上 下
102 / 878
第十四章 五歳の祝いとマロード温泉

二百二十七話 賑やかな儀式会場

しおりを挟む
「わあ、沢山の人がいるね」
「皆、五歳なんだ!」

 僕達が教会に着くと、沢山の子どもと保護者が教会の礼拝堂の中にいた。
 辺境伯領の街は大きいし、周辺の村から来ている人もいた。
 沢山の人の中には、僕達も見知った人もいた。

「あら、アレク君とリズちゃんじゃない。エレノアちゃんとサンディちゃんも五歳おめでとうね」
「「「「有難う御座います」」」」

 いつも薬草採取で一緒になるおばさんが、僕達に声をかけてきた。
 元気そうな男の子も一緒で、教会内を走り回っていた。

「今日はティナ様も一緒なんですね」
「この子達の保護者ですから。勿論来ますわよ」
「それにしても、アレク君達はきちんとしていますわね。うちの子なんて、走り回っていて言う事聞かないのですよ」
「まあまあ、元気な証拠ですよ」

 おばさんはティナおばあさまとも顔見知りなので、早速おばちゃんの井戸端会議みたいに話し始めている。

「お、一番の大物がやってきたな」
「皆、五歳おめでとうね」

 商店街でのお買い物や冒険者活動で知り合った人も声をかけてきた。
 やっぱりこの街の人は僕達の事も普通に扱ってくれる。
 僕達が王族や貴族だとはいえ、とてもありがたい事だ。
 
「「「じー」」」

 それに対して、殆ど僕達の事を見た事がない子ども達は、誰こいつ? って表情をしていた。
 そりゃそうだろうね。
 いきなり来た子どもと大人が対等に話をしているのだから。

「わー、スライムだ!」
「こっちのスライムはちっちゃいな」
「ぷよぷよしていて面白いな」
「わあ、スライムが魔法使ったよ!」

 僕達とは違って、スラちゃんとプリンは子ども達に大人気。
 スラちゃんとプリンも子どもの相手をするのは慣れているので、小さな魔力の球を動かしたりショートワープをしたりぴょんぴょんしていたりした。
 スラちゃんとプリンの動きに、子ども達は大喜び。
 そんな子ども達のところに、僕達も近づいていく。

「このスライムは、スラちゃんとプリンって言うんだよ」
「スラちゃんが青いスライムで、プリンちゃんが小さなスライムだよ」
「スラちゃんとプリンちゃん!」
「確かに小さくて黄色からプリンみたい」
「触ってみても大丈夫だよ」
「うん!」

 スラちゃんとプリンの事をきっかけに、僕達も他の子ども達と話せる様になった。
 特にリズは悪人でなければ人見知りしないので、どんどんと話しかけていった。

「ほほほ、今年は賑やかですね」
「あ、司祭様。騒がしくして申し訳ありません」
「いやいや、子どもは元気が一番じゃ。今年は特に元気がよいのう」

 リズ達とスラちゃん達の様子を見ていると、僕の後ろから司祭様がニコニコしながら声をかけてきた。
 司祭様の横では、同じくシスターが子ども達を見つめながらニコニコしていた。

「今年は五歳になる子どもも多いわ。それもこれも、アレク様やリズ様が奉仕活動の際に積極的に街の人の治療をしてくれたおかげですわ」
「僕は街の人に大変お世話になっていますので、奉仕活動の時に治療を行うのは当然だと思います」
「でも、それって中々できない事よ。正にノブレスオブリージュを体現していると言えるわ」

 シスターの言う通り、この前の偽物伯爵なんかお金儲けに目が眩んでいたし他にも僕は欲に眩んだ人を見てきた。
 僕の場合は辺境伯様の所にいたというのも大きいし、周りの人にも恵まれていた。
 だから、その人に恩返しをしたいと思っているんだよね。

「さあ、祝いの儀は直ぐに終わらせて食事とするか」
「そうですわね。儀式は子どもにとっては退屈でしょう。直ぐに始めましょう」

 そして、司祭様とシスターは式典の準備を始めた。
 すると、子ども達の親も集まって手伝いをしている。
 各領で行われている五歳の祝いは、親や保護者も一緒にお祝いするのが通例になっている所があるらしく、ここ辺境伯領も親や保護者が祝いの準備をする事になっている。
 因みに、ティナおばあさまも準備に参加していて、護衛で来ていた近衛騎士も一緒に準備を手伝っていた。

「よし、準備できたわ」
「「「わあ、きれいだな!」」」

 礼拝堂のイスや長椅子をきれいな布や花で装飾している。
 綺麗に装飾された礼拝堂内を見て、子ども達も喜んでいる。
 さあ、先ずは教会の儀式の開始だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。