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第十一章 共和国編

百八十話 共和国首都に向けて出発

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 ゲートを開き、駐屯地に拘束した敵兵を連れて行く。
 ほぼ観念しているのか、素直に従っていた。

「くそ、離しやがれ」
「誰を拘束したと思っているのだ」
「俺は将来の将軍だぞ!」

 例のアホな三人もあっさりと捕まった。
 何か言っているけど、放っておこう。

「ふう。これで一安心だが、共和国側の国境の街の様子を確認しないと」
「そうだな。ほぼ盗賊の様な奴らだから、何が起きているか分からないぞ」

 レイクランド辺境伯様と軍務卿が話をし、直ぐに軍の一部が共和国側の街を調べ始めた。
 すると、直ぐに敵兵の残党が捕まり始めた。
 そして一時間後、僕とリズが呼ばれた。

「アレク君にリズちゃん。街の人に怪我人が複数でている」
「それは大変!」
「本当に盗賊のマネをしたんですね……」

 ティナおばあさまと近衛騎士と共に、共和国側の街で治療を始めた。
 殴られた跡や切られた跡がある人が多く、子どもにも殴られていた跡があった。
 そんな中、一目で重傷だと分かる人が運ばれてきた。

「この街の町長だ。あの敵兵の要求を断った所、あの三人に切られたという」
「簡単な治療は受けていますが、切られた傷が深いですね」
「お兄ちゃん、直ぐに治療しよう」

 止血と簡単な回復魔法を受けているようだが、容態はかなり悪い。
 急いでリズとスラちゃんの合体魔法で治療した。
 町長の怪我が大きいので、街の人もかなりびっくりしていた。

「ふう、とりあえず怪我は治りました」 
「でも、酷いね。こんな事をするなんて」
「そうね。いきなり攻めてきた事も含めて、ブッフォンを止めないといけないわ」

 ティナおばあさまも、街の惨状と怪我した人の多さに憤慨していた。
 何も罪のない人を襲うなんて、普通じゃ考えられなかった。

「でも、自分の欲に忠実なのがブッフォンだ。共和国の首都ではどんな被害が出ているか見当もつかない」
「でも、その暴走は止めないといけないな」
「はい、そうですね」

 国境の街でこれだけの被害がでているのだ。
 首都ではどのような被害が出ているか、全く想像もできない。

 街は守備兵も怪我人が多かったので、代わりにレイクランド辺境伯領の兵が防衛任務についている。
 この街の守備兵とは連絡を緊密に取っているので、関係は良好だという。
 食料品も強奪されたので、レイクランド辺境伯領から物資を運びつつ炊き出しも行った。
 こうして、夕方には何とか落ち着きを取り戻したのだった。

「先ずはご苦労だった。こちらは被害がほぼ皆無だというのも有難い」
「とはいえ、今後の対策を検討しなければならない。中々に難儀じゃのう」

 皆で王城に行き、今日の結果を報告した。
 陛下からはお褒めの言葉を頂いたけど、宰相からの言葉の様に今後の事を考えないといけない。
 
「堂々と軍を引き連れて進軍するわけにも行かないな。それこそ両国の被害が大きくなってしまう」
「首都を一気に攻め込み制圧するのが一番被害が少ないかと」
「とはいえ、魔導船は撃墜される危険性が高い。さて、どうするか」

 どうやって進軍するかとても難しい。
 被害を無視して進軍することもできるが、それでは両国に遺恨を残してしまう。
 うーん、この方法を提案してみるか。

「陛下。僕が首都まで行き、ゲートを使うのはどうでしょうか」
「駄目だ、それではアレクに負担が集中する。第一、どうやって首都に向かうのか」
「それは、すみません」
「何かにカモフラージュして行くのならともかくとして、今はその方法では移動手段がないぞ」

