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第十三章 貴族主義派の不正

二百二十話 新たな婚約者候補

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「そんな事があったなんて」
「サンディが可哀想ですわ」

 偽物のロンカーク伯爵の一件が落ち着いてから、僕はエレノアとリズがいる部屋に向かった。
 ちょうど部屋にいたルーカスお兄様とアイビー様に話をしたが、想像以上の事態が起きていた事に悲しんでいた。

「ぶー、何でリズは仲間外れだったの!」
「そりゃリズがいれば、絶対に大暴れしただろうに」

 会談の場にいなかったリズが憤慨しているので、僕が理由を言った。

「当然、金ピカ伯爵を叩きのめしましたわ」
「うん、私も金ピカをやっつけると思う」
「エレノアもやっつけるの」
「リズも金ピカをやっつける!」
「だめだこりゃ……」

 女性陣に加えて、スラちゃんとプリンとアマリリスもぷんぷんしていた。
 ルーカスお兄様は呼ばなかった理由を理解してくれた様だけど、女性陣に従魔は呼ばなくて正解だった。

「流石に皆はあの場面には呼べないわよ」
「そうそう、折角芝居をうっていたのに台無しになってしまうわ」
「アレクくんでさえ怒っていたのだから、皆だったら抑えが効かないわ」

 ここで部屋に入ってきたのは王妃様とアリア様とティナおばあさま。
 そして、王妃様と手を繋いでいるサンディさんだった。
 サンディさんは、トコトコとルーカスお兄様の前にやってきた。
 そして、ぺこっと頭を下げていた。

「ルーカス様にアイビー様、今までごめんなさい」
「サンディが謝る事はないよ」
「そうですわ。悪いのは偽物なのですから」

 偽物のロンカーク伯爵と自分自身の存在が、ルーカスお兄様とアイビー様の仲を邪魔していた事を理解しているのだろう。
 勿論、ルーカスお兄様とアイビー様もこの事はもう気にしていなかった。

「サンディさん、もう調子は良くなったの?」
「うん、良くなりました。アレク様、私を助けてくれて有難うございます」

 僕もサンディさんに話しかけるが、お人形みたいだった表情もだいぶ柔らかくなっている。
 サンディさんは、僕にもぺこっと頭を下げているが、体調も随分と良くなった様だ。
 すると、サンディの手を女性陣が引っ張って、何やらヒソヒソ話を始めている。
 そこに、王妃様とアリア様とティナおばあさまが野次馬しにいった。

「サンディ、アレクがサンディを助けた時の事を教えて下さい」
「あ、はい。アレク様は偽物のロンカーク伯爵を見破ると、私の手を引っ張って背中で庇ってくれました。まるで絵本で見た一幕の様でした」
「いいなあ、羨ましいな」
「エレノアもカッコ良く守られたいな」
「リズも守られたいの!」

 おいおい、あんた達何を聞いているんですか!
 サンディさんも、絵本の様にと誇大に説明しないで下さいよ。
 うちの女性陣なら僕の事を押し退けて敵を討ちにいきそうだけど、そんな事は決して口にしてはいけない。

「ふーん、成程。それでサンディはアレクの事を一目惚れしちゃったんだね」
「!」
「「「えー!」」」

 おい、アイビー様何て事を聞いているのですか!
 サンディさんは、顔を真っ赤にして俯いてしまったぞ。
 勿論、他の女性陣はとてもビックリしている。
 というか、アイビー様。サンディさんが一目惚れしたのに気がついたな。

「まあまあ、そうなのね」
「アレクくんの新たなお嫁さん候補だわ」
「アレクくんモテモテね」

 あの、皆様?
 ニヤニヤしながら勝手な事を言わないでくださいよ。

「お兄ちゃんのお嫁さんはリズなの!」
「アレクお兄ちゃんのお嫁さんはエレノアなの!」
「がーん」

 ほら、リズとエレノアが対抗心燃やして僕の腕を取ってきたよ。
 サンディさんも明らかに落ち込まないで下さいよ。
 そしてスラちゃんとプリンも面白がって僕にくっつかないの。

「ははは、既にアレクは三人もお嫁さん候補がいるのか」
「本当ですわね」
「アレクくん凄いね」

 あの、ルーカスお兄様とアイビー様とルーシーお姉様、他人事の様に言わないで下さい。
 そして、出来ればリズとエレノアも離れてくれるとありがたいのですが。

「まあ婚約とかは置いといて、現実問題としてサンディを保護しないといけないの。暫くはアレクくんの所にいてもらう事になるわ」
「サンディの母親の実家も、実は疑惑の渦中にあってサンディを預ける事ができないのよ」
「家中の者もその多くが拘束されたので、屋敷に戻す事はできないの」
「そういう事情なら問題ないです。流石に僕も絡んでいるので、放置はできないですし」

 という事で、暫くサンディがうちにくる事が確定。
 ここでは流石に放置はできないよね。

「サンディさん、これから宜しくね」
「サンディと呼んで下さい。よろしくお願いします」

 こうして、サンディはうちで預かる事になった。
 そして、あれだけ僕を巡る女の戦いで揉めていたのに、誕生日パーティが終わると皆仲良くなっていた。
 うーん、女性ってよく分からない。
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