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第二章 バスク子爵領

第九十二話 いきなりのパパデビュー

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 ぺろぺろぺろ、ぺろぺろぺろ。
 ぺろぺろぺろ、ぺろぺろぺろ。

 うん?
 何だ何だ?
 誰かが俺の頬を舐めているぞ。
 恐らく一つはリーフが俺の頬を舐めているのだろうが、今日はもう一つ俺の頬を舐めている舌があるぞ。
 
 ぺろぺろぺろ、ぺろぺろぺろ。
 ぺろぺろぺろ、ぺろぺろぺろ。

 目を開けると、リーフと昨日俺に抱きついて寝ていた虎獣人の男の子が俺の頬を舐めていた。
 そして、俺の横にはエルフっぽい女の子と天使と悪魔の姿を混ぜ合わせた様な女の子が引っ付いていた。
 男の子の名前が分からないので、鑑定して調べたらびっくり。
 男の子はまだ一歳になったばっかりで、しかも孤児だということが分かった。

「えっと、コタロー? お腹空いた?」
 
 こくり。

「ミルク飲みたい?」

 こくり。

「じゃあ、一緒に食堂に行こうか」

 にぱあ、うんうん。

 おお、中々可愛いな。
 俺は、コタローを連れて行こうと思って起き上がって抱き上げた。
 うん、この匂いはおむつも替えないといけないな。

「「うーん」」

 そう思っていると、俺にくっついて寝ていたエルフと天使悪魔の子も起きた様だ。
 ここも念の為に二人を鑑定しておこう。
 エルフの子はレイアといい、ハイエルフの七歳の女の子。
 耳が結構長くて肌は白く、髪の毛はエメラルドグリーンのロングヘアだ。
 孤児ではないみたいだけど、エルフの郷ってどこだよって思った。
 天使悪魔の子はまんまダークエンジェルという種族らしく、名前はフェアで七歳の孤児。
 髪の毛はオレンジ色の肩までの髪で、頭には角があった。
 背中の羽は天使の羽みたいだが、紫色の羽色をしている。
 そして、二人とも年齢の割にはかなり小さくて痩せていた。
 きっと闇組織で囚われている間は、きちんとした食事を与えられなかったのだろう。
 よく見ると、他の子どもも結構痩せているのが痛々しい。
 
 俺はコタローを抱っこし、レイアとフェアとリーフを連れて部屋の外にでた。
 因みに他の人はシロとミケ達も含めてまだ寝ていたので、声をかけずに寝かせておいた。

「あらサトーさん、もう子どもに懐かれていますね」

 部屋を出ると、直ぐにサーシャさんと出くわした。
 これはナイスタイミングだと思って、色々質問する事にした。

「えっと、抱っこしているコタローのオムツを替えたいのとミルクをあげたいです。レイアとフェアは、お腹に優しい朝食ですね」
「あら、そうなのね。じゃあ、あちらに行きましょう」

 そう言ってサーシャさんに連れて行かれたのは、侍従の道具が置いてある部屋だった。
 因みに屋敷を歩いている間、レイアとフェアはずっと俺の服を掴んで歩いていた。

「じゃあ、先ずはコタローちゃんのオムツを替えてみましょうね」
「え? 俺が、ですか?」
「そうよ。コタローちゃんはサトーさんに懐いていますから、これからもオムツを替えるでしょうね」

 当たり前という感じで、サーシャさんが俺に言ってきた。
 そして他の侍従も集まってきたので、俺はレイアとフェアとリーフに見守られながらコタローのオムツを悪戦苦闘しながら交換した。
 お次はミルクという事で、侍従も引き連れて食堂に移動です。

「妊婦さんや子どもを育てている女性がこの屋敷にはいないので、ここはヤギのミルクを使いましょう。ミルクは湯煎して、人肌の温度に温めます」

 サーシャさんは、厨房で手際良くミルクを湯煎していく。
 それと共に、哺乳瓶みたいなものを洗っていく。
 そして、洗い終わった哺乳瓶にミルクを入れて冷まし始めた。

「この位の温度に冷まします」
「これが、人肌の温度っていうのですね」

 ちょうど良い温度に冷めたので、温度を確認して食堂に移動。
 椅子に座ったら、早速コタローにミルクを飲ませます。

「ちゅちゅちゅちゅ」
「おお、凄い勢いで飲んでいるな」
「本当は離乳食をメインにしてミルクは補助的にしたいのだけど、この子はまだ痩せているからね。少しずつ食べる量を増やしていきましょう」

 相当お腹が空いていたのか、コタローはものすごい勢いでミルクを飲んでいた。
 こんな小さい子がこんなにお腹を空かせるなんて、闇組織は本当に非道な組織だな。

「さあ、レイアちゃんとフェアちゃんも一緒にパンを食べましょうね。リーフちゃんはサラダね」
「わーい」

 俺も、レイアとフェアと共にパンを食べ始めた。
 すると、お腹を空かせた腹ペコ軍団がゾロゾロとやってきた。

「「「お腹空いた」」」
「はいはい、ちょっと待っていてね」

 シロとミケとエステル殿下と共に、ビアンカ殿下とエルシーと他の子ども達がやってきた。
 今日は賑やかな朝食になりそうだ。
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