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第三章 王都

第百九話 王妃様にしばかれる国王陛下

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 俺は思い切って、目の前にいるケーキを頬張っている高貴そうな男性に声をかけた。

「あの、つかぬことをお聞きしますが、国王陛下でしょうか?」
「うむ、そうだ。儂が国王だ」

 俺の質問に、陛下は頬にクリームをつけながら答えてくれた。
 うん、威厳とかそういうのが全くないぞ。
 ただのスイーツ大好きおじさんにしか見えない。
 エステル殿下と陛下は似ていると言われているけど、陛下の方が自由人に思えるぞ。
 この場にいた全員が、僕と同じ意見のはずだ。

 カチャ。
 スタスタスタ。

 突然、応接室のドアが開いて豪華なドレスを着たスタイル抜群の女性が部屋に入ってきた。
 女性をひと目見て、滅茶苦茶怒っているのが分かるぞ。
 そして、女性は陛下の後にやってきた。

 ゴチン。

「あたー!」
「「おおー」」

 そして女性は、陛下の頭を遠慮なくぶっ叩いたのだ。
 叩かれた陛下からとても良い音がしたので、思わずシロとミケも感嘆の声を上げていた。

「あなたは、また人の物を食べたんですか?」
「いや、あの、そこにケーキがあったからで」
「国を預かる者の前に、娘のケーキを食べるとは父親として恥ずかしくないのですか?」
「いや、あの、その」
「だいたい、この後は重要な会議があるはずでしたよね? 何でここにいるのですか?」
「えーっと、それは……」

 うん、陛下と女性のやり取りを聞いて、この女性が王妃様だと直ぐに分かった。
 陛下が勝手に色々な事をしたので、激怒する王妃様を誰も止めなかった。
 ひと目見て、陛下は王妃様や他の側室の方の尻に敷かれているのが分かったぞ。

「あなたは追加のケーキをここに頼みなさい。そのまま、会議に向かうように」
「わ、分かったよ」
「もし、これでふざけたら、今日の夕食は無しね」
「直ぐに手配します!」

 そして陛下は、王妃様に敬礼をして応接室から出ていった。
 うん、やっぱり今の陛下は威厳もなにもないなあ。

「ごめんなさいね、お見苦しい所を見せたわ」
「いえ、王妃様も苦労なさっているのですね」
「ええ、そうね。公式の場だとしっかりしているのだけど、家族の前では途端にだらけるのよ」

 王妃様も溜息をつきながら僕に話をしてきた。
 王妃様もだいぶ苦労しているんだなあ。

「とりあえず、エステルが来るまでお茶にしましょう。シロちゃん達はそのままケーキを食べていて良いわ」
「「「「わーい」」」」

 王妃様の合図で紅茶が振る舞われた。
 そしてシロ達も、再びケーキを食べ始めた。
 うん、お茶会の前に凄いものを見てしまったぞ。
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