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第十一章 共和国編

百八十三話 隠密スラちゃん

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 翌朝、僕とリズとティナおばあさまは、レイクランド辺境伯様の屋敷でレイクランド辺境伯様と外務卿と軍務卿を拾ってから共和国首都の町長の屋敷に移動した。
 既に一部の斥候とスラちゃんが戻ってきていて、続々と調査結果が返ってきている。
 スラちゃんが触手でペンを持って紙にスラスラと調査結果を記載していく様子に、町長も執事もびっくりしている。
 そして、スラちゃんが一枚の紙を僕に見せてきた。

「えーっと、なになに? ブッフォンの生態? スラちゃん、こんな事も調べてきたの?」

 昨晩のスラちゃんは、テイマー対策でネズミ駆除がメインの仕事だったはず。
 その中で、これだけの情報を集めてくるとは。
 スラちゃんも、自分の仕事ぶりをとても自慢げだ。

「スラちゃん、更にネズミ駆除と情報を集めてくるって」

 スラちゃんは、リズにそう言って颯爽と街に出ていった。
 うん、スラちゃんがノリノリなので、これはもっと凄い結果が出そうだぞ。
 何はともあれ、スラちゃんの調査結果をみんなで見てみた。

「では、改めてブッフォンの生態と。先ずは性格、小心者でビビり。横柄な性格は作り物。弱いものいじめはよく行い、これは親からの厳しいしつけの反動で、死別した夫人からもかなり厳しいことを言われていたという」
「既にこの時点でとんでもない情報量だな」

 スラちゃんからの情報を読んでいると、一体どこから集めたのかという情報が載っていた。
 外務卿は思わず苦笑しているけど、全員情報量にびっくりしている。

「続けます。あの肥満体は不摂生な生活の影響ではなく、病気が影響しているらしい。その為、実は下戸で、アルコールが入ると直ぐに寝てしまうという。なので、寝る前のワイン一杯が睡眠薬の代わりだそうだ。こっそり帝国に送った泥酔する薬が入ったワインにすり替えましたよって、スラちゃんそんな事までやっているのかよ」
「なんというか、そのまま暗殺もできただろうな」
「えっと、なんだこれ? ロリコンの性格は、ブッフォンの男性機能が不能な為らしい。未だ童貞です。この件でも死別した夫人にかなり言われたらしい。なので、抵抗できない幼児の体を悪戯したり舐め回したりするのが、ブッフォンの性欲発散方法になったと」
「いやー、ハゲデブ親父いやー!」

 報告資料は以上なのだが、書いてある内容に対する反応は様々だ。
 報告書から、スラちゃんがブッフォンの寝室に忍び込んだ事も分かった。
 リズや女性陣は、幼児に何をしていたのかを聞いて悲鳴を上げて身を抱いていた。
 俺だって、こんな事はされたくないぞ。

「次もスラちゃんの報告書ですね。これは、明日の各辺境地や有力者を集めた会合の事です。えーっと、先ずは歓迎をして今後の方針を話す。で、歓迎会を開くがその時に毒ワインを振る舞う予定。これも、全部回収して毒がない物に変えました。勿論、ブッフォンのはブドウジュースから泥酔する薬が入ったワインにすり替えてます。うーん、もう対策済みですか」
「ははは、なら何も問題ありませんな。実は私は簡易鑑定持ちなので、毒のある無しくらいは直ぐにわかりますよ」

 スラちゃんからの報告書の内容に、町長は大笑いだ。
 というか、鑑定持ちなら直ぐに毒物が入っているか分かりそうだけど。

「後は親衛隊と言われる、精鋭部隊の事と闇ギルドのナンバーズの事ですね」
「あ、精鋭部隊にも何かしてあるみたい。精鋭部隊は普段お酒を飲まない代わりにジュースをよく飲む。なので、夕食に準備されたジュースを帝国で出された腹痛薬入りのジュースにすり替えたみたいです」
「つまりは、帝国で行おうとした悪行が全部自身に帰って来るわけか」
「スラちゃんも怒ってたからね」
「どうも帝国に運ばれた飲み物を、何本かくすねていたんだな。はは、是非とも有効活用してもらおうじゃないか」

