異世界に転生したら、いきなり面倒ごとに巻き込まれた！ 〜仲間と一緒に難題を解決します！〜

第三章 王都

第百十五話 屋敷にフローラ様が

「ただいまー」
「お帰りなさい」
「お、お母さん？　何でここに？」

　馬車がバスク子爵邸に着いて屋敷の中に入ると、何故かフローラ様が俺達を出迎えてくれた。
　とりあえず全員で応接室に向かいます。
　因みに、まだ昼食には早い時間帯です。

「サトー、学園での手続きはどうだった？」
「無事に完了しました。その後、皆さんに学園を案内して貰いました」
「あのバカに出会わなければ、全て上手くいったのにね」
「あのバカって、もしかしてダイン？」
「そうそう、あのバカよ」

　俺の学園での話だったのに、いつの間にかあのぽっちゃり君の話になっている。
　というか、フローラ様もあのバカで話が通じるのか。
　
「本当に迷惑な奴なのよ。エステルの事を嫁に寄越せって、しつこく言ってくるのよ」
「それって、ランドルフ伯爵家の両親ですか？」
「いいえ、ダイン本人よ」
「はっ？」

　うん、俺もびっくりだ。
　まさかダイン本人が王家に対してエステルを嫁に寄越せって言っているとは。
　ある意味、物凄い大物だなあ。

「サトーも気をつけた方が良いわよ。あのバカは、本当に何をしでかすか分からないのよ」
「はい、十分気をつけます」

　こりゃ本当に気をつけないといけないな。
　フローラ様がそこまでいう人物ってだけでも、十分警戒するだけの事はある。
　このままではぽっちゃり君の話になりそうなので、フローラ様が話を変えてきた。

「今日私がここに来たのは、明日サトーには軍の病院に行って欲しいと伝える為よ」
「軍の病院に、ですか？」
「そうよ。いつもはへレーネがボランティアで傷ついた兵の治療をしているのだけど、各地で闇組織との戦闘が起きていて怪我人がとても多いのよ」
「分かりました。そういう事でしたら、喜んでお手伝いします」
「悪いわね。今日のメンバーを、そのままつけるわね」

　へレーネさんがボランティアで兵の治療をしているのも凄いけど、それ以上に怪我人が多いのか。
　俺は回復魔法が使えるので、ここは頑張り所だな。

「あと、サトーにはこの本を持ってきたのよ」
「これは、教科書ですか？」
「そうよ。編入するだけの知識は問題ないだろうけど、下級生の勉強を覚えておくのもこれからの為よ」
「わざわざ申し訳ありません。非常に助かります」

　フローラ様が教科書を持ってきてくれて、非常に助かった。
　特に、この国の歴史や地理は全くダメなんだよな。
　早速、頂いた教科書を見てみよう。

「こんなものですね。私は王城に帰りますわ。エステルとフローレンスも帰るわよ」
「えー、まだお昼ご飯食べていないよ？」
「王城で食べれば良いでしょうが。全く食い意地の悪いんだから。本当に陛下にそっくりね」

　うん、昨日ビアンカ殿下のケーキを堂々と食べていた陛下と同じく、エステル殿下は食い意地が張っているな。
　この場にいる全員が昨日の応接室での光景を見ていたので、誰もがエステル殿下と陛下が似ている事に納得していた。