他の人とおしゃべりをしていく。

「そうか、あの侍従の姉ちゃんの赤ちゃんが産まれるのか」
「うちの店でもよく買い物してくれたから、俺も覚えているぜ」
「あの侍従さん美人だから、産まれる赤ちゃんも可愛いわよ」

 街の人もお姉さん達の事を知っているし、赤ちゃんが産まれるのを楽しみにしてくれていた。
 ちょうど子どもの祝いのイベントでもあるので、子どもが産まれるのは縁起がいいみたいに言っている人もいた。

「儂も、産まれた赤ん坊に祝福をしてやらんとな。どんな赤ん坊が産まれるか楽しみじゃ」

 司祭様も赤ちゃんの誕生を心待ちにしている。
 産まれたての子どもに祝福する機会は実はあまりないらしく、大半は産まれて暫くしてから教会に連れてくるという。
 司祭様にとっても貴重な経験らしい。

「オロオロ……」

 辺境伯様は未だにオロオロしているけど、そっとしておこう。

 時間になったので、五歳の祝いのパーティは終了して皆解散している。
 侍従や兵が後片付けをしていて、子どもや親も家路についていった。

「まだかな? まだかな?」
「リズ、スラちゃんとプリンももう少し落ち着こうね」
 
 パーティが終わってから一時間ほど。
 庭の片付けも終わったので、僕達は屋敷の応接室に集まっていた。
 シスターが出産を手伝っているので、司祭様も応接室にいる。
 因みに辺境伯様はイザベラ様から戦力外通告を受けて、辺境伯様の屋敷に戻っていった。
 出産に立ち会っている侍従からもう少しで産まれそうと連絡が入ったので、リズとスラちゃんとプリンのソワソワが止まらない。
 エレノアとサンディもソワソワしているので、その様子をティナおばあさまやルーカスお兄様達が苦笑しながら眺めている。
 
「まだかな、まだかな、まだかな……」
「大丈夫かな……本当に大丈夫かな……」

 お姉さん達の旦那さんは、もうソワソワを通り越して不安でいっぱいになっている。
 僕達は旦那さんの様子を見ているので、逆に冷静になっていたのだ。

 その時だった。

「「オギャー、オギャー!」」
「「!」」
「「「「産まれた!」」」」

 出産を行なっていた部屋から、元気な赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
 旦那さん達はシンクロしたかの様に顔を部屋の方を向いていたし、リズ達も赤ちゃんの泣き声を聞いて飛び跳ねて喜んでいる。
 そこに、出産を手伝っていたシスターが応接室にやってきた。

「母子共に問題ありません。可愛らしい女の子ですよ」
「「娘!」」
「今、後片付けをしていますから、もう少し待っていて下さいね」
「「はい!」」

 娘が産まれたと聞いた瞬間、死にそうな顔をしていた旦那さんが息を吹き返した。
 満面の笑みを浮かべて、シスターに返事をしている。
 その間に僕達は生活魔法で体を綺麗にしておき、赤ちゃんとのご対面に備えていた。

「では、大きな声を出さない様に部屋に入って下さいね」
「「「「はーい」」」」

 シスターの注意に元気よく答えるリズ達。
 いや、あなた達は人の話を聞きなさい。 
 シスターが苦笑しつつも、部屋のドアを開けてくれた。

「「「「わあ、ちっちゃい!」」」」

 僕も皆も、感想は同じだった。
 お姉さん達が横たわっているベッドの側に小さなベビーベッドがあって、その中に小さな赤ちゃんが寝ていた。
 
「よく頑張ったな」
「お疲れ様、有難うな」

 旦那さんはお姉さん達を労いつつ、赤ちゃんの頭を撫でていた。
 もう、旦那さんの顔が赤ちゃんを見てメロメロになっている。

「ミカちゃんも、赤ちゃんを少し見ようね」
「うん!」

 リズに抱っこされながら、ミカエルも興味深そうに赤ちゃんを眺めていた。
 そんな僕達の様子を、ティナおばあさまとイザベラ様とソフィアさんが眺めている。

「出産ってあんなに大変なんですね」
「大変だからこそ、母親は産まれた赤ちゃんを大切に育てたいと思うのよ」
「私もこれから産まれてくるこの子を、より一層大切に育てたいと思いました」

 ソフィアさんはイザベラ様と話をしながら、お腹にいる我が子を愛する様にお腹を撫でていた。

「とてもめんこい子じゃのう。この子らに神と女神より祝福があらん事を」
「し、司祭様。わざわざありがとうございます」
「この子に祝福して頂き、感謝します」

 司祭様も、早速赤ちゃんに祝福を与えていた。
 旦那さん達は今になって司祭様が屋敷にいる事に気がついたらしく、とても恐縮した様子で慌てた様子で司祭様にお礼を言っていた。

「何だか今日は本当にめでたいわね」
「そうですね。とっても良い日です」
「母上もそろそろ出産なので、前もって出産を知れて良かったです」

 僕もティナおばあさまとルーカスお兄様と共に赤ちゃんを見つめているリズ達の事を眺めていた。
 部屋の中はとっても暖かい空気に包まれていた。
 こうして、僕の屋敷に新しい家族が増えたのだった。
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