 皆もスラちゃんの対策に、笑いが止まらない。
 既にスラちゃん無双になっているぞ。

「テイマー対策も、ネズミ対策を継続すれば大部分違うだろう」
「今夜はプリンも参加するので、更にネズミも駆逐できると思います」
「よし、では王城に向かって対策会議をするとしよう。町長も参加してもらえるか?」
「畏まりました」

 皆で王城に向かうと、既に会議には多くの人がいた。
 その中には、王城で保護されているサンラインさんとクレイモアさんもいた。
 早速会議が始まるが、全員がスラちゃんの報告内容に驚いていた。

「ははは、これ程までの事が仕込まれているとは。我が国や帝国にした事が、そのまま返っただけだな」
「斥候からの報告でも、街の行政組織は崩れてない。官僚組織まで手は出していない様だ」
「ブッフォンは官僚の有益性をある程度理解しています」
「なら、いわゆる警察組織を充実させれば問題ないな」
「案として、精鋭が揃っている各辺境より兵を集めればと思っております」
「うむ。その案は有効だ。丁度明日辺境の担当と有力者が集まるから、話し合いを行おう」

 とんとん拍子に今後の政策が決まっていく中、明日の作戦も同時に進んでいく。

「陛下、我々も明日は首都に向かいます」
「この手でブッフォンを捕らえたいと、そう思っております」
「我が辺境の兵も是非とも投入したく、宜しくお願いします」
「うむ、街中の制圧はそなたらに任せよう。こちらは、街の周囲にいる兵の捕縛と闇ギルドナンバーズの対応に注力しよう」
「「「有難う御座います」」」

 こうして、ブッフォン捕縛と中央制圧は、共和国民であるサンラインさんとクレイモアさんに町長の部隊で行うことになった。
 王国側は、あくまでもサポートに徹する様にする。
 共和国民の手で、ブッフォンを捕まえる事が重要なのだ。

「リズ、僕達はあのテイマーを捕まえる事に注力しようね」
「うん、今度はスラちゃんに負けないよ!」

 前回テイマーを追い詰めたのはスラちゃんだったから、今度はリズがテイマーを捕まえようとやる気になっている。
 会議はこれで終了し、早速サンラインさんとクレイモアさんは町長と打ち合わせをすると言うことで、辺境の街に送っていった。
 町長も部隊編成をするらしく、かなり意気込んでいた。
 王国から首都に向かう部隊も、レイクランド辺境伯領に駐留しているので十分らしく、軍務卿とレイクランド辺境伯様と外務卿を郊外の駐屯地に送った。
 そして僕とリズとティナおばあさまはホーエンハイム辺境伯領へプリンを迎えに行き、レイクランド辺境伯領経由で辺境の街から首都に移動した。
 
「あ、スラちゃんが帰ってきている。ネズミをいっぱい退治したから、パワーアップしたって」
「また強くなったのか。今夜もプリンと一緒に、頑張ってね」

 首都の町長の屋敷に着くとスラちゃんが帰ってきていて、テーブルの上には沢山の報告書が書かれていた。
 そして、プリンを連れて首都の闇に消えていった。
 サンラインさんとクレイモアさんは、スラちゃんからの報告書をペラペラとめくって見ていた。
 
「既に親衛隊の半分以上が腹痛で弱っていると。このジュースに含まれている下剤はかなり強力だな」
「これを子どもに飲ませようとしたなんて、ブッフォンは本当に救いようがないですね」

 スラちゃんがこっそり交換した下剤入りのジュースが、親衛隊にかなりのダメージを与えている。
 とはいえ、元はブッフォンが帝国に贈った物だし自業自得だろう。
 ブッフォンは破滅へのカウントダウンが始まっているのに気がついているかな?
 そう思いながら、僕達は眠りについた。
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