 確かに検問も厳しいだろう。
 でも、一刻も早くブッフォンをどうにかしないといけない。
 結局、この日は結論が出なかった。

 次の日、共和国の国境の街の町長が目を覚ましたというので、レイクランド辺境伯様と軍務卿とティナおばあさまと共に国境ノ街に向かった。

「辺境伯様、この度は街の危機を救って頂き感謝します」
「いや、町長の命が無事で本当に良かった。それにしても、ブッフォンの私兵は教育がなっていない」
「それはごろつきを採用しているからです。昔から粗暴の悪さは有名でした」

 町長の執務室で面会すると、昨日の出血の為か少し顔色が悪いが、それでも町長は元気な姿を見せていた。
 商人の様な恰幅の良い、優しそうな人だ。

「ブッフォンは中央を支配してそれから地方を制圧しようとしていますが、元々地方はブッフォンのやり方に反対している物が殆どです。今回も私が傷つけられなければ、王国に迷惑をかける事はなかったのです」
「しかし、どうやってブッフォンを倒すかが問題だ。迂闊に首都に近づけないぞ」

 どうもブッフォンも一枚岩ではないらしく、中央を抑えるのに手一杯だという。
 だから外国の干渉を避ける為にあんな事をしたのか。
 そして、話はどうやって首都に向かうかとなっていく。

「少数でしたら首都に行く方法があります。実は、ブッフォンは各地の有力者に対して首都にくる様に命令書を出しています。命令書があるので、道中何かされるということは決してありません」
「あ、それなら僕も一緒に行けます。何かあれば直ぐにゲートで逃げる事もできます」
「他に手はないか。危険だがこの作戦で行くか」
「えっと、何の話でしょうか?」

 町長は何の事か分からないので辺境伯様と軍務卿が色々と説明してくれた。

「となると、あの有名な双翼の天使様はお二人の事ですか!」
「町長の怪我を治したのも、この二人なんですよ」

 町長ならと辺境伯様と軍務卿が重要な部分を除いて説明をしたが、どうも僕とリズの二つ名を聞いて直ぐに凄腕の魔法使いと納得したらしい。
 とんとん拍子に首都に向かう内容が決まっていく。

「ブッフォンは護衛の兵は四人までと決めていますが、連れていく侍従の事は特に規制していません。むしろ幼い侍従は歓迎と馬鹿らしい事を堂々と言っています」
「いやー!」
「気持ち悪くてたまらないわね......」

 ブッフォンのあほな発言に、リズだけでなくティナおばあさまも身震いしている。
 僕だってそんな事考えたくないよ。

「私も道中参加します。アレク君とリズちゃんも道中は侍従服姿で、出来ればかつらをかぶった方がいいわね」
「おお、それならこの街の服屋で購入可能ですな」

 こうして、僕とリズはエレノアの誕生パーティの時にきた侍従服を着る事になり、更に僕は黒色でリズは赤色のかつらをかぶる事に。
 何故かティナおばあさまも侍従服を持っていて、念の為にと近衛騎士のジェイド?さんも執事タイプの侍従服を着る事に。

「そうだ、アレク君。流石に首都に入る前にはプリンも一行に加える様に」
「そうですね。そこは万全にしておきます」
「陛下には私から伝えておく。まあ、この戦力なら千人いた所で太刀打ちは出来ないだろうな」
「うう、足を引っ張らない様に頑張ります......」
「ジェリルも着実に力を付けているから、気負う事はないわ」

 僕達の中で一番力がないとジェリルさんが苦笑しているけど、以前より確実に力が付いていると思う。
 そうこうしてる間に準備が完了、早速馬車に乗り込んで首都に向かいます。

「そうだ、町長さん。ここから首都までどのくらいでつきますか?」
「通常の馬車便ですと六日はかかりますが、四日で着く事を目指します」

 なら、手持ちの食料も十分にあるし、道中も心配はいらないな。
 という事で、出発です。

「じゃあね、行ってくるよ!」
「おう、気をつけてな」

 リズとスラちゃんが馬車の窓から、レイクランド辺境伯と軍務卿に手を振っている。
 さあ、首都に向かうぞ。
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