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第十一章 共和国編

百八十六話 対テイマー戦第ニラウンド

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「グルガー!」
「なになに? この魔力は」

 突然テイマーから湧き上がる強大な魔力。
 僕達は、腕で魔力の余波を防ぎながらテイマーを見ていた。

「え、腕が生えてきたよ!」
「なんだろう、魔力が人間って感じじゃない!」
「皆気をつけて、動くわよ」

 ゆっくりとテイマーが立ち上がると、魔導具だった杖の爆発で千切れていた左腕が再生している。
 更に、筋肉も発達してきて何だか異様な姿になってきた。

「グルガアー! ハアハア」

 まるでテイマーは狼の遠吠えの様に叫んだ後、僕達を睨んできた。
 その姿は人間ではなく魔物そのものに見えた。
 顔なんて、今までのゴブリンに似ている風貌から鬼みたいになっている。
 目も血走っていて、まともな状態ではないのか直ぐに分かった。
 しかも鑑定したら、とんでもない結果が表示された。

「フウフウ、ウガー!」

 ブォン、ガキン!

「お兄ちゃん?」
「ぐっ、なんて威力だよ」

 予備的に魔法障壁を張っていて助かった。
 テイマーがとんでもない勢いで突っ込んできて、パンチを繰り出してきた。
 少し勢いに押されたけど、体勢は大丈夫。

「はっ!」

 ヒュンヒュンヒュン。

「グエ?」
「くそ、皮膚も固くなっている」

 一瞬の隙をついてティナおばあさまが連続の突きを繰り出すが、テイマーには殆ど効いていない。
 身体能力がかなり上がっている。

「リズ、合体魔法の準備を。スラちゃんとプリンでテイマーを牽制して」
「私も攻撃するわ」
「私はお二人を守ります」

 ここは一気に畳み掛けた方が良いと思って、リズとの合体魔法を仕掛ける事にした。
 スラちゃんとプリンにティナおばあさまがテイマーを牽制しながら攻撃している。
 
「グオ、ウガー!」
「もう、まるで野獣ね」

 テイマーの動きは素早いけど、単調なので避けるのは難しくない。
 腕を振り回すだけで、本当に野獣の様な動きだ。
 ティナおばあさまのつぶやきもよく分かる。
 
「魔力が溜まりました」
「オッケーだよ」
「ええ、やってお仕舞いなさい」
「グガーーー!」

 僕とリズの魔力が溜まったので、前線の三人に呼びかけた。
 ティナおばあさまとスラちゃんは素早く避けて、プリンは電魔法をおみまいしてから下がった。
 どうやら魔法は普通通りに効くみたいで、テイマーはかなりのダメージを受けている。

「いくよ」
「うん」
「「えーい!」」

 プリンが離れた所を見計らって、僕とリズは合体魔法を放った。
 
「グオーーー!」

 テイマーはプリンの雷魔法で体が痺れていて殆ど動けず、僕とリズの合体魔法をモロに受けていた。

 ズドーン。

 僕とリズの合体魔法がやむと、テイマーは断末魔の様な叫び声を上げながら後ろ向きに倒れ込んだ。
 お腹に大きな穴が空いていて、全く動かない。
 すぐさま近衛騎士が確認に向かった。

「大丈夫です。死んでいます」
「ただ、異様な姿です」

 近衛騎士は、生死の確認が終わるとおかしい所に気がついた。
 皆が近づき見守る中、近衛騎士がテイマーの穴の空いたお腹の上を剣でさしていた。

「なんだろう。この塊は。魔力が集まっているよ」
「これは魔石よ。やはりあの薬を飲んだからだ」

 ティナおばあさまは何かを知っている様だ。
 思い出したくない何かを。
 すると、僕達の頭の上から声がしてきた。

「ほほほ、流石は華の騎士様だ。思い出されましたかな?」
「うむ、改良型はそれなりに良いようだな」

 空中に浮かんでいて、時々姿にノイズの様な物が入っている。
 一人は白衣の様な物を着ていて、まるで医者の様だ。
 もう一方は、サーカスのピエロの様な半分に割れた仮面を着けている。
 ティナおばあさまは、その二人をキッと睨みつけた。

「ドクター、ピエロ!」
「覚えて頂いて光栄ですな」
「いやはや、十年振りでございますね」

 二人はティナおばあさまに恭しく挨拶をするが、ティナおばあさまは怒りがおさまらない。
 二人に向けて風魔法を放ったが、魔法は二人をすり抜けてしまった。

「これはただの映像です。姿だけ表しているのですよ」
「テイマー如きではあなた達に勝てないと思いましたが、良いサンプルが取れました」

 言うだけ言って、二人の姿が薄くなっていく。

「またお会いしましょう。今日は、懐かしい再会に嬉しく思います」
「今度は戦場でお会いしましょう。それまでお体をご自愛下さいませ、華の騎士様」
「まて、逃げるのか!」

 そして、二人の姿は完全に消えてしまった。
 ティナおばあさまは、二人が消えた空中を睨みつけていた。
 いつも優しいティナおばあさまが、ここまで激しい感情を表すなんて初めてだった。
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